炎の巨人の討伐
「男は隊列の前と後ろに回れっ!!女子供、戦えぬ者を守りながらビバーブに撤退するぞ!!」
ドワーフの王が倒れた。
王は炎の巨人に敗れた訳ではない。自らの持つ武器の呪いによって魂を奪われたのだ。
しかし精神的支柱になっていたドワーフ達にとって、王の死は受け入れ難いものであった。
「魔物が来るぞっ!!一人で当たるなっ!!必ず二人以上で魔物と対峙しろっ!!」
屈強なドワーフ達が、まさかここまでボロボロになってしまうとは・・・
やはり王を止めるべきだった。
儂はドワーフ王、ボブル・ディナ・ゲイドールの側近をしていた。
「バルバドスよ、後のことは頼んだぞ」
儂があの時王を止めていれば、戦況が変わっていたかもしれない。
少なくともここまで酷いことにはなっていなかったハズだ。
「長。あの二人なら炎の巨人を倒せるかもしれないぞ」
自警団の団長であるボルブが儂にそんな事を言ってきた。
線の細い女と、成人しているかどうかも分からない女の二人があの炎の巨人を倒せる?
そんな訳がないだろう。寝言は寝てから言ってくれ。
だがボルブは執拗に儂に言ってきた。
「倒しましょうっ!!」
「へっ!?」
儂としたことがつい間抜けな返事をしてしまった。
「待ってくれ。アイラ殿。炎の巨人がどのくらい強いか知っているのか?」
「いいえ。知りませんね」
「それなのに倒すと?」
「はい、そうなりますね」
「・・・すまないが、儂にはお主達が炎の巨人を倒せると思えないのだ」
「まぁそうでしょうね。ではコレを見てもらえますか?」
アイラはレーザーブレードを取り出した。
「何か切っていいものはありますか?」
「ちょうどいい物がありますよ」
そういうとビランダが部屋を出て行く。
するとビランダがボロボロのプレートメイルを持ってきた。
「訓練所に置いてある鎧です。これなら構わないですよね」
「ああ。それなら構わない」
ドワーフのほとんどがクラフターだ。
物を大切にするドワーフに無駄な物は無く、適当に切っていい物など存在しない。
だが訓練所に置いてあるプレートメイルなら話は変わる。
なぜなら攻撃する為に置いてあるからだ。
厚い鉄板から造られたコレが壊れたのなら、寧ろ称えられるべきこと。
文句を言う者は誰一人としていないだろう。
「では見ていて下さいね」
アイラは置かれたテーブルには傷をつけない様に、慎重に水平を保ちながらレーザーブレードを振り下ろす。すると振り下ろした所が赤くなっている。
「コ、コレはどういうことだ?」
「はい。この鎧を切りました。このままにしておけば、そのまま付きますよ」
アイラの言う通り、プレートメイルの前も後ろも赤くなっている。
だからこのプレートメイルは間違いなく切られたのだ。
「長。俺が言ったこと分かってくれたか?」
「あ、ああ。コレが力を入れない状態で切れるのだ。とんでもない切れ味なことだけは分かる。だが炎の巨人は常に燃えているんだぞ。この武器で近づくことが出来るのか?」
「レーザーの太さを調節すれば、長くなりますよ」
レーザーブレードの柄の部分にあるボタンを触ると、液晶パネルのインジケーターの数字が変わり、レーザーの太さが細くなる代わりに光が伸びて行く。
「ひ、光が伸びて行きますね」
「どうやったらこんな物を造る事が出来るんだ」
ボルブの興味はレーザーブレードの構造に興味が移っている。
「それから見せていないだけで、武器はコレだけではありません」
「本当なのか?み、見せてくれ」
興味津々なボルブの鼻息は荒い。
「・・・面倒なので嫌です」
明らかに嫌そうな顔をするアイラ。
アイラに無理なお願いする時は基本おだてないといけない。
だがビランダは、ボルブにソレを教えることは無かった。
何故なら自分の男が、他の女性を褒めているのを見たくはなかったからだ。
「お願いだ。アンタ達が持ってる物はドワーフの未来に繋がる。この通りだ」
「面倒なのもありますが、気軽に見せていい物でもありません。申し訳ありませんが、お断りします」
「・・・そ、そうか」
ハァ。そんなしょぼくれた顔をしないで下さい。
ヒゲ面のおっさんにそんな顔されてもキモイだけです。
それに文明レベルが千年も前の世界で構造を説明するとなると、数年掛けて説明しなければなりません。
空気を読んで下さい。
「アイラさんも迷惑しているんだから諦めないと。ねっ」
慰めているビランダを見ていると、やはり不釣り合いなカップルにしか見えません。
樽のようなヒゲ面のおっさんが、ロリ巨乳と付き合っている構図は犯罪に近いですね。
「ところで、王都までは案内して頂けるのでしょうね?」
「勿論だ。儂が行こう」
「長。アンタがここに残らなくてどうするんだ?」
「だがミストルティアまでの秘密の通路を知るのは儂しかおらんだろうが」
確かにその通りだ。
見つからないようにしてあるから秘密の通路である。
しかもドワーフが細工をしてあるのなら、簡単に分かる造りにはなっていないハズだ。
「分かった。なら俺もついて行くぞ」
「私も行きます」
「ビランダ。お前は危ないから残れ」
「嫌です。貴方が行くなら私も行く。それだけです」
やはりこのラブラブ感がヤバいですね。
犯罪臭が漂うほどに不釣り合いなカップルといえます。
「先に言っておきます。帰りの道のりは自分達で何とかしなければいけないので、自分達の身は自分達で守れるようにして下さい。連れて行く人はあなた達が必要なだけ、連れて行ってくれて構いません」
「分かった。では人選やら準備があるから明後日でもいいだろうか?」
「ええ。構いませんよ」
明後日でいいのですか。長はいつでも行動が起こせるように準備をしているのですね。
コレなら足手まといにはならないかもしれません。
「アンタ達もこっちで用意してほしい物があったら言ってくれ。出来る限りの事はする」
「ええ。それは明日中にお願いします」
こうして炎の巨人の討伐が決定した。




