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ラグナロク  作者: ピロ
第4章 地下迷宮へ
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ドラゴン強襲 後編

「アイラちゃん!!」



さすがにこのレーザー兵器の重量は重すぎましたね。

ドラゴンの振り回した尻尾をモロに喰らってアイラは吹っ飛ばされていた。

大木にぶつかってようやく止まったが、レーザー兵器の重さのせいで腕がよじれている。

「大丈夫です。問題ありません」

小夜に心配させてしまいました。本来私一人で小夜を守らなければいけないのに、これでは護衛失格です。


「本当に?無理はしないでよ」

あんなに無防備な状態でやられたのにレーザー兵器離さないの?どれだけフィジカル強いのさ。

小夜はアイラの頑丈さに感心してしまう。

だが、兵器を持っている腕がおかしなことになっている事に気付く。

「その腕大丈夫なの?」

「問題ありません」

「嘘だよ。間違いなく変な曲がり方してるよね」


ドラゴンの周りに再び石が浮かび上がり、竜巻が石を巻き上げる。

今度は石を投げつける為に巻き上げているようだ。

「このドラゴン頭良すぎだよ。でもね、私の炎はすぐに消えないんだからね」

小夜も炎を出してドラゴンに投げつける。一度着弾すると焼夷弾のように燃え続ける。何個か炎が着弾するとドラゴンは飛び上がる。しかし、先程レーザーを羽で防いだせいで上手く飛ぶことが出来なかった。

「逃がしません」

レーザーは怪我をしていない羽の付け根を打ち抜く。

「グギャァアアアアアアアアア」

羽が裂け、ドラゴンは墜落する。バランスを崩し墜落したドラゴンは直ぐには立ち上がることが出来ない。

「チャンス!!」

小夜はレーザーブレードで何度も切り付ける。特に尻尾を回して攻撃してこないように足の健を狙う。

何度も切り付けていると外皮を突破し、血が噴き出る。痛みに尻尾をバタバタとさせ、小夜の体より太い尻尾が打ち付けられる度に地震が起こった。

アイラもレーザー兵器をその場に置き、薙刀のブレードで攻撃をする。

「あれっ?さっき明後日の方向に腕が曲がっていたような気がしたんだけど、もう治ってるの?」

「はい。私の骨格は液体金属で出来ているので、金属に熱を加えて液体化させればすぐ直ります」

それは凄いよね。

「羨ましい限りだけど、骨が金属だと体重計に乗ったら倒れちゃいそうだよ」

「小夜、まるで人間みたいなことを言いますね。あなたの感性は理解し兼ねます」

「こんな時までアイラちゃんはブレないなぁ。さすがはターミネーターだよ」

「勘違いしないで下さい。わたしはクールビューティなアンドロイドなだけです。殺人ロボット兵器のように言わないでもらえますか?」

嘘だよ。間違いなく殺戮兵器じゃないか。それにアイラちゃんはしつこいからなー。

めんどくさいから、もう言わないことにしよう。

アイラが割としつこい性格だということを最近感じるようになっていた。

丁度今がソレだ。


動きの鈍くなったドラゴンを二人で切り付けて行く。未来のレーザー兵器でもなかなか切ることが難しいが、切り付けていくうちにダメージが目に見えるように分かる。

その時ドラゴンが顔を持ち上げ、いきなりブレスを吹きかけてきた。

避けられない・・・

そう思った瞬間、アイラは直撃を受けないように石突部分で私を突き飛ばした。

「アイラちゃん!!」

ドラゴンのブレスをまともに受けたアイラは火だるまになる。

ナノプロテクターの性能は素晴らしく、首から下は何もダメージは無かった。しかし、ブレスをまともに受けてしまったので、髪の毛は燃えて、シリコンで出来ていた肌はただれてしまっていた。

「大丈夫です」

小夜が近寄ってきて顔の状態を見て心配そうな顔をする。

だがアイラはアンドロイドだ。

当然のことながら痛みなどは皆無であり、シリコンで出来ている顔がただれているというデータしか見ていない。

だがアイラが女性で顔がただれてしまっている。その事実に小夜の怒りが頂点に達していた。

「女の子の顔に怪我を負わせるなんてさすがに許せないな」

小夜の瞳が赤くなり、圧倒的な魔力が小夜の周りに渦を巻く。

そしてどんどん魔力が集まってきた。

「こいっ!!」

小夜が右手を前に出し、小夜が呼びかけるとドラゴンの周りに、青い炎を纏った獣が何体も現れた。




体を得て喜びを上げるかのように獣は咆哮を上げてドラゴンに攻撃を始める。

ドラゴンも応戦するが、実体を持たないので尻尾で薙ぎ払っても意味がなかった。

獣自体が高熱の炎で、火に耐性のあるドラゴンでもどんどん弱って行く。

「よし、そのまま弱らせていくんだよ」


苦しまみれに獣に噛みつくと、一体の獣が消滅する。ドラゴンの牙には全てを穿つ力が備わっていた。手ごたえを感じたドラゴンは噛みつきで攻撃をするが、炎の獣の動きは素早く捉えることが出来ない。

しかし魔法であれば効くことに気付いたドラゴンは大気を操り、辺りの水という水を呼び寄せる。そして大きな水球を創り出す。

ドラゴンはその水球を獣の繰り出す炎と、自分のブレスを浴びせ水球を熱した。

近くで見れば分かったかもしれないが、水は高温で熱されてもの凄い勢いで対流している。

「小夜。危険です。下がって下さい」

アイラのバイオセンサーが水の温度が千度を超えていることに気が付いていた。

その声に瞬時に反応した小夜はアイラの方に掛け寄る。

小夜がアイラの声に気付いて後退しようとすると、ドラゴンは小夜を逃がすまいと炎の獣に水球を落とす。

「伏せて下さい」

アイラの指示に従って伏せた。アイラはカウンターパネルを展開して衝撃に備える。

小夜の召喚した獣と水が触れると同時に、ドラゴンは魔法で維持していた水球を開放した。魔法で膨張を抑えられていた水は一気に水蒸気爆発を起こす。

凄まじい爆発だった。


手前にある木々は全て薙ぎ倒され、小夜の召喚した炎の獣や燃えていた炎は衝撃波で全て消え去る。

小夜もアイラもカウンターパネルがある程度の衝撃を防いでくれたが、爆発の威力に勝てずパネルごと二人とも吹き飛ばされていた。

「・・・小夜、大丈夫ですか?小夜?」

小夜は吹き飛ばされた際、木にぶつかり気を失っていた。

ドラゴンは首を持ち上げてブレスをこちらに向けて放つ体制になる。

「小夜、失礼します」

気を失った小夜を抱き抱え後退する。しかしブレスを回避する事は出来ないと計算されていた。

管理権限でリモートによるナノプロテクターを強制操作。

“ エラー ”

遠隔操作不可。アイラのCPUにそう表示される。

「困りましたね」

小夜が着ているナノプロテクターを遠隔起動させよとしたが、センサーが壊れてしまっていた。自動で修復するがそれを待っている時間は無いだろう。

「モードチェンジ、サンクチュアリ起動」

アイラがその言葉を口にするとアイラのボディスーツが小夜の体を包み込む。

手前に赤い幾何学的な模様が現れて防御の体制をとる。

スーツが無くなりアイラは小夜がくれたネックレスを付けているだけの姿になっていた。



「大丈夫。小夜は必ず守りますからね」

小夜から貰ったネックレスを手にしてそれを見つめていた。



右腕を捻ると腕が外れる。アイラの肘の部分は銃口のようになっていた。

右足を少し後ろに下げ腰を落とす。そして高速言語で何かを口にしている。

するとアイラの体から高熱が発生する。

背中の皮膚が6箇所開いて、体に溜まった熱を一気に放熱をはじめた。

「マイクロフュージョンリアクターリミット解除」

「エンバイロメントプロテクションリミット解除」

「セキュリティモード解除」

「パワーゲージマキシマム、陽電子砲チャージ」

銃口になっていた腕の部分が伸びて砲身のように変形する。

アイラの体から煙が発生し、砲身が熱で赤く変化した。

その時、ドラゴンから放たれたブレスがこちらを襲う。

核融合炉のエネルギーを充填しているのだ。まだ動くことは出来ない。

アイラの前方にリフレクターパネルは展開されていたもののもう限界だ。

周りはどんどん高熱に覆われていく。

リフレクターパネルはその役目を終え、アイラはブレスを受けながらもドラゴンを狙い続ける。

アイラの体は煙を上げ出した。

外からも内からも高熱で覆われているのだ。そうなるのは当然としか言いようがない。

「あと少しです。あと少しだけ持って下さい」

アイラの体は炎に包まれていた。

このままでは脳を司るCPUまで焼き切れてしまう。

もう放熱も出来ません。




でも小夜だけは守らなければ・・・

小夜は私のたった一人の大切な友人。

だから私の体、もう少しだけ頑張って下さい。



ようやくエネルギーがチャージされる。



「これで終わりです」



アイラの右腕から伸びた砲身から、目も開けていられないような眩しい光がドラゴンに向かって発射された。

その瞬間ドラゴンの首は弾け飛び、頭を失った強大な体が倒れ込む。

ドラゴンはその生命を終わらせた。


「サ・・・ヨ・・・」

アイラが後ろを見ると、小夜は無事だ。

「ヨカッタ・・・」

アイラの体は燃え尽きていた。シリコンが溶けジュウジュウと音を立てていたが、しばらくすると炭化して音も止んだ。

もう女性の体だったことすら分からない。




やがて瞳に帯びていた光も消えていった。







「ねぇねぇ、今日はどこに行く?」

小夜は夢を見ていた。

アイラとは一緒の高校に通っていて、今日も楽しく会話しながら家路に向かう。

アイラは友達だ。学校の帰りにカフェに寄ったり、ウィンドウショッピングをしたり、無駄話に花を咲かせていた。

毎日を切磋琢磨して、お互いライバルで、同じ人に恋をして・・・

あれ?そうだったかな?

何か違うような気がする。

これは夢だな。そうに違いない。



でも知っている。アイラはとても、とても大切な存在だ。



ずっと前から。そう、生まれる前から知っている。



出会いはあまり良くなかった。



だって敵だったからね。



でも凄く感謝してるんだ。



ずっと、ずっと大好きだった人と繋ぎ合わせてくれたんだからね。



私にしたら感謝しても感謝しきれないんだよ。



私が存在意義すら分からなくなった時、救いの手をくれたからね。



だからもっともっと仲良くなりたいんだよ。



本当の親友になってくれたら嬉しい・・・・・・・・



「あれっ?」

不意に意識が戻る。

「私こんな所で何して・・・」


肉の焼け焦げた匂いが、小夜を一瞬にして正気させる。今は戦闘中だったことを思い出した。

「ドラゴンは?」

周りを見渡すと今動いているものはいない。そして倒れているドラゴンと弾け飛んだドラゴンの頭を見つける。



「アイラちゃん?」



時間は止まったように流れ、パキパキと燃える木の弾ける音だけが周りに流れていた。

アイラがいない。嫌な予感がする。

ドラゴンは誰が倒したの?

私の目の前に黒こげの塊がある。



「・・・嘘でしょ?」



小夜の瞳から涙が溢れ出す。

溶けてしまって黒ずんでいるが、首に掛かっているネックレスは、アイラにプレゼントしたものだった。

「ゴメンネ、アイラちゃん・・・」

小夜は肩を震わせながらアイラを抱きしめていた。









何でこうなった?



ミレニアの奴め・・・



怒りに反応した小夜の魔力が増幅されて、瞳が赤くなる。

「いいだろう。私の怒りに触れたこと、思い知らせてやるぞ」

その声は小さかった。しかし、その声は天界にまで届くほどの怒りがこもっていた。






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