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ラグナロク  作者: ピロ
第4章 地下迷宮へ
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異臭レベル5

寒いですねー。ひと月前までTシャツでいても平気だったとは思えないです。

インフルエンザが流行ってます。皆さん気を付けて下さい。

「アイラちゃんしっかりして」

「大丈夫です。小夜は自分のことを心配して下さい」

小夜はボロボロになって金属の骨格だけになってしまったアイラの肩を支え、険しい道を歩いていた。

アイラちゃんは何でこんなに重いのさ。

「全然大丈夫じゃないじゃん。それにしても、アイラちゃんは骨が金属だから重いんだね」

肩を貸して歩いているのだが、一歩踏み出すだけでも重くて倒れてしまいそうだ。

ドラゴンのブレスをまともに受けてしまい、アイラの表層的な肉体が焼けてしまった。

ドラゴンは倒したものの、今の状態で襲われたら危機的状況だ。

「これでも軽量化されているんです。重くはありません」

そんな可愛い仕草をしながら言ったって、今のアイラちゃんは殺戮マシーンのターミネーターでしかないんだからね。

恐怖の大魔王が可愛い仕草しても更に恐怖が増すだけだよ。

「何ですか?何か可笑しなことでもありましたか?」

いやいやいや、可笑しいよ。怖いって。赤い目が光ってるし、金属のドクロがこっち向いたら怖いでしょうが・・・




私達はカルヴァン王国の辺境都市、ナーセルを南下して、今はアルジウス王国にいる。

目的地はミストルティア帝国の北方にあるミレニア教の総本部を目指していた。しかし通常のルートはアルジウスとミストルティアの国境付近で小競り合いが頻発していて、アルジウスから国境を超える事が出来なくなっている。

あとはカルヴァン王国を北上して大陸を迂回して行く方法があるが、馬車を使っても1年以上も掛かってしまうほど大回りとなってしまう。

では何故国境が閉鎖されている方に向かっているのかというと、一つだけ別のルートが存在しているからだ。

この大陸には巨大な山脈がそびえ立っている。人を寄せ付けない、岩肌向き出しの険しい山々だ。隣国アルジウスの山脈に面した一角に、廃坑となった鉱山があるのだが、地下迷宮に繋がっている場所があるという。

元々鉱山は金鉱山としてこの周辺は栄えていた。しかしある日を境に魔物が溢れ出し、廃坑となったといういきさつがある。


魔物がまだ溢れる前のことだ。金を掘っていた時に地震が起こり、岩盤が崩落した。

崩れた所に別の洞窟のような空間に繋がってしまったと鉱山夫達が報告をしてきたのだそうだ。

不思議に思った鉱山夫達だが、報告だけはして、その穴はほったらかしにされた。

しばらくは何事も無かったのだが、鉱山夫が魔物に襲われるという事件が起こる。

最初は外から迷い込んだ魔物だと思われていたのだが、魔物は徐々に増え、気付けば軍に討伐を依頼するほど魔物が増えてしまっていた。

しかしそれが逆効果になってしまう。戦いが人や魔物の血を撒き散らし、血の匂いに惹かれて魔物達をおびき寄せてしまった。

繋がってしまった空間から魔物が入り込んだと分かった時は既に遅い。

そこから大量の魔物が鉱山の中に入り込み、あっという間に魔物の巣窟になってしまったというのだ。

そして金鉱山は誰も入り込むことの出来ない魔窟と成り果てた。


その時、そこが何なのかは分からなかったのだが、そこがドワーフの造った地下迷宮だということは後々分かる話だ。



ドラゴンをアイラが倒したからだろうか、私は大妖怪と呼ばれた頃の力を取り戻していた。

あのドラゴン、私一人だったらヤバかったな。

そんなことを考えていると目的地が見えてくる。

「アイラちゃん、鉱山の入り口が見えてきたよ」

割と大きな滝があって、その近くに廃坑になった入り口がある。

坑道の中は真っ暗だ。この先に地下迷宮が繋がっていて、そのどこかからドワーフが住んでいた国に繋がる通路があるらしい。私達は神の目の届かないドワーフの地下迷宮通って、この世界の創造主であるミレニアがいる帝国を目指しているのだ。

「ちょっと休もうよ」

アイラが腰かけることの出来そうな石に座らせる。骨格は流体金属で、熱を加えると元に戻る形状記憶合金なので既に戻っていた。しかし内部の損傷が激しく8割近くが焼き切れたらしい。さっき尋ねた時は7割程度回復したそうだ。

壊れたのが自動で回復なんて普通出来ないだろ。未来の技術に私の頭が追い付かない。

最初は引きずるようにアイラを引っ張っていたのだが、それが段々と回復して肩を貸せば歩けるまで回復していた。

未来のテクノロジーってのはヤバいよね。

「さてと。ちょっとやりますか。アイラちゃんはそこを動かないでね」

私は坑道の内部に待ち構えている魔物の存在に気付いていた。

隙あらば飛び掛かろうとしているのをヒシヒシと感じる。

「さてさて、隠れてないで出てきなよ。いるのは分かってるんだからさ」

すると隠れていても意味がない事と分かったから、奥から奇妙な魔物が現れた。

「うわっ、これまたキモイのが出てきたね」

巨大なゲジゲジのような体に、人の顔のような頭が付いている。

足が人っぽい、それが気持ち悪さを更に増していた。

「さっさと倒されてよね」

鬼火を出して、ゲジゲジに向けて火を放つ。だが放った鬼火は避けられて洞窟内に明かりを灯す。巨大な体からは想像出来ない速さだ。

そして口から長い舌を尖らせて攻撃してきた。

「うわっ。危なっ」

避けた先の石が砕かれ、砕けた石の欠片がジュウジュウと音を立てている。

「あーっ、もう面倒くさいなぁ」

私は眷属を9匹召喚してゲジゲジを一斉に攻撃する。さすがに全方位から攻撃されては避ける事は出来なかった。ゲジゲジは圧倒的な力で倒された。

「うへっ、なんか凄い匂いがする。失敗したな」

ゲジゲジが焼けた匂いが坑道内に充満し、とても入る気になれない。

しばらくはアイラちゃんの回復を待つのがいいかな?うん、それがいいに違いない。

だが残念な事に奥から風が流れてきて臭い匂いが流れてくる。

「小夜、異臭がレベル5です。お尻からガスが出ましたか?」

「してませんっ!!それに異臭レベル5って何?私のおならが臭いって思ってるの?」

「冗談です。アンドロイドジョーク、分かってもらえませんか?寂しいですね」

「その怖い顔で言われるとシュールなんだよね。そろそろボディスーツ着て迷彩掛けたらどうなの?」

「あっ、すっかり忘れてました」

アイラはナノプロテクターを着ると光学迷彩を使って元のアイラに擬態する。

「いいね。やっぱりこっちの方が可愛くていいよ」

「ありがとうございます。小夜も可愛いですよ。おならの匂いは強烈ですが」

「もーっ。さっきアイラちゃんのこと重いって言った事、まだ根に持ってるの?」

「いいえ、全然気にしていません」


今より少し前のこと・・・


「ねーっ。アイラちゃんって体重どのくらいあるの?」

「はい、およそ800kgくらいでしょうか。かなり軽量化されています」

「ゲッ!!800kgとかヤバすぎ、重すぎでしょ」

アイラを引きずっていた時にした会話なのだが、アイラはコレが気に食わなかったらしく、私の前のモデルは1200kgだったとか、更にその前は人型として維持なんか出来なかったとか、ブツブツ言っていた。


「ゴメンってば。私が悪かったよ。アイラちゃんは軽いって。ねっ。だから機嫌なおして」

あーっ。アイラちゃんってかなり面倒くさいんだな・・・

「そう言いながら私のこと面倒臭いとか思っていませんか?」

「ううん、思ってないよ。全然思ってなんか無いよ?」

面倒くせーっ。

「本当ですか?それなら良かった。ずっと小夜の言葉が気になって、メモリの中を無限ループしていました。マイクロ核融合炉が臨界点ギリギリで、メルトダウン寸前でしたよ」

「お願いだからそれだけはやめて」

ハァァァァアア。これもアンドロイドジョーク?でもマジに聞こえるからヤバいよね・・・体重ネタは禁句だね、気を付けなくちゃだよ。



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