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ラグナロク  作者: ピロ
第5章 商会 後編
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再び奴隷市場へ


俺達は新しい奴隷を求めて奴隷市にやってきた。前回見た奴隷商を見掛けなかったから、どれだけ奴隷商がいるんだと思っていると早々に声を掛けられる。

「兄さん、ウチにはいいのが揃ってますぜ」

いやらしい笑みを浮かべながら、小太りの奴隷商が声を掛けてきた。

どうして奴隷商というのは胡散臭い連中ばかりなんだ。


前回来た時のことを考えて、まずは全体をまず見てから回る方がいいような気がした。全部を見て回ると、どうでもよくなってくるからだ。

前の時に比べると奴隷商の数は少ないものの、奴隷を扱う人数が多い。

扱う人数が多い所は護衛で雇っている冒険者も必然的に多くなっている。

「どうだい、ウチのを見てってよ」

女性ばかりを連れているから、俺が女性を買いに来たと思っているのだろうな。

声を掛けてくるのは案の定、女性の奴隷を扱う奴隷商ばかり。


その中でも特に大きなテントを張っている奴隷商が、俺に声を掛けてくる。

「どうだい兄さん。ウチは他とちょっと違うよ」

そう声を掛けてきたのは、かなりガラの悪い男だ。顔には切られた傷があり、酒とタバコで声が潰れている。見た目の悪さと合致していた。

男が使用人に顎で合図をすると、見世物小屋のような所から5人の奴隷を連れてくる。

見た感じもグラマスでキレイな女性達だ。着させている服もいい服装ばかりで、ここで叩き売りするような感じの奴隷ではない。

「いくらだ?」

「大体金貨200枚前後って感じですかね」

ここに来ている多くの奴隷商と違って、たたき売りする感じの値段じゃない。

「なかなかいい値段だけど、ココで売れるのか?」

ここの奴隷の相場は金貨30枚から50枚といったところだ。この男は冒険者を10人以上雇っている。かなりの大口の奴隷商なのだろうな。

「ウチは色々回って商売やってるんでね、安売りはしない口なんですよ。それにここにいるのは没落した貴族の使用人で、教育もしっかりしている。それを考えれば妥当な値段だと思いますがね」

「まぁ確かに教養はありそうだ」

俺が興味無さそうなのを察すると使用人に顎で合図をして奴隷達を戻した。

「兄さんは幼い子を求めてるんですか?」

俺の両手にいるユキとミレーヌを見て奴隷商が使用人に合図をすると、奥から幼い女の子を連れてやってくる。見た目も人形のように可愛らしい女の子だ。

しかしうつむいたままで、ビクビクと震えている。

「この娘は貴族の子でね、女に成長していく過程が楽しめますよ。金貨500枚でどうです?」

奴隷商の男が小声で俺の耳元で囁いてくる。

恐らくこの奴隷商は合法で奴隷を手に入れているのだろう。

だが、いやらしい笑みを浮かべるこの男の顔をぶん殴りたくなってしまう。

「俺は商会の顔役が出来るような奴隷を探しに来たんだ。悪いがそういうのを求めてはいない」

「そうですか、そうですか。さすが兄さん、女をいっぱい囲っているだけはある」

そういうと面白くなさそうな顔をして使用人に声を掛ける

「おいっ。爺さんを連れて来い」

少女をテントの奥に戻すと、今度は顎に白いヒゲを蓄えた老人がやってきた。

しかし背筋がピンとして、優雅な感じがする。

「この男は没落した貴族の執事をしていた男です。お役御免の年齢なんで、金貨100枚でお譲りしますよ」

「話をしたいんだが、構わないか?」

「ええ。どうぞどうぞ」


男の名前はハワード。

彼はミストルティア帝国の小国家、ルディスの男爵家に執事として仕えていた。

その貴族は内乱で負けて家は取り潰しになり、13歳以下の子供以外は全て処刑。

生き残りは奴隷として売られて、家の使用人も騎士や兵士もまるごと犯罪奴隷としてこの奴隷商に売り飛ばされたそうだ。

隣国のアルジウスは戦争中でお互いを敵視している。だからアルジウスで売る事は難しく、カルヴァン王国まで売りに来たのだという。表に出していないのはアルバート伯に売るつもりで来ているから表に出す必要が無いのだそうだ。


「他にもいるなら勿体ぶらずに見せてくれよ」

ハワードの言ったことが本当なら、貴族の子供達や部下の兵士、使用人全員を犯罪奴隷として買い取ったことになる。

奴隷商の男に隠している奴隷達を出すように促してみた。

「兄さん。全員出すのは手間ですからね、中に入ってもらえますかい?」

「ああ。構わない」

高そうなソファーに偉そうに座っていた男が立ち上がり、俺達は中に案内される。

中に入ると大きな絨毯が敷かれていて、奴隷達はそこにいた。

手枷と足枷がされた人達がパッと見で30人以上いる。

「全員貴族の使用人か」

貴族に忠誠を誓って奴隷落ちになったなら、人材としては申し分ない。

教育も受けているから猶更だ。 俺は騎士と兵士の五人、調理の出来る男を一人、給仕をしてくれるメイドを一人をチョイスする。

「この人数でいくらになる」

「兄さん金貨1800枚になりやすが、先に聞いておきます。本当に奴隷を買うお金を持っているんですかい?冷やかしは困るんですよ」

その声で護衛の冒険者達の腰が少し浮いたのが見える。


確かに8人の奴隷で金貨1800枚だ。俺みたいな若造がポンと出せる金額じゃないと思っているんだろう。

「白金貨180枚だ。文句ないだろ?」

まさかの現金一括払い。コレには奴隷商も驚いている。

白金貨は一枚でもかなりの価値がある。全部の金貨を確かめるのにかなり時間が掛かったが、確認すると奴隷商の男は今までにない笑顔で8人を譲ってくれた。


金額がもっと安ければ全員買い取っても良かったが、今の所持金で全員を買い取ると運営資金が心許なくなる。

助けてやりたいけど、ここに慈善奉仕をしに来たんじゃないからな・・・

結局俺は、老紳士のハワードと兵士を5人、料理人とメイドを一人購入することにした。

こっちのお金はかなり減ってしまったが、これだけいれば商会を問題なく運営出来るだろう。


「ご主人様、これから宜しくお願いします」

「ああ、宜しくね。ハワード。全員を紹介をしてもらえるかい?」

「はい」


元ミストルティア帝国 ルディス国男爵家

執事  ハワード (男) 59歳

騎士  レパード (男) 28歳

騎士  ヴェイン (男) 26歳

兵士  スコット (男) 21歳

兵士  バイロン (男) 19歳

兵士  ラッセル (男) 18歳

調理師 ミカエル (男) 31歳

メイド メイリン (女) 17歳


俺はハワードには商会の俺の代理として代表をしてほしいこと。

騎士のレパード、ヴェイン。兵士のスコット、バイロン、ラッセルには近隣の街に商会の荷物を届ける役割をしてもらいたいこと。調理師のミカエルには商会の食事を作って欲しいこと。メイリンは給仕の手伝いをしてもらいたいこと。また手が空いた時には各々が協力して商会を盛り上げて欲しいことを伝えた。


「それから一つ聞きたいことがある。君達は貴族に仕えてきた。今も前の主人に忠誠心があるんじゃないのか?」

「はい。無いとは言えません。私達は忠誠を誓っていなければココにはいないのですから・・・」

「分かった。質問を変える。君達が仕えていた無き主人の娘がいれば、君達のヤル気に繋がるのかな?」

「勿論です」

全員の顔が明るくなった。余程以前の主人が好きだったのだろうな。

「俺は今から無き主人の忘れ形見を買うことにする。念の為に言っておくけど、俺は彼女を特別扱いはしないで君達と同じように扱う。俺は目的の為に君達を買った。だから忠誠を誓うのは俺だということを忘れないでほしい。それが守れないのなら、奴隷に戻ってもらうしかなくなるからね」


俺は彼らの無き主人の忘れ形見を迎え入れた。彼女の名前はオイリア。廃嫡されているのでもう貴族でもない。ただのオイリアだ。

「あんちゃん、これで揃ったのか?」

「ああ、これでやっと商会を始める事が出来る」


こうして世界に轟く、エクリプス商会が出来たのであった。


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