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ラグナロク  作者: ピロ
第4章 地下迷宮
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地下迷宮の街コピット 1

カゼが長く続いていましたが、本格的に体調崩しました。

ダルイwww

小夜はこの世界の神、ミレニアに粛清対象として認定されている。

ここまでたどり着く間も様々な刺客と戦い続けていた。

「あそこに見えるのがコピットです」

「ふぇ~。やっと着いたぁ」

ミレニアは、ミレニア教の信者達だけではなく、魔物や魔人までも刺客として送ってきた。立て続けに襲撃を受けている二人は、神の目が届かない地下迷宮を目指している。

「日が暮れる前に街に入りましょう」

「お腹空いたし、ベッドでぐっすり寝たいもんね」

眼科に見える街はその地下迷宮の玄関口となるコピットだ。


コピットは人口2000人ほどの小さな街で、十年ほど前までは金が採掘出来る鉱山の恩恵で賑わっていた。しかしドワーフの造った地下迷宮と繋がってしまってからは魔物が溢れ、やがて廃坑となってしまう。

街から人は去っていったが、鉱山夫達と代わるようにやってきたのが冒険者達だ。

彼らは魔物の素材を求め、この街に再び活気を蘇らせた。

鉱山夫達がいた時から変わらないのが、普通の街とは違い宿屋や酒場が多いことだ。

また冒険者は基本的に男が多いから娼館なども存在している。

だからこの街に活気が溢れているのは夜の時間帯だ。


「おいしー」


目の前にいる小夜はパクパクとこの世界の料理を美味しそうに食べています。

そんなはずはありません。何故ならスーパーヘルシックチューブは美味しい上に完璧な食べ物だからです。

それを理解出来ない小夜の残念な頭には辟易しますが、ほんの少しだけ可愛い所もあるので我慢我慢。


私は優しくて完璧なアンドロイド。

ですがたまに小夜のアホさ加減にうんざりして、仮想記憶領域に文句を並べてストレス発散しているのです。メモリがパンクして小型の核融合炉がメルトダウンしそうになることもありますが、それはご愛敬ってやつです。


「アイラちゃんも食べなよぉ」

「いえ、私はアンドロイドですから食事はしません」

「でもお店に来て何も食べないのは不思議に思われちゃうでしょ」

「・・・・・・。そうですね、ではパンだけ頂きます」

小夜は分かっていない。この体に食事を入れるということは、食べたものを排出して更に洗浄もしなければならないことを。

食べる時よりも何倍もの時間を洗浄しなければいけないので、面倒にも程があるのです。

「お肉が久しぶり過ぎる。幸せじゃぁ~」

こんな油ギトギトなお肉のどこが美味しいのか分かりません。

この世界の肉は筋っぽくて、ナイフで切り分けることが難しそうです。それなのに脂っぽいとか全く意味不明。ソースをたっぷり掛けて誤魔化していますが、よく食べられますね。

元々が獣だから平気なのか?それとも小夜の味覚がおかしい?

・・・・・・・多分両方ですね。考えるだけ面倒くさいのでそういうことにしてしまいます。


「よぉよぉ姉ちゃん達。俺と一緒に飲もうや」

ここは酒場兼食堂。既に出来上がっている冒険者らしき男が声を掛けて来た。

「ねぇ。地下迷宮のこと知ってるでしょ?教えてよ」

「あぁ。いくらでも教えてやるよ。ベッドの中でな」

いやらしい顔つきで男はガハハと笑い出す。

すると小夜からチッと舌打ちする音がした。

「もういいや。アンタに用は無いからあっち行って」

小夜はため息を付くと、手でシッ、シッと犬を追い払うようにジェスチャーする。

それを見た男は激高し、小夜に近づいて行く。

「あっ?あまり調子に乗るなよ?」

小夜の胸倉を掴んだ男の顔は先程のようないやらしい顔つきでは無くなっていた。

ガヤガヤとしていた酒場は一瞬にして静まり返る。

「へぇ~、こんなに弱そうなのに私に痛い目を見せるの?どうやって?」

「テメ・・・」

男が言葉を最後まで発する前に小夜のパンチが顎に入る。

殴られた男の顔が真上を向くと膝から崩れ、男は白目を剥いて倒れた。

「うわっ、汚っ!!」

殴った瞬間に小夜の顔に男の口から出た唾液が小夜の顔に掛かる。

その様子を見ていた酒場の客達はその光景に絶句していた。


この男はこの店の常連ではあるが、酒癖が悪く女性にすぐに絡む質の悪い客だ。

だが基本的に冒険者という荒くれ者は大体こんなもの。

強いが正義。それがまかり通るのがこの街のルールのようなものだった。

この男は冒険者としての実力はかなりのモノで、誰も止めることはしない。

絡まれた小夜を見て誰もが可哀相にくらいしか思っていなかった。

それが一発でのしてしまったから全員の目が点になっている所だ。

「うへぇ〜っ」

「何ですか?」

小夜が顔を突き出してくる。

「何ですか?じゃないよ。この男を殴った時に私の顔に唾が飛んできたんだよ。汚いから拭いて」

「ハァ・・・」

呼吸をしないアンドロイドにため息を付かせるのは小夜くらいのものです。

飛んできた唾を拭いてあげると、再び機嫌がよくなって食事を再開する。

「小夜。コレじゃあ情報を提供してくれる人がいなくなってしまったのではないですか?」

「そだね。まぁしょうがないよ。アハハハハ」

アハハハハではありません。

元はといえば地下迷宮の情報を仕入れる為に酒場に行くと言い出したのは小夜です。

双子の兄である蓮はコレの面倒をずっと見て来たのですか。

素晴らしい忍耐力と言わざるを得ません。


ですがスーパーアンドロイドの私ならこんな時でもちゃんと情報収集しているのです。

私は街に入る前にナノマシンを散布して、周りの会話から迷宮のキーワードを検索していました。前後5分の音声を記録し、リアルタイムでデータを転送させているのです。

どうです?これこそ完璧なスーパーアンドロイドの所業ってやつですよ。

小夜は私を褒めたたえるべきなのです。


冒険者達の会話から廃坑の話や、迷宮の話はどんどん集まってきています。ですが、どんな魔物と戦って倒したとか、魔石がいくらで売れたとか自慢話ばかり。

何も有益な情報が入ってきません。

所詮は金目的の冒険者というわけですか・・・


「ソースが口の周りに付いてベチャベチャですよ」

「あひははん、あひはほー」(アイラちゃん、ありがとー)

私がナフキンで口を拭いてあげると満面の笑顔でお礼を言ってきますが、その前に口を汚さない様に食べられないのでしょうか?

全く世話が焼けますね。


小夜の食事を眺めていると、店の店員が倒れた男を引きずりながら外に連れだしてくれる。


「そろそろ宿に戻ろうよ。お腹いっぱい食べたからもう眠いんだよね」

「情報は聞かないのですか?」

「まぁなるようになるでしょ」

「・・・・・・・・・」


私には小夜の面倒は手に余ります。

早くミレニアから世界の核を手に入れて戻るしかありませんね。



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