ドラゴン強襲 前編
世は3連休・・・
いいな~
「グゥオオオオオオオオオオオオオオオ」
鼓膜が破れるのではないかという咆哮が辺りに響きわたった。
大気が揺れて、森が震えている。
その声はここに生きる者達への死の警告であった。
恐れを成した鳥達は一斉に飛び立ち、抗うことの出来ぬ恐怖から逃げようと、森に生きる全ての生き物が逃げ出す。
「凄いね。肌がビリビリするよ」
ミレニア教の追手を撃退した二人は地下迷宮に向かっていた。
この世界の神、ミレニアの目から逃れる事が出来るのが地下に潜る事だからだ。
「小夜、ドラゴンがこっちに向かってきています」
「えっ?ドラゴン?相当ヤバいの?」
「はい。今から来るドラゴンは山のように大きい体をしています」
「私達で倒せるのかな?」
「相手がどんなスキルを持っているか分からないから、倒せるとは言えませんが、質量だけで三千トンくらいはありそうです」
「うひゃぁ~。三千トンもあるの?」
三千トンの生物など想像もつかないが、相当な大きさだということだけは分かる。
「頭から尻尾まで八十メートルくらいあります。立った状態で三十メートルは軽くありそうです」
「どの位でここに来る?」
「現状のスピードで来るならあと二、三分の間です」
「う~ん、逃げるのは無理だよね。それならいっちょやりますか~」
本気で私達を消したいんだね。私達はドラゴンが来るのを待ち受ける。
そして見えていたドラゴンは近づくにつれ、どんどん大きくなって行き、目の前に山のような大きさのドラゴンが降り立った。
「大きいねぇ」
岩に擬態しているように見えるからアースドラゴンのように見える。だが巨大な羽で飛んでいるから他のドラゴンなのかもしれない。
「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
遠くで聞いた声でさえ肌がビリビリとしていたくらいだ。
目の前のドラゴンが咆哮をあげると、衝撃波で地割れまで起こしている。
「心臓がバクバクするねぇ」
この距離の咆哮だけで弱い生き物は死ぬ可能性すらある。
「小夜、コレを使って下さい」
見た感じは金属で出来たバトンのように見えるが、コレはレーザーブレードだ。
アイラは魔女狩りで捉えられた女性を助ける時に貸してくれたのだが、もの凄い威力だった。
「へぇ、貸してくれるんだ」
相手の剣が何も無かったかのようにスパスパと切れちゃうんだよね。
「生き残るには高出力兵器が無いと無理ですから」
アイラは薙刀のような形状のブレードを持って突撃を始める。
しかしそれを見たドラゴンは周りに竜巻を起こし、周りの石を浮かび上げる。
「・・・近づけませんね」
竜巻に飛ばされている石が鎧と化し、アイラは突撃をやめる。
「私がやってもいんだけどさ、本当ならお兄ちゃんにトドメを刺してもらいたいんだよなぁ」
「何で蓮に倒させたいのですか?」
突然蓮の名前が出てくることにアイラには理解が出来なかった。
「お兄ちゃんが倒せば神格を得るのに近づくからだよ。神格を持てば輪廻の輪から抜けることが出来るからね」
「さすがは小夜ですね、神格を持つ人が言うと言葉に重みがあります。ですが諦めて下さい。蓮はこっちにはいませんし、私達はミレニアを倒さなければ戻ることも出来ません」
「ちぇっ」
直径一メートルはあろうかという岩が飛んでくる。竜巻で勢いが付いているのでかなりのスピードだ。小夜は受け取ったレーザーブレードで切り裂くが、切れて二つになるだけで、そのままの質量兵器が襲ってくる。避けるのが一番ベターのようだ。
「うひゃー!!」
こんな大きな石、風で浮かせられるって魔法かなにか?
「コレじゃあ近づけないね」
「まずあの体の周りの竜巻を何とかしないといけませんね」
「そうだよね。今の状態でどこまで力が出せるか試してみるかー」
小夜の周りに青い炎が現れる。こぶし大の大きさから徐々に膨れていく。
「じゃあ簡単に死なないでよね」
無邪気な顔の小夜から、妖艶な女性の笑みへと変わる。
周りに浮かんだ青い炎をドラゴンに向けて放つ。しかし、ドラゴンの周りに鎧と化している竜巻が炎を舞い上げて上昇してしまう。
「いいね。じゃあもっと増やしてくからね」
ドラゴンだってこの炎に耐えきれるとは思わない。
金属だってあっという間に溶けちゃうからね。
巻き上げちゃうなら、常にそこに炎があればどうなるかだよ。
小夜は時間差を付けて炎を投下する。すると常にそこに青い炎がある状態になった。
持久力戦になっちゃうか。私の魔力とドラゴンの我慢比べだね
「小夜、周りの石が溶け出しています」
竜巻に巻き込まれている石が溶け出して、発光を始める。ドラゴンも熱がきついのか巻き込んでいる石を私達の方に投げつける。溶けているので避けきる事が出来ない。
「小夜。コレはこちらもマズいですね」
「もう。私がオフェンスなんだからさ、アイラちゃんが何とかしてよー」
「了解しました」
カウンターリフレクト、アクティブモード。
アイラのスーツからデジタル音が聞こえる。私の前に反射板が展開。これでオッケーなのかな?
最初に飛んできた大きさの石がこちらに飛んできた。アイラは軌道修正を計算し、反射板を受け流すように配列する。だが、あまりの質量に反射板は弾き飛ばされた。
「小夜、無理です。大きな石は軌道を反らす事も出来ないので自分で回避して下さい」
青い炎をコントロールする小夜を抱えて石を回避する。
「ちょっと、ちょっとアイラちゃん。それは無責任って思わない?」
ドラゴンの表面も熱を帯び、体が発光を始める。ドラゴンも相当苦しそうだ。
「無責任ではありません。分かりました、何とかします。ですが、もうドラゴンも限界のようですね」
首を持ち上げると咆哮を上げる。翼を広げ、自分の周りに発生させた竜巻を更に巻き上げ、弾き飛ばす。
「グゥオオオオオオオオオオオオオオ」
咆哮だけで顔が振動でビリビリする。心が折れたらそれだけで失神してしまいそうだ。
“ カウンターリフレクト、オートモード ”
弾き飛ばした石が液状になっているので、広範囲に溶岩とマグマが降り注ぐ。量子コンピュータが瞬時に防御を計算してこちらへのダメージを全て防ぐ。
「やっぱソレ凄いよね~」
小夜は感心しながらレーザーブレードを展開し、ドラゴンに突撃する。
ドラゴンも近づけさせないように巨大な尻尾を振りまわす。
「危なっ!」
体の割りにかなりのスピードだ。尻尾を避けるだけの高さに飛び上がり、通り過ぎた後ドラゴンを切り付ける。レーザーブレードは凄い切れ味なのだが、予想以上に硬く、全く深手にならない。
ドラゴンは尻尾の攻撃のあと慣性の法則で回り、そのまま小夜に噛みつこうとする。
しかし顔を動かそうといたその瞬間、顔の目の前に現れた光の筋がドラゴンの体を焼く。
「グゥギャオオオオオオオオオ」
小夜はバックステップでドラゴンから離れる。横を見るとアイラがレーザービームを放っていた。かなり高出力の威力のレーザーが発射されるが皮膚で止まってしまっている。
「ソレ持つこと出来るんだ。さすがアイラちゃん」
「当然です。もっと褒めてくれても構いませんよ」
「私もそれのちっちゃいやつが欲しいなー」
アイラに細いレーザーブレードを見せ、恨めしそうに言う
「コレは私のエネルギーを使っているので、小夜には使うことが出来ません」
「そうなの?ところでアイラちゃんって何の動力で動いてるのさ」
「はい、マイクロ核融合炉です」
「ゲッ、聞かなきゃ良かった」
まさかの核融合炉だよ。
アイラちゃんがやられたら、この辺り一帯メルトダウンしちゃうってことだよね?
ドラゴンは力を溜めるような仕草をする。長い首を持ち上げ、大きく息を吸い込んだ。
「小夜、ドラゴンの体温が異常に上がっています。高出力の攻撃がきます」
そして火炎放射器のような炎が噴き出される。炎の来ない方向に逃げるしかないのだが、長い首を使い回避する方向に炎を向けてくる。ドラゴンの後ろの方に逃げれば大丈夫かと思ったのだが、自分の体にもお構いなしで吹きかける。
「いやぁ~!!いつになったら火を吐き終わるのよぉ~」
小夜は泣きそうになりながらブレスを回避する。ドラゴンの後ろに逃げれば大丈夫だろうと思っていたら、自分の体に吹きかけることなど気にもしない。
自分の体から炎が出るんだ。私の炎が私には効かないのと一緒で、自分の吐き出すブレスの温度くらい平気だよね。
「任せて下さい」
ドラゴンが後ろにブレスを吹いている間、チャージしていたレーザーをアイラがぶっ放す。
柔らかい首を狙うが、外皮が厚くレーザーが当たってもすぐに貫通することは出来ない。
だが瞬時に危険を察知したドラゴンはブレスを止め、羽で首を守り、尻尾でアイラを攻撃する。
アンドロイドの体を持つアイラも人外なスピードで行動することが可能だが、レーザー兵器の重量を持ちながらでは、ドラゴンの攻撃を避けることが出来なかった。
アイラが吹っ飛ばされる。二十メートルは飛ばされ巨木にぶつかってようやく止まった。
「アイラちゃん!!」




