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ラグナロク  作者: ピロ
第6章 地下帝国とレンの旅立ち
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迷宮を早く抜けるには?

ここ最近寒いです・・・

皆さま風邪をひかないように注意しましょう♪




「小夜。貴方はお酒を飲んだのですか?」

「んーっ!?お酒なんて飲んでないよー」

小夜の目がトロンとしてる。

全く小夜も困った人です。

酒の席で酔っ払いの独り言を気にするような人は、いないからいいですけどね。


「ゴ、ゴメンナサイ。この果実酒でドワーフが酔う人なんていないから、何も考えずに出してしまいました・・・」

アルコール度数を上げる為に蒸留した酒ならともかく、果実を発酵させただけのアルコールで、ドワーフが酔うことはない。

何せ乳離れした小さな子供でも普通に飲んでいるくらいだ。

ちなみにドワーフが酔う酒は(スピ)(リット)と呼ばれている。

火を近づければ燃える所以(ゆえん)で火酒と呼ばれているのだ。


「何を言ってるんだねビランダちゃん。私は酒なんか飲んで無いから、酔ってなんかいない。そうだろ?」

「ハ、ハイ・・・」

座った目で肩を組んで、ビランダに絡む小夜。


「ビランダ、客人を寝室に案内してあげなさい」

「は、はい。分かりました」

「なにおー。俺ちゃんは酔ってなんかないぞぉー。アハハハハハハ」


長に言われて給仕をしていた女性達が、ヘロヘロになった小夜を抱えてくれます。

私達はゲストルームのような部屋に案内されました。

内装は素晴らしく、ドワーフの造った調度品は私が見ても素晴らしいと思える物でした。

さすが職人気質な種族です。

「本当に申し訳ありません・・・」

「大丈夫です。気にしないで下さい」

ビランダは申し訳なさそうに出て行きましたが、私としては食事が苦痛でしか無かったのでラッキーでしたね。

ナイスですよビランダ。



さてと。彼等も色々と事情がありそうですけど、恐らく聞いても言わなさそうですね。


さっきまでいた部屋の様子がアイラの前に立体映像で映し出される。

「ビランダ。客人を通したか?」

「はい。小夜さんはぐっすり寝ています」

ビランダはボルブの横に立つと、彼の服を少し摘まむように握っている。


あのヒゲ面のドワーフに童顔美少女のカップルですか?この世界に来て一番驚いた事かもしれません。



「長。あいつ等をどうするんだ?」

自警団団長のボルブが、さっきまで小夜が座っていた長の隣の席に座る。

「どうもするもこうするも無い。そのままこの街を去ってもらえばいいだろ」

「だがな。俺はあいつ等の強さを見た。一瞬でオーガ達魔物を倒したんだ。もしかしたら炎の巨人も倒すことが出来るかもしれない」

「あの小娘二人がドワーフの国を滅ぼした巨人を倒せるかもしれないだと?そんな馬鹿な話があるか」


長はドワーフの地下帝国の生き残りだ。だから炎の巨人スルトの強さを知っている。

俺は幼い頃、長から何度も炎の巨人の強さを聞かされていた。

この街で最高齢であるにも関わらず、未だに自警団の男達が誰も敵わない。

鬼人と呼ばれるほどの強い男が、絶対に手を出してはいけないのだという。

「じゃあ俺達はいつまでもこんな惨めな思いをしながら、生きて行かなければならないんだ」




ドワーフが住む国よりも更に地下にあるという、灼熱の世界ムスペルヘイム。

そのムスペルヘイムから魔物がこの地下帝国に溢れ出した。

ドワーフは一人一人が屈強な戦士だ。どれだけ魔物が来ようと叩き潰してきた。

だが炎の巨人の出現により戦況の全てが変わってしまったのだ。

灼熱の炎を操る炎の巨人に近づける者はいなかった。

「儂が出る」

ドワーフの王、ボブル・ディナ・ゲイドールが立ち上がった。

王は暴龍ガイアランを一人で倒した英雄であり、帝国一の戦士だ。

「確かに王にしか相手に出来ないかもしれない。だが王はボロボロじゃないか!!」

ボブルの持つバトルアックスは、山をも切り裂く力を持つ。

一度戦いを始めれば破壊の化身となり、全てを殲滅していく。

鬼神の如き強さとは、このことを言うのだろう。

だが、その代償は大きかった。

王の持つバトルアックスは、切り付ける相手の魂とそれを扱う者の魂をも喰らう。

という強力な呪いが掛けられている。

魂という糧を使うからこそ、得ることが出来る力なのだ。


「儂に王を止める事が出来なかった・・・」

長は王の側近だった。

王の強さを知っていたし、王の強さなら止められると思ってしまったのだ。


天翔断斬撃(てんしょうだんざんげき)ぃ!!!」

「グゥワワァアアアアアアアアア!!!!!!!」



それにあの時、炎の巨人は確かに真っ二つになった。

確かに倒したハズだ。

「・・・残念だったな」

「む、無念・・・」


倒れたハズの炎の巨人は炎の中から蘇り、英雄の魂は喰われてしまった。

英雄という精神的な支えを失ったドワーフ達は、烏合の衆へと成り果ててしまう。

状況を察した長は生き残ったドワーフ達をまとめ、命からがらブバーブの街に逃げ込んだのだ。

そして今に至る。


「儂はあの時の後悔を、今でも忘れてはいない」

寂しそうな目でどこか遠くを見つめる長。

「だがいつか倒さなければ、ドワーフに未来は無いであろうっ!!」

「ボルブ、お前の言っていることは分かる。しかし勝ち目のない戦いをするのは、ただの無駄死でしかないのだ」

ボルブは分かっていた。

神話に出てくるような巨人に、オーガですら手こずる自分が、戦いに挑んでも無駄死にするだけなのだと。

長の言うことに何も言い返す事が出来ない。

老人である長に勝てない自分が、炎の巨人に勝てるハズも無いからだ。


「その話、詳しく教えてもらえますか?」

「アイラ殿、聞いておったのか・・・」


壁にもたれ掛かり、腕を組んでいるアイラがソコにいた。

「ええ。聞かせてもらったうえで、私達にメリットがあれば引き受けてもいいですよ」

「メリット?」

「ええ。私達が炎の巨人を倒すことで得をする事があれば。ってことです」

さっきまで食事をしていた時に座っていた席にアイラは座る。

「炎の巨人を倒して得をすることなど、思いつきませんな。巨人は王都を占拠しています。奴を倒してくれるのなら、ドワーフが造った調度品や、武器や防具でよければいくらでも持っていってくれて構いませんがね」

「・・・そういった物は必要としていません。私達には時間が無いのです」

「時間ですか?」

「ハイ。私達は少しでも早くミストルティア帝国にある、ミレニア教の総本山に向かわなければなわないのです」






長は王に仕えていた時の事を想い出していた。

「もし儂に何かあれば、妻や子供と共にこの通路を使って逃げてほしい」

王の寝室にある隠し扉からミストルティアに脱出する通路が存在する。

長は王に仕えて間もない頃、その存在を教えてもらっていたのだ。

残念な事に王妃と王子達も亡くなっていた為、その選択肢を取る事はなかった。

「王都にある城を取り戻せば、王家の者がミストルティアまで脱出する為の通路がある。だが、炎の巨人を倒す対価としてはさすがに見合わないよな・・・」

長は驕髯を触りブツブツと呟きながら、他に何か無いか考えている。

「それは本当ですか?質問を変えます。その通路を使うのと、迷宮を行くのであれば、どの位の時間が変わるのですか?」

「そうだな、迷宮を知りつくした者で20日は早くなるとは思うが・・・」

「倒しましょうっ!!」

「へっ!?」


長の間抜けな声が部屋に響き渡たった。


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