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ラグナロク  作者: ピロ
第一章 次元を超えて
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小夜の行方

次元を超えた世界にやってきたレン。果たして妹と会う事は出来るのか?

「ありがとう。君の名前は?」

このロボットは人型ではない。話すことは出来ないようだ。

「名前が無いのは不便だよね。ロボ太って呼ぶことにするよ」

ロボ太は理解したのか、青いランプが光って合図する。

そしてロボ太はタブレットのような物を渡してきた。

どうやら食事や飲み物、風呂など色々とタブレットで注文する事が出来るようだ。

とりあえず何か頼んでみるか。

「このチャーハン頼んでみるか」

タブレットに入力するとロボットが奥の部屋に行ってしまう。

ここにいるのはこのロボ太だけなのかもしれないな。

生活感が全く見られない。

それに周りの住人に気付かれずに、この施設をどうやって建てたのかも疑問だ。

しばらくするとロボ太がチャーハンを持ってやってきた。

「ありがとう」

出来立てのチャーハンを俺に渡すとどこかに行ってしまう。

忙しい奴だな。

「思ったよりも旨いな」

ひと口食べてみると、卵の味がしっかりとした俺好みのチャーハンだ

「試してみるか」

チャーハンの残りを次元収納に入れてみる。

コレを何時間か置いてどうなっているかだ。

温かければ時間が停止されているってことだよな。


小夜がこちらにやってきたとして、いつものエクリプスの世界と違えば、おそらく周りの様子を見るのは間違いないだろう。

小夜と連絡がつかなくなってから5時間後に俺はこっちに来た。

何も情報が無ければ、夜になる前にここに戻ってくる可能性が一番高い。

待つのが正解だよな・・・

気持ちは焦るが何も情報が無い。


俺は待っている間、タブレットで何が出来るのかを試してみる。

ロビーにある壁一面のモニターに映像を映す事が出来たり、風呂を沸かすことも出来るようだ。

おそらくここで生活をする上で必要なことをする為のタブレットのようだ。

自分で何もしないってのは未来なんだなと感心してしまう。

驚いたことはタブレットを次元収納に入れても操作出来ることだ。

空中に操作パネルが表示されて、そこで操作が可能になった。

試しにジュースを注文すると、次元収納の欄にドリンクと表示がされる。

「マジかよ、すげぇな」

ジュースを取り出して飲み干してから次元収納に戻すと、グラスを返却しますか?と表示される。

イエスを選択するとグラスの表示が消えた。

コレが未来の技術か。

俺はこの便利な機能に感動していた。


しばらく小夜を待っていたが、ここには時計が無い。

しかも地下にいるから今が昼なのか夜なのかも分からなかった。

「少しこの世界を見てみるか」

この付近を見て回るくらいは平気だろう。

リビングにやってくると、扉の隙間から光が入り込んでいる。外はまだ日が出ているようだ。

玄関の扉に外鍵は無く、かんぬきが家の鍵になっている。

「おいおい、鍵が掛かってねぇじゃねぇかよ・・・」

この家は袋小路になっていて、隣に大きな石造りの屋敷が存在しているが、屋敷の方は裏側に当たる。

だから顔を合わすことは無さそうだ。隠れ家としては最適だったのかもしれない。

「それにしてもエクリプスの世界に似てる」

そのまま移植したんじゃなかって思えるほどだ。

大通りに出ると、人が賑わっている。

「それにしても、始まりの街アルタリウムそのものじゃねぇか・・・」

街の中心部である噴水を見つけて近くに行ってみると、間違いなく見た事のある風景だった。

エクリプスのゲームはオープニングのイベントがこの噴水から始まる。

数年前、冒険者になるために旅立った友人と、主人公はここで待ち合わせをしているのだ。

友人はこの街やギルドなどを案内してくれる。チュートリアル用のキャラで、その後もイベントが開催される時に、情報を教えてくれるNPCだ。

最近はレベルが上がって活動拠点は違うが、初心者の時はここで活動していたな。

プレイヤーの人数もかなり多い為、街はかなり大きい。

だからイベントでパーティを組む時は、分かりやすいこの噴水前で待ち合わせをする。

ここを南下すれば街の出口に近いという理由もあるが、レイドボスと戦う時は50人位のプレイヤーが集まるから、広さ的にも都合がよかった。

ここは待ち合わせの人が多いから、食事をすることが出来る店も多い。

大人数のパーティの待ち合わせをしている時は、そこのカフェで能力が向上するドリンクを小夜と一緒に飲んでいたな。

「それにしても小夜はどこにいったんだ・・・」

トラブルがあった時はその場にいてくれると助かるのに・・・

でも小夜だってそのくらいの事は分かるよな。

それなのにいないってことは何かあったのか?

俺が考え込んでいると、ガラガラとする音が近づいてくる。

馬車が何かを引いていた。

「何だアレ・・・」

フルプレートを着た騎士が列を成して馬車の先頭を先導していた。

その後ろには司祭のような男もいる。

貴族が乗るような優雅な物ではなく、農耕馬のような大きな馬が2頭で何かを引いている。

俺の横を通り過ぎると、馬が引いていたのは捕縛された者を運ぶもので、簡易的な牢屋のようだった。

手枷を嵌められて、足にも枷を付けられている。乗っているのは全員が女性だ。

「また魔女狩りかよ・・・」

「最近やたらと多い気がしないか?」

「ああ。ミレニア教の奴等見境いないからな」

俺の近くにいた男達の会話が聞こえてくる。エクリプスじゃ、ミレニア教なんて聞いたことがない。

「おい、聞こえるぞ。聞かれたら俺らだって何されるかわからねぇぞ」

近くにいる男達は馬車から離れていたが、今の会話を聞かれることはマズいようだ。

嫌な予感がする。

俺は今の会話をしていた男達に声を掛ける。

「なぁ。魔女狩りってどういうことだ?」

「アンタこの辺の人じゃねぇのか?」

「最近ミレニア教の連中が魔女狩りっていっちゃ、怪しいと思われる女達を捕まえてるんだ」

「ほとんど言いがかりみたいなことでも捕まえていきやがる」

「俺は妹を探してここに来たんだ。俺みたいな服を着てるんだけど見た事はないか?」

「悪いな兄ちゃん。俺もずっと見てるわけじゃねぇからさ、分からねぇよ」

「俺も見てないな」

「こっちこそ突然聞いて悪かったよ。ところで連れてかれた人はどうなってるんだ?」

「あまりいい噂は聞かねぇけどよ。噂じゃミレニア教の総本部に連れていかれるみたいだぜ。まぁ帰ってきた奴は一人もいないから分からないけどな」

見せしめに殺しているという事はやっていないらしい。

ただ見せしめにしていないだけで、殺されている可能性はあるとみた方がいいだろう。

「誰も何も言わないのか?」

「最初のうちは言ってたさ。でも言った奴も、魔女の仲間として連れてかれちまった・・・」

「ミレニア教はかなりデカい教団だからな、どこにでも信者はいるし、国も表立って争う事をしないんだ」

「ミレニア教の総本部ってのはどこにあるんだ?」

「おいおい兄ちゃん。あまりヤバいことに顔突っ込まない方がいいぜ」

「とりあえず連れてかれるのは奴らの教会みたいだがな。悪い事はいわねぇ。関わらない方がいい」

「あぁ、俺だってそんなヤバい所に行く事はしないさ」

「だよな。妹さん、早くみつかるといいな」

「教えてくれてありがとう」

「ああ、どうってことないさ」

彼らと別れ、俺は一旦施設へと戻った。

「小夜?」

誰もいない。クソッ。

不安ばかりが俺の心を覆って行く。そんな時、天井に設置されているカメラに気付いた。

カメラか、恐らく記録されているよな。

もしかしたら過去の映像を見れるかもしれない。

次元収納に入っているタブレットから、この施設のカメラの映像を再生出来ることに気付く。データは6時間ごとにデータが残っている。

日付で管理はされていないのだが、シリアルナンバーで残っている。驚いたことに何十年分のデータがあることだ。

新しい映像から早送りしながら確認していく。

時間が表示されているのだが、こちらの時間と元の世界の時間の両方が表示されている。

驚いたことに元の世界の1時間がこちらの世界の1日だということだ。

しかもこちらの世界は24時間ではなく、36時間だった。

小夜と連絡が付かなくなって5時間。最高でも5日分の映像を確認すれば分かるのは有難かった。

「見つけた」

指でドラッグして映像を動かせたのは正直有難かった。


これで小夜がここに来たことは確定した。

「それにしても髪の色が金色で瞳の色はブルーになっている」

それと不思議なことにもう一人女性が映っている。

黒髪のショートヘアでライダースジャケットを着ていた。

「この人は誰だ?」

小夜に色々と説明をしている。

音声が無いから何を言っているか分からないが、小夜も取り立て怪しむ感じでも無く、普通に話をしていた。

俺が受け取ったリングも貰って説明を受けている。

二人のやり取りを見ていると突然二人が上の方を向く。

ショートヘアの女性が何かを操作した。すると上の部屋の様子が、空中に現れたスクリーンに映し出される。

そして先程見た騎士や魔女狩りの司祭のような男が映った。どうやらこれが魔女狩りの現場なのだろう。

しかし彼らはこのリビングにある隠し扉に気付くことは無かった。


知らない女性が真剣な顔で小夜に何かを説明している。

そして俺の見たロボットが二人の着替えを持ってきた。

インナースーツの上からこちらの世界の人が着るような服を着てからマントを羽織る。

顔にはストールを巻いて更にフードを被るから、見えるのは目だけだ。

それだけ見ると誰かは分からない。

そしていっぱい入っているように見える()()()なリュックを背負い、旅人を装った格好で上の部屋に行く。上のダミーの家にはカメラが設置されていないから、扉を開けた時点で映像は終わりだ。

上の部屋の映像はどうやってスクリーンに映し出されていたかは分からないが、録画はしないカメラがあるのかもしれない。



小夜に会うことは出来なかったが、小夜がこの世界に来ているということが分かっただけでも収穫だ。

二人はおそらく魔女狩りから逃げて、この街を去った。

そう考えるのが正解なんじゃないだろうか。



妹の小夜は遊んでいたゲームと瓜二つの世界に来ていることは分かりました。

似て非なるこの世界でレンはどうやって小夜を探すのでしょうか?

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