冒険者ギルドへ
「レンさん、お久しぶりです。今日も凄くカッコイイですね・・・」
冒険者ギルドの受付嬢が頬を染めながら俺達を出迎えてくれる。
いつもの受付嬢と違う態度に、近くにいた冒険者達が不思議そうに見つめていた。
そんなに久しぶりじゃないよな・・・
と思ったが、彼女の笑顔を曇らせるような事は口にしない。
「ありがとう。今日は素材を持ってきたんだ。それと依頼した経過を聞きたくてね」
俺達は冒険者ギルドにやってきた。
さっき狩ったオークとグレートマンティスの素材を買ってもらうのと、小夜の情報のことについて聞きたかったからだ。
「分かりました。では、こちらへどうぞ」
俺は依頼を出している客でもあるから、奥にある応接間に通された。
明らかに違う対応を見た冒険者達がヒソヒソと話をしている。
ソファーに座って出された水を飲んでいると、冒険者ギルドのギルドマスタールークが部屋に入ってきた。
「レン殿、久しぶりだな。商会の立ち上げ上手く行ったようで良かった」
「ええ。ありがとうございます。お陰様でボチボチやらせてもらっていますよ」
「ハハハ。あれがボチボチとなると、レン殿が本気になったら街から根こそぎ金が無くなってしまいそうだ」
一介の商会の立ち上げに貴族がこぞってやってくるなど、本来ならあり得ないことだ。
その中にはこの街の領主自ら足を運んでいることも、周知の事実となっている。
「少しだが妹殿の情報が入ってきているぞ」
「本当ですか!?」
受付嬢が二つの巻物のようなものを持ってきてテーブルの上に広げる。
「ここから南にある街、マルケスでそれらしき二人の情報があります。国境を越えたとの情報も入りました」
俺がまだこの国の文字に慣れていないから、受付嬢が読み上げてくれた。
「こちらの方は隣国アルジウスの街、コピットで二人が10日前に訪れたという情報が寄せられました。宿屋で盗賊ギルドと交戦があったようですが、全員を返り討ちにして去ったようです」
「戦闘があったのか?妹は大丈夫だったのか?」
「はい。盗賊ギルドのアサシンは皆殺しにされて、襲われた二人は無事なようです」
まさかとは思うが、小夜がやった訳じゃないよな?
一緒にいる女性は恐らく小夜の護衛だ。彼女がやったのだろう・・・
「アルジウスのコピットは地下迷宮の探索をする為に、冒険者達が多く滞在しているんだ」
「地下迷宮?」
「そう。ドワーフが造った地下迷宮があって、冒険者達はそこにいる魔物の素材を求めてコピットに滞在しているんだ。宿屋でかなり激しい戦闘があったようで、あっちのギルドから情報が入った」
「小夜はそこにいたってことか」
受付嬢は情報に対して支払った金額を提示する。
「こちらで情報に対して支払った対価です。ギルドで一般的な情報の対価として金額を支払っています」
「やっぱ情報がもらえるのはいいね。報酬をもっと上乗せして構わないよ」
支払われた分の情報料を払い、追加で金貨を3000枚積み上げる。
「沢山の冒険者達に気にして欲しいからね、誤情報だったとしても、きっと調べたんだろうなって判断した場合は対価を支払ってほしい」
「うそっ」
受付嬢は驚きを隠せない。
元の依頼でも破格の金貨100枚だった。しかも妹さんを丁寧に扱って欲しいと追加で金貨50枚を追加している。
それでも仕事の内容として、これほどおいしい仕事は無い。
それなのに金貨3000枚を追加で投入してきた・・・
「レンさんは本当にお金持ちなんですね。普通はこんな簡単に出せないですよ」
「それだけ情報ってのは大事なんだよ。情報を制する者が全てを支配出来るんだからね」
大規模の依頼のほとんどが領主からの依頼になる。
金額も大きいので、冒険者達は依頼に喜んで飛びつくけど、その分死亡率も高いし費用対効果はもの凄く悪い。
でもレンさんはリスクの少ない情報の仕事だけで、かなりの金額を提示してくれている。
この依頼の凄い所は、納期もノルマも無い。
他の仕事を受けながら情報を得られれば金を得る事が出来て、それなりの金額を手にすることが出来ること。
だから冒険者達は常に頭の中に入っていて、どこかに行けば必ず情報が無いか探している。
大半が誤情報だけど、レンさんはそれにまで対価を支払ってくれと言う。
勿論、嘘をついて調べたと言えば報酬を得る事になってしまうので、私達が審査をしているけど、ランクが低い新人冒険者達にとってはありがたい依頼だ。
「それから素材を持ってきたんだけど、買い取りはしてもらえるのかな?」
「レン殿は何を持ってきたんだ?」
ルークは身を乗り出して食いついてくる。ギルドマスターも元は冒険者だ。
こういうことの方が興味津々なのだろう。
「オークとグレートマンティスを持ってきました」
「ええっ!!グレートマンティスですか!?確か依頼で出てましたよ」
受付嬢は貼ってある依頼書を持ってくる。Bランクパーティ以上のランクじゃないと受けることが出来ないので、貼られたままになっていた。
「本当にレンさんが倒したのですか?」
依頼書には街の近くの森に出たグレートマンティスの討伐と出ている。
「多分依頼にあるグレートマンティスだろうね」
「あんちゃんが一人でやっつけたんだぞ!!」
間髪入れずにユキが興奮して俺に抱きついてくる。
「ソウ。ゴシュジンサマ、ツヨイ。カッコイイ」
ミレーヌもユキ同様レンに抱きついて興奮気味に熱弁しているが、表情は変わらない。
「それは本当か!?」
ルークは驚きの表情を隠せない。
各々にレンがどれだけ凄かったか語り出して収拾がつかない。
「恥ずかしいから、やめてくれ・・・」
俺達は解体所に案内された。
ギルドの裏手に解体所があって、日頃ここで解体を行っているからか異臭が凄い。
「レン殿、素材はどこにあるんだ?」
俺が次元収納からオークとグレートマンティスを出すと、ルークと受付嬢は驚いている。
まさかそのまま持って来ているとは思っていなかったようだ。
「おいおい。こいつは大物だな。素材は全部買い取りでいいのか?」
「ああ。それで構わないよ」
ここまでちゃんとした形で持ち込まれることはほとんど無いからか、解体するおっさんが呆然としている。
「解体するのに時間が掛かるから、待っててくれ」
「ああ、分かった」
「ルークさん。実は山賊や盗賊の討伐依頼があったら受けたいんだけど、俺のランクで出来るのかな?」
「いや無理だ。討伐に関しては初心者が一番死にやすいから、Cランク以上じゃないと依頼は受けさせないようにしている」
納得の理由だ。それだけ人同士の殺し合いというのは難易度が高いのだろう。
「もし依頼を受けたいのなら、俺が指定した冒険者達に同行してもらうって条件で許可をしてもいいぞ」
「本当か?みんなはそれで受けても構わないか?」
特にユキは他の冒険者達に苦手意識を持っているからな。
俺も正直揉めるくらいなら、他のパーティと一緒に行動したくない。
「オイラは構わないぞ」
即答だった。強くなったな。
「ワタシモ、モンダイない」
「よし。じゃあ討伐の依頼を受けようか」




