エクリプス商会の躍進 その3
今日は何の日だったかな?
平日ですよ平日。
ふ・つ・う・の日です
店の奥でマルケス子爵夫人と話す、コリーナとナディアに視線を向ける。
問題があるとすればコリーナとナディアが、俺を誘っていることだ。
アルバート辺境伯自体、俺が二人を抱くことも、彼女達が俺の子を産むことも容認しているのだという。
貴族の妻の役目は、跡取りを残すことが最も重要視される。彼等にとって家同士の繋がりが重要で、自由な結婚は許されていない。
そのせいか跡取りを設けた後は、自由に恋愛を楽しむ貴族が多いのだそうだ。
俺の持ち込んだネックレスに彼女達は興味を持ち、その視線が俺に向けられた。
彼女達の子供は俺より年上だが、それでも俺は彼女達に惹かれている。
肉体関係を持つことだって、嫌という感情は全くない。そのくらい二人とも魅力的だ。
問題なのは彼女達が権力者ということだ。
もし、彼女達が私の側にいなさいと言えば、基本的に断ることは出来ない。
全く断ることが出来ないということは無いだろうが、小夜を探す為の人脈は失われるだろう。
コリーナからは肉体関係を結べと彼女の口から発せられた。
この前屋敷に行った時のように誤魔化すことは出来ないだろう。
魑魅魍魎が集まる貴族の世界で生き抜いてきた彼女等に、俺は勝てるのだろうか?
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
買い物を終えて、ホクホク顔で帰る貴族達を送り出す。
やっと人が減ってきたと思ったら、今度は商人達が入れ替わるようにやってきた。
貴族の不敬を買いたくない彼等は、貴族達がいなくなるのを見計らっていたのだろう。
キャラバン隊のテント街で見た顔ばかりだな。
商人達には悪いが、設定した値段より2倍の金額を設定している。
そのまま素直に買うような商人など一人もいないし、所詮はライバルだ。
だから安く売るつもりもなければ、数も出すつもりもない。せいぜい自分の妻や愛人に媚を売る為のお土産として日用品を売りつけるだけだ。
「おいおい、全然品物が無いじゃないか」
「はい。お客様には申し訳ございませんが、大変好評でして、残りがわずかとなってしまいました」
残りはシャンプーとコンディショナー、それと石鹸の抱き合わせのセットしか残ってない。
金貨10枚と高額設定で、基本一人1セットのぼったくり販売となっている。
普通ではあり得ない値段ではあるが、貴族達が押し寄せてきて買い占めていったのだ。
きっとその価値があるに違いないと、渋々購入していった。
「可愛い顔してるくせに、レンは悪い男なのね」
第二夫人のナディアが後ろから抱きついてくる。
「彼らは近いうちにライバルなります。彼らに商品を流されてしまっては、その価値が下がりますからね」
まぁ流されたとしても手に入らない希少品として、プレミアを付けさせてもらうけどね。
「ふーん。それよりずっと立ちっぱなしで、疲れちゃったわ」
「では応接室に案内します」
俺はハワードに飲み物とお茶請けを持ってくるように言いつける。
「コリーナ様はいまどこにいるのですか?」
「コリーナはクリスと一緒にテラスでお茶しているわ」
俺の腕に手を絡ませてくるナディアを見ると、完全に男を狙うメスの目をしている。
「グッ・・」
その時、レンの頭にチクりと痛みが走る。
“ アダム計画のプログラムを実行します. ”
レンの体にはマイクロチップが埋め込まれていた。
マイクロチップに入っている強制プログラム。それが実行されたことをレンには知る由もなかった。
「じゃあ今は二人きりってことなんですね?」
「そうよ」
ナディアはオスを求めるメスの顔になっている。
いいよ。どうせ逃がすつもりも無いんだろ?
ここでこのメスを屈服させるほど、快楽に落としてやる。
俺の中からドス黒い感情が湧いてきた。
コンコン。
部屋をノックする音と共に、メイドとして購入したメイリンが紅茶とお菓子を持ってくる。
「メイリン。しばらくこの部屋には誰も通さないようにな」
「はい。分かりましたご主人様」
頭を下げてメイリンが出るのを見届ける。
さて、目の前にいるコイツを俺のものにしてやる。
「ナディア様、あなたは悪い人だ。俺をこんなにさせて」
俺は立ち上がってナディアの目の前に立つ。俺は彼女の手を取ると、俺の股間に手を持っていく。
ナディアは硬くなったソレを触ると、愛おしそうに撫でてくる。
「責任を取ってもらいますからね」
俺は彼女の唇を強引に奪い、激しく舌を絡ませて彼女をソファーに押し倒した。
「申し訳ございません。本日は用意した物が全て売り切れとなってしまいました。またのお越しをお待ちしています」
入り口に立ち、後からやってくるお客に対して全員で謝罪をする。
みんな渋々ながら納得して帰ってもらう。
「まさかこんなに早く売り切れちゃうなんて思いもしなかったわね」
「そうね。でもあるところにお金ってあるんだってことは、よく分かったわ」
「うん。それだけ私達が搾取されているんだってこともね・・・」
エスターとルシェリはため息をつく。
「そろそろお客様もいらっしゃらないような感じになってきましたから、そろそろ屋敷の中に戻るとしましょう」
執事のハワードがキリのいい所で中に入るよう指示をする。
空いている使用人用の部屋に入ると、金貨が山のように積み上がっていた。
重みで今にもテーブルが壊れるんじゃないかってくらい、足がヤバい音を出している。
「それにしても凄いわね・・・」
「本当にビックリしちゃうよね」
「私数える前にお花を摘みに行ってくるわね」
「ハ~イ」
ルシェリが廊下を出て厠に向かっていると、どこからか声が聞こえてくる。
厠の手前で立ち止まって耳を澄ませてみると、廊下の奥から艶めかしい喘ぎ声が聞こえてきた。
「・・・ィィ・・・・。・・・ァァアァァッ・・・ァァ・・・ァァ・・・ァァ・・・」
恐る恐る足を忍ばせて声がする部屋に近づいていく。廊下の曲がった先から声がしてくる。
廊下から声がする方を覗いてみると、メイドのメイリンが扉の前で下を向いて立っていた。
恥ずかしくて顔が真っ赤になっているのが分かる。
恐らく誰も入らせないように見張りを立たせてているのだろう。
えっ!?見張りなの?
メイリンは奴隷だ。奴隷が命令を聞くってことは・・・
女性の声は息が止まるのではないかというほど喘ぎ声が裏返っていた。
男の方は呼吸というより、走っている時のような激しい息遣いで腰を打ちつけている音がする。
それは愛し合っているというより、獣がメスを犯しているようにしか思えない。
嘘。ちょっと、一体誰がしてるのよ・・・
激しいその行為にルシェリの下腹部がジワリと熱を帯びる。
「・・・ィィ・・・アッ、アッ、アッ、アッ、アッ・・・レン・・・イイ、イイッ。ァァァァ・・・ァァァァァ・・・ァァァァ・・・ァァァァ・・・」
「えっ?」
甘い声で呼ばれたレンの名前。この中で女性を抱いているのは、自分が抱いてもらいたい男、レンだった。
いやらしい声に興奮をしていたルシェリの心が一瞬で萎える。
・・・何よ、私のことは抱いてもくれないくせに・・・
” 思考誘導率73%. ”
“ アダム計画発動。受胎被験者1 ” ナディア “ の子宮内にナノマシンの固着に成功. ”
“ 胎児の補完計画プログラム発動. ”
“ 精子の選別をします. ”
“ 受胎する遺伝子を確定しました. ”
“ 卵子への着床を加速. ”
“ 成功. ”
“ 胎児の補完計画に移行します. “
「ハッハッハッハッハッ。レン君は凄いな。犬のように激しく腰振ってるよ」
「被験者に対して酷い言い方ですよ。まぁ、否定はしませんけどね」
暗い部屋の中、モニターに映されたレンの姿をにやけながら見つめる男二人がいた。
眼鏡を掛けた男は吸っていたタバコを消すと立ち上がる。
「生存本能の強い魔物の遺伝子を組み合わせたから、どんどん交尾してもらわないと困るんだけどねぇ。我慢強いな彼は」
獣のように腰を振り続けるレンの姿が男の眼鏡に映り込む。その映像を見つめながら、下等生物を見るような目でレンを見つめていた。
「でも我々の希望であるアダムに、ゴブリンとオークとオーガの遺伝子を配合しているなんて、正直に言わせてもらうと洒落になっていませんよ」
座ってモニターを見つめている男は、ヤレヤレといった感じで眼鏡の男を見つめる。
「アダムワンにはスポンサー用の転生体をいっぱい造ってもらわないといけないからコレでいいんですよ。我々の転生体はプロトタイプのアダムゼロから生まれた個体に転生します」
「それならいいですけど。私達に逆らうことの出来ないような強い遺伝子を組んだ転生体をお願いしますね」
「ええ。安心して下さい」
男は新しいタバコに火を付けると、再生していたファイルを閉じた。




