表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました  作者: 都茉莉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/6

ナンパから助けてくれた彼

 己を囲むガタイのいいチャラ男集団。いつもの僕ならばリンチかカツアゲが目的なのだろうが、今の僕だと事情が異なる。


「君カワイーね」

「オレらとカラオケとか行っちゃわない?」


 そう、ナンパだ。我ながらうまくできた女装はいらんものを引寄せた。


 今まで遭遇したのはごめんなさいと言えば引いてくれる良識的な人だったが、今日のは引いてくれない。

 自分好みのふわふわした女の子らしい女の子を目指したわけだから、女声に聞こえないでもないとはいえ僕の声は合わない。この声で認められる女子はボーイッシュ系が限度だ。


 そういうわけで、あまり大きな声を上げて抵抗ができない。

 小さな声でいやいやしてる女の子なんて逆効果でしかないことくらいわかってる。でも無抵抗というのも癪に障るじゃないか。こういう奴らは抵抗しなければ同意したと勘違いするバカばっかなのだ。


 こいつらどうしてくれようと思案していた時、背後から不意に腕を引き寄せられた。嘘だろう? 誰もいなかったはずなのにいつに間に周りこまれたんだ!?


「俺のツレになんか用?」


 弾かれたように視線を向けると輝かんばかりのイケメン。どう転んでもナンパ野郎の仲間にはなりそうもないご尊顔。しかも…… 見覚えのあるイケメンだ。

 イケメンはそのまま無言でナンパ集団を見る。無表情で眺める。美形の無表情は恐ろしいのだ。

 それにたじろいだチャラ男たちは、捨て台詞を吐きながら去って行った。


 だが僕の災難は去ったわけではない。


「大丈夫だった? それとも、お節介だったかな?」


 目の前で優しげに微笑むこの男はクラスメイト。つまり男の方の僕を見たことがある。


「いえ、そんなことありません。ありがとうございます」


 早くいなくなれーと願いつつ、普段よりも細く高くを意識して声を出す。でも僕の願いは全く通じない。


「可愛い子が困ってたんだから当然だよ」


 それどころかナチュラルに口説きやがったではないか。これだからイケメンは!


宮下(みやした)、恐ろしいやつ……!」

「あれ、名前教えたっけ?」


 反射的に口を押さえるも一度出た言葉は戻らない。


 じっと顔を見つめてくる宮下に居心地が悪くて視線を逸らす。それでも視線は止まない。実際にはどのくらいの時間だったかはわからないが、僕には恐ろしく長い時間に思えた。


 たっぷり僕を眺めた後、宮下は得心したように声を上げた。


「もしかして、同じクラスの仁科(にしな)(ゆき)な――」

「わああああ!!!!」


 滅多に出さないような大声で言葉を遮り、思わず腕を鷲掴み引きずるような形で人の少ないところ目指して連れ出してしまう。

 宮下はというと、学校でも今も大声を出すようなタイプじゃなかった僕の大声に面食らったのかされるがままだった。


 人通りの少ない通りに出たときには僕はもう息絶え絶えだというのに、宮下は全く堪えていない。文化系の僕とは比べものにならない体力だ。

 なんとか息を整えて精一杯下手にでて本題に入る。


「み、宮下さん。お願いがあるんですが……」

「その格好のことを黙っててほしい、ってことかい?」

「そうです! お願いします」


 ガバッと頭を下げる。人格者と評判なイケメン様だ。誠心誠意お願いすれば伝わるはず。

 そう、思っていたのだが……


「ふーん。で、俺のメリットは?」

「へ?」


 予想だにしない返答に変な声が漏れた。


「だから、俺、宮下秀次(しゅうじ)が、お前、仁科幸成(ゆきなり)が女装趣味のヘンタイだってことを黙っとくことのメリットだってば」

「え、えと」


 対価を要求されるとは思っていなかったため言葉が詰まる。

 そんな僕を眺めて宮下は意地悪く笑った。


「明日には学校中が知ってることになるよ。一Aの仁科幸成は女装趣味のヘンタイだ、って」

「そ、それだけは勘弁して! なんでもするから!!」

「なんでも、ねぇ」


 宮下は笑みを深める。

 瞳が怪しげに煌めき、僕は思わずたじろいだ。


「じゃあ、今日からお前は俺のオモチャな」

「お、オモチャ……?」


 頭に全く浸透しないまま壊れたおもちゃのように繰り返した。


「そ、オモチャ。俺が呼んだらいつでも来ること。もちろん、その格好でな」


 学校での関係は何も変わらないから安心しろ、と宮下は言う。

 そういう問題じゃないと叫びたかったが、僕に差し出せるものなんか他に思いつかない。

 女装を知られることと、宮下のオモチャになること。天秤にかけた結果は言うまでもない。


「宮下のオモチャになれば、このことを黙っていてくれるんだよね?」

「約束するよ」

「……わかった、受け入れる。宮下のオモチャになるよ」


 決心が鈍らないように、自分より高い位置にある宮下の目を見て繰り返した。

 宮下は尊大に頷いて最初の命令をくだした。


「まず俺のことは秀次様と呼べ。ああ、その格好のときだけでいいから。そうだな、俺は……ユキナとでも呼ぼうかな。いいね?」


 疑問形のくせに拒否は許さないといった迫力だ。

 もしかして、早まった……? でも僕に許された選択肢は一つしかない。


「……了解シマシタ、秀次サマ」


 評判のイケメン優等生はとんでもねー鬼畜野郎でしたってか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ