ドワーフの街 ブバーブ
「見えた!!」
私達が見たのは疲労しきったドワーフが3人。
前衛の男二人がバトルアックスを持ち、女性のドワーフが後ろで魔法の援護をしている。
激しく肩で息をして限界を迎えている様子だ。
ビィィイィィイイイイイイ。
警告。護衛対象の異常が感知されました。
アイラの脳内で警告音が鳴り響き、サポートAIから小夜の特定情報が開示される。
護衛対象の状態異常を確認しました。危険な状態にあります。
心拍数上昇、血圧異常値を計測。
小夜の体温が異常値を示しています。
1200度、1400度、1800、2000,2500、3000。
まだまだ上昇する模様。
5000、6000、7000・・・
まだまだ上がります。
10000度を超えました。護衛対象の体が発光をして青白い炎を纏います。
11000、12000、13000。
・・・これが大妖怪九尾の狐の力?
「妖狐雷帝炎舞っ!!!!!!!!!」
まばゆい光と共に敵に突っ込んで行く小夜。
突撃された魔物達は炎に包まれて、断末の絶叫を上げた。
「な、何が起きた!?」
先程炎の獣が二体現れたと思ったら、今度は突然の熱風と共に現れた炎の塊だ。
魔物達は炎に包まれて、苦しさに暴れまくる。
青い炎の中から一人の少女が現れると、光る剣を手にして苦しむ魔物達を一刀両断していく。
「なんという強さだ・・・」
目の前の少女が持つ光る剣は、その辺に生える草を刈るように魔物を切り捨てて行く。
信じられない光景だった。
ドワーフが持つバトルアックスは、武器の中では最強といっていいほどの攻撃力を持つ。
何日もハンマーで叩き続け、鍛えに鍛え上げられた鋼は芸術といってもいいほどの一品だ。
だがドワーフの対峙したオーガを一刀両断することは出来なかった。
「凄い・・・」
「ビランダ。まだアイツが味方とは限らない。俺達を狙っているハンターなのかもしれないんだぞ」
ドワーフは一瞬だけ助かったと思ったが、少女が味方だとは限らない。
むしろドワーフ達を苦しめた魔物を一瞬で葬り去った。更に強い敵なのかもしれないのだ。
「分かってる」
敵ならばもはや絶望でしかない。
ドワーフ達は私の方を見て、いつでも戦闘が出来るように構えている。
魔物達を一瞬で倒しちゃったから警戒してるよね。
「大丈夫ぅ?」
周りに魔物達に殺されたドワーフがいるから、適切ではないかもしれないけど声は掛けないとね。
「返事はないかー。まぁそうだよね、こんな場所で人と出くわすことなんかないもんね」
小夜は手にしてレーザーブレードを腰のケースに戻して、何も持ってないと両手を出してアピールをする。
「私達は敵じゃないよ」
しばらく警戒をしていたが敵意が無いことを知ると、ドワーフ達も少し安心して武器を下してくれた。
「お主達は何者だ?」
先頭に立って戦っていたドワーフが声を掛けてくる。恐らくこの中では一番上の立場にいる者だろう。
「私達はアルジウスにある廃坑から、この地下迷宮を通ってミストルティアに向かっているんだよ」
「本当か?普通に陸路を使った方がよっぽど早いだろうが」
ドワーフが再び警戒してしまう。
大迷宮を通るくらいなら普通に歩いた方が早い。それに魔物の巣窟になっている迷宮は危険でしかないからだ。
「小夜。それでは言葉が足りませんよ。今アルジウスとミストルティアで戦争が起きています。国境は封鎖されているので、アルジウスにある廃坑から迷宮を使ってミストルティアに向かっているのです」
「・・・・・・まぁ、お主等の実力なら、ここを通っても問題は無いのか」
少し考えて納得してくれた。
「助けてくれたこと感謝する。儂はブバーブの自警団団長ボルブだ。隣は自警団の団員ゲオルド、後ろの女子はビランダだ」
ぶっきらぼうな男性ドワーフとは違い、女性のドワーフは凄く丁寧にお辞儀をしてくれる。
男性のドワーフは小柄でも逞しい体付きなので大人に見えるが、女性のドワーフは小柄なせいか幼く見える。
独特な民族衣装を着ているのだが、体のラインがはっきりしていて見える箇所は無いのにも関わらず色っぽい。
「私は小夜、こっちはアイラちゃんだよ」
「アイラです。私は小夜の護衛のようなものです」
「こんな所だから大した礼は出来ないが、街で休んで行ってくれ」
「おお。本当に街があるんだね」
「ビランダ、儂らは他の奴等を弔ってから戻る。客人を儂らの館に連れて行ってくれるか」
「分かりました」
そういうと男達は死んだ仲間を弔う為に穴を掘り出す。
ビランダは死んだ仲間に祈りを捧げると、私達を街に案内するように誘導してくれる。
「凄く明るいライトですね」
昼間のように明るくなるライトにビランダは驚いている。彼らも明かりは持っているが、魔石を使ったランタンのような暗いライトしか持っていない。この状態であの魔物達と戦うのだ。夜目の聞く魔物からすればいいカモでしかない。
「そうでしょう。ウチのアイラちゃんは凄いんだよ」
「まぁそれほどでもありますけどね。ざっと10万ルーメンの明るさでしょうか?」
アイラの説明にどう反応すればいいのか分からないでいると、小夜がアイラちゃんは褒めると嬉しいんだよと小声でビランダに教える。
「こんな凄いライトを用意できるなんて、アイラさんは出来る女性なんですね!!憧れます♪」
「ビランダさんは見る目がありますね。良かったら使ってみて下さい」
「あったかい!!」
そういって永久機関のカイロをプレゼントする。
「ポケットの中に入れておけば効果抜群ですよ」
「凄い!!アイラさん最高っ!!」
「それほどでもありますけど、ねっ!!」
髪をかき上げてポーズ取る。すると下からライトアップされ、デジタルのパーティクラッカーが祝砲をあげる。
元々チョロいロイドのアイラがツーウェイで褒められて、ウェーイランドの住人だ。
アイラちゃん、いつそんなもん仕込んでいたんだよ・・・
二人で拍手をしながらアイラは本当にラグナロクが起きた未来からやってきたのか、疑問に思ってしまう。
外壁に見張りのドワーフがズラリと並んで弓を構えて待ち受けている。
昼間のように明るいライトで照らされて街は軽いパニック状態になっていた。
危機感を感じたドワーフ達は急いで弓を用意して外壁に登ってきたのだ。
「ビランダです。弓を下して下さい」
「こっちからは明るすぎてお前が本当にビランダなのか確認出来ない。お前が本当にビランダという証拠はあるのか?」
アイラの持つライトが明るすぎて、こっちには誰がいるのか見えていないようだ。
「ビランダ、少し前に出て下さい」
「はい、分かりました」
ビランダが前に出ると、ライトの光源を弱くする。すると外壁に登っているドワーフ達がビランダがいることを確認出来たようだ。
だがこんなに明るいライトをどうしたのかとか色々と説明が必要であった。
30分ほど質疑を繰り返して、ようやく信じてもらえたようだ。
「恩人に失礼なことをした。申し訳なかった。それから、魔物達から同族を助けてくれて感謝する」
分厚い門が開くと、長のような人が出てきてお礼をしてくる。
自警団の団長ボルブの手伝いをしてくるように命じると、数名のドワーフが穴を掘る道具を手にして彼等のいる方向に向かっていった。
周りにいる女性のドワーフ達はまだライトの明るさを怖がっているように見える。
先程のドワーフ達のパニック状態を見れば、異常なことなのだろう。
アイラは自粛してライトを消した。
真っ暗になるかと思ったが、門の中に入ると結構な街灯の数があって歩くのには支障が無い。
石畳がキレイに敷いてあって明るい所で見れば田舎の趣のある街並みのように見える。
ただここには旅をする人などいないのだろうから、宿らしきものは見当たらない。
食事をするような所は何件かありそうな感じだ。
小夜とアイラは長老と、若いドワーフ二人に連れられて大きな建物に案内される。
「ようこそ、ドワーフの街ブバーブへ」




