商会を立ち上げる 3
寒くなってくると温かい鍋が食べたくなります♪
鍋のスープが売ってるので今は便利ですよねー
商人ギルドから割と近いところで絡まれた。美女を引き連れて歩いているんだ。
目立つのは当たり前だが、女性を連れて歩いているだけで普通絡まないだろ・・・
いや、違うな。日本だって景気のいい時はもっと性に対して、もっとオープンだった。
処女でいるのが恥ずかしいから、早く経験をしたいなんて女の子はいっぱいいた。
初めて彼氏とエッチする時に失敗するのが嫌だから、その辺のおじさんに処女をあげちゃった。なんてこともよく聞いた話だ。
女性と付き合う、付き合わないで男が喧嘩することは割とあったし、とりあえず彼女が欲しくてカッコつけて、カワイイ子を見掛けたら声を掛けるなんてことも、どこでも見掛けられる日常だったよな。
全員とは言わないが、やりたい男も女も世に溢れていた。
・・・はっ?コレって俺の記憶??
何でそんなこと知ってる?
年号でいえば安生生まれの俺が、生まれる前の昔の記憶を持ってるだと?どういうことだ?
前世の記憶??なのかもしれない。
「もうすぐです」
絡まれたこともあって俺達は狭い路地は通らないようにした。
広めの通りを歩いたからか、視線を感じはするが、絡んでくる輩はいなかった。
「ここですね」
「なかなかいい感じだね」
オレンジ色の瓦屋根にアイボリーのぬりかべ。
地中海などにみられるような、南欧風の建物があった。割と大きい通路に面していて、商会としての機能も良さそうだ。
小上がりの階段があって、エントランスの先に入り口が存在する。玄関には両開きの大きな扉が付いていて、入ると吹き抜けの広めの空間があり、二階から入る日差しがかなり部屋を明るくしていた。
この世界にはガラスがほとんど存在していない。ガラスの加工自体が難しいのでとても高価だ。一部の貴族が辛うじて建物に使用しているが、ほとんどの住居には観音開きの木製の窓が付いている。そのせいで屋内は暗い家が多い。しかしこの建物は窓が一階、二階と多く設置されていて、建物の位置的に日が出ている間は窓さえ開けていれば、ずっと光が入る構造をしている。
「なかなかいい物件だね」
「はい。一番いい物件から見せようと思いまして」
商会としての機能も充分に果たせそうだ。居住空間の方は建物とは反対側の日の当たらない方にあった。といっても充分な明るさは確保している。本を読むことは出来無さそうだけど、それでもこの世界では明るい方じゃないかと思う。部屋数は10部屋もあって、キッチンも食堂もちゃんとある。
「凄く素敵な建物」
「うん。こんな家に住めたら幸せだよね」
俺もこんなオシャレな家に住んでみたいと思う。石造りの家に憧れはするが、日本に住んでいると地震のことがあるから、住むにはちょっと抵抗がある。
「だけどここは風呂が設置出来無さそうだね」
「そうですね。割と繁華街なので、余剰スペースはありません」
「でも悪い物件ではないよね。じゃあ次を見せてもらえるかな」
「ええ。では次に参りましょう」
次の物件は一階部分が石造りで、二階部分が木造だ。五差路の角地に面した好立地の物件になる。ただ俺の場合、高額商品を扱う予定だ。
金持ちは必ず商品を見に来る。しかしこの場所では馬車を止める場所が無い。一度決まった物は使用人に買いに行かせるが、そこに至らなければ買うという選択肢が生まれてこない。
古い木造の内装が俺としては凄く好きなのだけど、残念すぎる。
「なかなかいい物件なんですけどね、残念です・・・」
「すまないアリューシャ。悪いけど、他も見せてもらえるかな」
「大丈夫です。レンさんにはココだって物を紹介したいので、いくらでも付き合いますよ」
「頼もしいね」
結局俺達は5つの物件を内覧させてもらった。それぞれいい所があってどれも捨てがたいが、決め手にはならなかった。
いい物件を持ってきてくれたからな。これ以上はあまりお勧めの感じでは無くなっていくのだろう。
「あともう一つ候補はあったんですけど、最近その物件の近くで魔女狩りが行われて、住む人がいなくなってしまいました。貴族街の近くで悪くない場所ですけど、曰く付きの物件になります。あと人通りが少ないのが、商会という点では難点になりますね」
俺達は最後にそこだけ案内してもらうことにした。
確かに人通りがあまりない。普通に商売をする分には向いてないところだ。
「もうすぐです」
アリューシャがそういうと、俺は見覚えのある所にきた。
俺がここにやってきた施設の一角だ。
おいおいマジかよ。建物の反対側に俺が来た施設がある。
建物は大きくて、かなり条件もいい。中を見せてもらうと、2階から施設が見える。
この建物の裏側からそっちに行ける通路を造って、裏側にある袋小路の通路をふさいでしまえば、完全に施設を内密に出来るな。
小夜が戻ってきた時の事を考えて、この建物にくるように日本語でメッセージを書けば分かるはずだ。
「この物件はいくらになる?」
「へっ!?レンさんここですか?」
「ああ。割と気にいった」
「ここは金貨3000枚になりますね。この建物の大きさを考えればお得といえばお得ですけど、商売をするとなると大変かもしれません」
「構わない。俺は高めの商材を扱うから。貴族相手なら一度決まれば使用人が買いに来るだろうからね、人通りが少ないことは問題にならないよ」
安い買い物じゃないけど、俺には金を生み出す錬金術がある。
この世界の物と、日本の商品のクオリティの差を考えれば、売れない理由が存在しない。
売れないとしたら、その物があるということを知らないことだ。
「その代わりといっては何だけど、ギルドにくる貴族の使用人がいるだろ?」
「はい。ウチで扱っている物を引き取りにきますね」
「その貴族の使用人に俺が扱う物のサンプルを渡すから、配ってもらって宣伝してもらいたいんだ」
「サンプルとは何ですか?」
アリューシャはサンプルという言葉を知らなかった。
この世界にお試しという商法は無いのかもしれない。
「売り出そうとしている物を使って貰って、買いたければウチで扱っているって宣伝してもらいたいんだ。勿論ギルドで扱っている物とは別の物しか扱わないから競合することもない。礼はするからさ、頼めないだろうか?」
「分かりました。ギルド長からはレンさんには最大に協力してくれと言われてます。私もレンさんには大変お世話になっているので、是非とも協力させて下さい」
「そう。なら商談成立だね。手続きはギルドでするのかな?」
「はい。それでは皆さんギルドに戻りましょうか」
残り物には福があるってね。
最後にいい流れが来た。あの施設を隠蔽出来るし、誰かに見られる心配が無くなれば、堂々とあそこに行って、風呂やトイレも使えるってことだ。
俺は現代っ子だからな、肥溜めトイレの恐怖からおさらば出来るだけでも幸せだ。
肥溜めって見たことありますか?夏に見ると恐怖デス。




