アイラの生還
更新遅くなりました・・・
面倒臭い言い回しを無くそうと思って何度も書き直していました。
分かりやすい文章にするって難しいですね
遠くで小夜の声が聞こえます。何を言っているのでしょう。
・・・聞こえません。マイク機能が壊れかけているのかもしれません。
バックアップより復元します。
ERROR。
CPUがほぼ機能していません。外部のナノマシンから演算機能を使用します。
散布中のナノマシンの演算機能を借ります。
ERROR。
近くにナノマシンは存在しません。
それでは通信が届くナノマシンから演算機能を利用します。
OK。
仮想記憶領域確保。マイク機能をバックアップより復元。
OK。
「アイラちゃん、私を守ってこんなになっちゃったんだよね。ゴメンね・・・」
小夜、私は大丈夫です
ERROR。
スピーカーが機能していません。スピーカー機能を復元します。
OK。
身体的異常個所多数。全修復します。
ERROR。
マイクロ核融合路に異常があります。出力が足りません。
予備の出力と外部出力からのエネルギーを確保します。
OK。
「サヨ、ナカナイ、デ、クダサイ。ワタシ、ハ、ダイジョウブ、デス」
「アイラちゃん?」
アイラは小夜をぎこちない動きで抱きしめる。
エネルギーが足りないから動きは不自然だ。体だった表皮がボロボロと落ち、金属の骨格が現れる。
「良かった。アイラちゃん生きてた・・・」
小夜の瞳から更に涙が溢れ出した。
「美人が台無しになっちゃったじゃん」
小夜もアイラを抱きしめる。
「ダイジョウブ、デス。サヨ、ハ、キニ、シナイデ、クダサイ」
「こんな状態になって大丈夫とか言うな。心配したんだからね」
「・・・サヨ、シンパイ、シテ、クレテ、アリガトウ」
アイラは小夜が泣き止むまでずっと抱きしめていた。
「へぇー。こんなに早く治ってくもんなんだねぇ」
アイラの修復処理スピードは早く、死にかけていたような動きもしばらくすると、滑らかになっていた。
「小夜。日が暮れる前に、ここから離れましょう」
「そうだね。今この状況で襲われたら今度こそヤバいよね」
辺りの木が吹き飛んでいたり、燃え尽きてすっかり隠れる場所が無くなっていた。
それだけ戦闘の激しさを物語っている。
「それにしてもでっかい奴だったよね」
「はい。この世界の生き物の中では一番の大きさだと思います」
最初にいた街、ナーセルを離れてからアイラは小型のロケットのようなものを打ち上げた。
小夜がソレは何だと問い掛けると、ロケットが上空6000mに達した時にナノマシンを散布するのだそうだ。ナノマシンは風に乗って広範囲のデータを集めだす。
地形や街などの地理のデータを始め、生体系から人の言語まで読み取り、複数のパターンを検証して新しい言語すら翻訳してくれる。
そしてアイラや、施設にデータとしてどんどん蓄積されていく。だからこのドラゴンの事もデータとして知っていた。
「その前にこのドラゴンを持っていきます」
「えっ!?どうやって持ってくのさ?」
「コレですよ」
アイラは次元収納の指輪を見せる。そして死骸となったドラゴンを収納し、ドラゴンの流した血を念入りにレーザーで焼いて行く。
「おおー。こんなでっかいのも収まっちゃうんだねー」
だが小夜には少し疑問があった。
「何で血を焼いてるの?獣が集まらないようにするのかな?」
「いいえ。遺伝子の採取をさせないようにです」
ここには私とアイラちゃんしかいないじゃん。それなのに遺伝子の採取をさせないってどういうこと?
「何で?遺伝子を採取されたらマズいの?」
「先日戦った魔人達の遺伝子データが、ラボに自動プログラムで送られた形跡を見つけました。
私達の計画を邪魔する存在がいます。だから優秀な遺伝子の情報は出来るだけ漏らさないようにしておく事が良策ですね」
まだ動くことは出来ないアイラは珍しく話を始める。
「前回のラグナロクで破壊が行われた時、ノアの方舟で助かって今の世界に残った人達がいます。アトランティス大陸とムー大陸の生き残りで、彼らはこの世界を裏で牛耳っています」
「そいつらが敵って訳ね」
「はい。世界の意思と呼ばれています」
「その名前、聞いた事あるな」
「未来の技術を自分達の利益の為に使い、彼らは私の体を乗っ取り、小夜が創った世界も奪っています。そして彼等はそこに優秀な遺伝子を集め、神に近い存在を造ろうとしているんです」
「人として搾取するだけじゃ満足出来ないのかねー」
「恐らくそうでしょうね。そしてソウルチェンジャーを使って、自分達が新たな神として君臨しようとしています」
「ソウルチェンジャー?」
「はい。小夜が乗ったダイブシステムとは別の、未来の人類が造ったプロトタイプのダイブマシンのことです。基本的な所は一緒ですが、魂が定着する前に、他の魂とすり替えることが出来るんです。小夜がマシンに乗ったと思うのですが、そこにもプロトタイプが一つだけありましたよ」
別の部屋に一つだけダイブシステムがあるとは思ったけど、あれがソウルチェンジャーなんだ。
「ところで私の創った世界に、アイラちゃんはどうやってきたの?ずっと疑問だったんだよね」
「蓮の前世である龍は、夜刀神が祀られている神社にある鏡から、幽世に入る事が出来ました。そして夜刀神の開いたゲートから小夜の創った世界に行ったのです」
「ハァー。そういうことだったんだ。って、お兄ちゃん生身のままで幽世に入るとかヤバすぎ」
生身で幽世に入れば、鬼の餌食になるだけでしょ。それを生きていられたの?お兄ちゃんの前世の人達って凄い人ばかりなのかもしれない。
「そういえばあそこでアイラちゃんと初めて出会ったんだよね」
「正確にいうとアレはプロトタイプのアイラです」
「えっ!?アレってアイラちゃんじゃないの?」
まさかのアレは私じゃありません宣言?私が感謝していたのは実は違うアイラでしたってオチ?
「はい。でもあのアイラは乗っ取られて、あなたの好きな人を殺したのです」
「ソレって本当なの?」
世界の意思。今までは何となく聞き覚えがあるくらいだったけど、一気に憎しみが湧いてきたよ。
「はい。私は乗っ取られる前のデータを復元して、この体にインストールされました。体は乗っ取られてしまったので、こっちの私が元の私といえば私なんです」
えーっ。訳が分からなくなってきたぞ。
「なんか複雑だなぁー。でもここにいるアイラちゃんが元のアイラちゃんってことだよね?」
「はい、そうですよ」
「ならいいんだよ」
そういうと小夜はアイラに抱き着く。
「あの時アイラの体を奪ったのが、世界の意思です。でもどうやって私に侵入したのか全く分かっていません。間違いなく内部の人間に裏切者がいるのだと思います」
「アイラちゃんを乗っ取った体で、今もあの世界を今も牛耳っている訳だ」
「そうですね。あなたが世界樹に取り込んだ夜刀神の力を使って急速に力を付けてきています」
「夜刀神か・・・」
あいつの名前は夜美。私の名前に自分の名前を入れて、私の能力を縛っている女だ。そしてお兄ちゃんをずっと独占していた女だ。
「あいつらはあの世界を奪って神に成り代ろうとしてるんだろうね」
「彼らは自分達の組織の人間をそちらの世界に転移させて、新たな世界で自分達が神として君臨しようとしているんですよ」
「ふーん。自分達だけが助かって、搾取することしか考えていないってわけね」
「そういうことです」
「もう一つ分からない事があるんだけど」
「何です?」
「アイラちゃんはどうしてお兄ちゃんと一緒に私を倒しに来たの?」
「龍は夜刀神を助けに行ったのであって、小夜を倒そうとかそんなつもりは全くありませんよ。私は交渉しようと思っていましたが、その時は既に乗っ取られていて戦闘になってしまいました」
「あと夜刀神は何で私を倒しに来たのか知ってる?」
「ええ。ひとことで言ってしまえば彼を助けたいが一心であなたの世界を奪いに行きました。彼女は龍がラグナロクで存在が自体が無くなってしまうことを知っていたので、小夜の世界を奪って龍をそこの世界に転生させようとしていました」
「なるほどねぇ。って、なんか私が悪者みたいじゃないか。まぁあいつなりに考えていたってことなんだね」
「小夜。そろそろ体が動くようになってきました。ココを離れましょう」
「まだフラフラじゃん。肩貸すよ」
「ありがとうございます。ですが、恩を売っても夕食にはヘルシックチューブを食べてもらいますよ」
「えー。今ソレ言うかな?」
小夜とアイラのやり取りを、見ている者がいた。
この世界の神であるミレニアだ。
最強の手札であるドラゴンが倒されてしまいミレニアは途方に暮れていた。
「彼奴らを倒すにはどうしたらいいのだ・・・」
その言葉は誰もいない講堂に響いていた。




