表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラグナロク  作者: ピロ
第6章 地下帝国とレンの旅立ち
76/76

見張り

最近少し暖かくなってきて嬉しいです♪

寒いのも暑いのも苦手なので、早く暖かくなってもらいたいですね。


「やっぱりエクリプスに似てる・・・」


俺は湖のほとりで周りの景色を見つめていた。

ゲームで見た景色とは違うものの、やはりベースがエクリプスなのではと思う。

ナーセルを出てからずっと幌馬車に乗っていたので、外の景色を見てはいなかったが、今こうして落ち着いて周りを見渡すと、改めてこの世界はエクリプスに似ていると実感する。


エクリプスの特徴は巨大な世界感だ。すべてがデカいといえばいいのだろうか?

人間が虫の視点から見れば、世界はこう見えるだろうという感じだ。

そしてコントラストがハッキリしていて、かなり色調の濃い物が多い。


「レン?もう行くぞ」

「ああ、今行く」

俺は馬車に乗り込むと全員分のクッションを取り出した。

クッションといっても俺が出したのは座布団。

それも安いペラペラの物では無く、真綿がいっぱい詰まった厚めの高級座布団だ。

コレを折り曲げて座れば今までより快適に過ごせるはず。

「レンさん、ありがとうございます。コレならかなり楽になりますね」

「うん。そうだね。ってゆーかこんなにいい物持ってるなら早めに出して欲しかったよ」

ミーシャがクッションの有効性を確かめて恨めしそうに言ってくる。

「すまない。さっきまでマジックバックに入れてるのを忘れていたんだ」

本当は景色を見ている時に買ったんだけど、そんなこと言えるはずもない。

事情を知っているユキとミレーヌは何か言いたげだが、絶対にバラしてはいけないと言ってあるので口にはしなかった。


「ミレーヌ。お願いがある」

俺はさっきローグに聞いた話を全員に話す。

野盗の襲撃が現実味を帯びてきて、皆真剣に聞いてくれた

「ワカッタ。セイレイにテキイのアルニンゲンがイナイカ、シラベサセレバ、イインダネ」

「ああ。出来るかい?」

「マカセテ」

「オイラは人よりも耳はいいから、変な音がしたらあんちゃんに教えるからな」

「そうか。ユキも頼むぞ」

俺は二人の頭をついつい撫でてしまう。


馬車が走り出した。

農耕馬は軍馬と違って俊足では無いが、体が大きく力は強い。

ゆっくりだが、徐々に徐々に進み出す。

相変わらず少しの段差で荷馬車が跳ねるが、座布団に座ってお尻の痛みから解放された今、意識を外へ向ける余裕が出来るようになった。

外の景色が見える訳じゃないから、基本的には外の音に注意しているだけだ。

しかし外にアンテナを張っているかそうでないかでは、天と地の差がある。



「もうすぐ着くぞ」



休憩所から3時間くらいは経っただろうか?

ローグが小声で聞こえるように声を掛けてくる。

「あぁーっ。馬車って体は楽だけど、その分体が鈍っちゃうんだよね・・・」

緊張が解けたのか、体を伸ばしながらミーシャが声を出す。

「分かりますよ。私も体のあちこちが痛くて大変です」

ジークフリードの言葉にはそれは老化じゃないのか?

と、ここにいる全員が思ったが誰も突っ込むことは無かった。



街道には所々に野営場所が存在している。

皆がそこにテントを張ると、自然とその周りが開けて行く。

今日俺達が野営する所は少し奥まった所にあり、人に野営しているように見えない場所だ。

野盗や魔物から襲われにくい立地で、少人数が野営するには最適な場所である。


「ゴシュジンさまノセカイハ、ドンナカンジ?」

俺がこっちの世界の景色に見とれていると、ミレーヌが声を掛けてくる。

「ミレーヌは俺のいた世界を見てみたいか?」

「ミタイです。ワタシハソコデモ、ゴシュジンサマのトナリニイタイ」

そういって寂しそうな顔をするミレーヌ。

小夜を見つけたらこの世界から帰ると言ったからだろうな。

「ごめんなミレーヌ」

俺の服の裾を遠慮がちに握っているミレーヌを抱き寄せた。

するとミレーヌも俺と離れたくないかのように頭をすり寄せてくる。

こうして触れ合う度にどんどん愛着が湧いてきてしまう。

マズいと分かっているのにな・・・



「レン。今日は火を起こさないから、自分達で用意した保存食を食べてくれ」

「分かった」

俺はダミーで買ったマジックバックの中に手を入れて次元収納から寸胴鍋を取り出す。

中には以前泊まったことのある大鷲の羽亭で作ってもらったスープが入っている。

ホロホロになるまで煮込まれたスープをお椀によそうと悠久の探索者達の鼻腔を刺激し、その視線は俺達の方に釘付けだ。

「クンクン。凄くいい匂い」


「お、おい、レン。それは何だ・・・」

「スープだけど、ソレがどうかしたか?」

ランスとミーシャが味気ない干し肉を片手に、俺達を羨ましそうに見つめている。

「何でそんな湯気が出てるの?」

ヒーラーのロロナも鍋の視線がロックオンされているな。

「・・・よければ食べるか?」

「「「食べるっ!!!」」」

ランスとミーシャにロロナは即答だった。

実をいうと俺の次元収納の中には大量の寸胴鍋がストックされている。

毎日のように大鷲の羽亭と商人ギルドの宿に煮込んだ鍋を作ってもらうようお願いしていた。パンも相当な量をストックしているので、三カ月くらいは食べる物に困ることはない。

「お前らが用意した物をもらっちまってすまねぇな」

ローグの見た目は犯罪者にしか見えない。だが、悠久の探索者の中で一番の常識人だ。

ちなみにソーサラーのジークフリードが一番常識人に見えるが、お金が入ればすぐ魔道具を買ってしまい、いつもお金がないらしい。


「レン。このスープ、凄く美味しいんだけど」

「コレは大鷲の羽亭で作ってもらってるんだよ」

「あー。確かにあそこの飯はうめぇよな」

ランスが同意するが、売春宿として有名でミーシャとロロナが冷ややかな目で俺を見つめてくる。

「レン、まさかアンタも女の子を買い漁ってるの?」

「違う。知らずに入った宿がそこだったんだよ」

「ふーん」

俺の両脇にいるユキとミレーヌを見ながら、疑いの目を向けている。

「そうだよ。オイラも一緒だったからな。あんちゃんはオイラと寝ただけだぞ」

ユキ、それはソレで誤解を受けそうだ・・・

「お前らいい加減にしろよ。ココがどこか分かって喋っているのか?」

「す、すまない・・・」

「ゴメンナサイ・・・」

テンションが上がって、どんどん声が大きくなって行くランスとミーシャに、ローグが叱咤する。


ココは野盗の行動範囲に入っている筈だ。ミレーヌが使役する精霊に、近くに敵意のある人間がいたら知らせるようにお願いしてはいるが、わざわざ敵に寝る場所を教えるようなことをしていては身も蓋も無い。ローグが怒るのは同然だろう。


日が傾いて夜が支配する時間が訪れた。

静寂が支配し、少しの物音でさえ辺りに響き渡る。

高台にあるこの場所から見える川が、星の明かりに照らされて幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「ゴシュジンサマ、チカクにマモノモ、ヒトもイナイ。ソンナニ、キンチョウシナクテ、ダイジョウブ」

「うん。この辺で動物とか人が動く音はしないぞ」

初めての見張り。俺は緊迫の中、ミレーヌとユキの3人で最初の見張りに付いた。

この辺りには魔物がいるからだろうか、夜に鳴く鳥ですら静まり返っている。



「俺は生易しい世界で育ったからな、人を殺したことなんて無いんだ」

ユキもミレーヌも俺の言葉に黙って耳を傾けている。

「正直怖いんだ。俺が俺で無くなってしまうんじゃないかってな・・・」

ミレーヌが肩に頭を持たれかけてきた。

「ダイジョウブ。ゴシュジンサマ、カワラナイ。ヤサシイママ」

「ありがとうミレーヌ」


「あんちゃん」

「ユキ、どうした?」

ユキが俺の目の前に立つ。

「あんちゃんが変わったとしても、オイラはずっとあんちゃんのこと大好きだからな」

そういって俺の頭を抱えて抱きしめてくれた。

ほんのり薫るミルクのような匂い。

こうしてユキに抱きしめられていると、母に抱きしめて貰っているような感覚を受ける。

「ありがとな」


ユキの母性がレンの子を授かりたいと、彼女の体を急速に女に変えようとしていた。

その証拠に出会ってまだひと月しか経っていないというのに、体は丸みを帯び、胸もかなり膨らんでいる。

レンもユキに抱きしめられていると、不思議と安心感に包まれて不安も恐怖もユキのぬくもりに消されていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ