商会を立ち上げる 2
カゼが全然良くならないです・・・
ティッシュが1日1箱消えていくぜ
「ようこそレンさん。我々がレンさんの期待に添えるよう、物件をいくつか用意致しました」
ギルド長のベルクが俺達を迎えてくれる。俺の顔を見た瞬間からご機嫌だ。大金を貰ったことで、今なら何をおいても優先して俺の要望を聞いてくれそうな感じがする。未だにギルドのペントハウスを無料で利用させてくれているからな。投資の力は偉大だ。
「ギルド長、おはようございます」
「アリューシャから事情は聞いたよ。ルシェリもエスターも大変だったね」
「はい。でもレンさんに引き受けて貰えて、本当に感謝しかありません」
ベルクの言葉に今までの事を思い出して涙が流れた。
大変だったなと慰めるように二人の頭を撫でる。
ベルクと雑談をしていると、奥からアリューシャが書類を持ってやってきた。
「おはようございます。今日は5つの物件を内覧して頂きますね。いい物件をご用意していますよ」
アリューシャは既に俺専属のような扱いなのかもしれない。
「毎日のように色々してもらって助かるよ。今日も宜しくね」
「いえ。これも仕事ですので気にしないで下さい。それにレンさんにはお世話になっているので、いつでも私を呼んで下さいね」
「分かった。そうさせてもらうよ」
俺達はアリューシャに連れられて商人ギルドを後にした。
美女達を連れて歩いているせいか、周りから嫉妬の混じった視線を感じる。
こういうのはあっちの世界もこっちも変わらないな。
中学生までは小夜と常にいたからか、女子が寄ってくることは無かったが、高校に入ってからは常に女子に囲まれるようになった。
その時俺は割とモテる事に気付いたのだが、休み時間になる度に女生徒に囲まれるからか、残念なことに男の友達が一人もいない。
女生徒が群がってくると、アピールがかなり激しい。
腕を組んで胸を押し付けてきたりするのは普通で、抱き着いてくることも結構あった。
誰もいない所でいきなりキスされたことも一度や二度じゃない。
俺も男だから当然のように女性が好きだ。
何度も誘いにのったこともあるし、知らずに彼氏持ちの女の子の誘いに乗って、男の襲撃を受けることも何度もあった。
男達からは常に厄介者として疎まれて絡まれていくうちに、俺は喧嘩に明け暮れるようになっていた。
地元以外にも名が知れ渡るようになってからは、知らない奴にまで喧嘩を挑まれる始末。
気付けば大阪でも割と有名になっていたな。
全く迷惑な話だが、コッチの世界でも同じような状況になっていた。
「兄ちゃん。女を独り占めは良くねぇな。俺にも一人くらい回してくれよ」
声を掛けて来た男はいやらしい目付きで、女性達を見て鼻の下を伸ばしている。
後ろから仲間と見られる男が二人、俺の方に近寄ってこようとしていた。
「ハァ・・・」
女性達は俺の後ろに隠れてしまう。
「コレが答えだ。残念だけどアンタにやる女性はここには一人もいない」
「うるせぇ!!俺達がこいつ等を可愛がってやるよ」
そういうと男は殴り掛かってきた。大振りのパンチを避けて、殴りつけると男は吹っ飛んだ。
後ろにあった樽が大きな音を立てて壊れる。
「この野郎っ!!」
後ろから来た男が手にした棒を振り上げて殴りかかろうとする。俺は殴り掛かってくる前に蹴りを入れた。
やっぱりこの男も吹っ飛んで気を失ってしまう。
この体スゲェな。
人がどう鍛えても出ないような力がある。熊が殴ったらこんな感じなのかもしれない。
あんな力で殴ったら俺の手の骨だって砕けそうな気がするけど、何ともないな。
いったいどうなってるんだ?
小夜の髪の色、瞳の色が違っていたように、俺の体も相当に遺伝子操作されているんだろうな。
「お、俺はこいつ等とは関係ねぇからな、ははは」
そういって残りの男は逃げ出した。まぁどうでもいいけどな。
「あんちゃんっ!!」
ユキが俺に飛びついて顔をベロベロと舐めだす。
「あんちゃん強い!!カッコイイ!!」
「ユキ。くすぐったいからやめてくれ」
こうなると俺の顔はヨダレだらけだ。獣人だから強い男に興奮するのか、それとも発情しているのか分からない。分かっているのは、コレが収まることはしばらくないことだ。
「いいなぁ。私もペロペロしたい」
「よしなさい。エスター」
ルシェリがエスターを小声で叱咤しているのを俺は聞いていた。
だが聞こえなかったことにする。
実は昨日の二人のことも気付いていた。コソコソ夜這いをかけようとしていたことも、ユキに阻まれて、二人で寂しく慰めあっていたことも・・・
少し残念な二人だと思ってしまったのだが、考えさせられることもあった。
ミレーヌもユキに関してもそうだけど、この世界の人は命の危険が身近にあるからか、生存本能が強い。子孫を残すのが生命の役目とばかりに、気持ちいいという欲望にはかなり忠実なような気がする。
小夜を見つけるまではそういう気分になれないのは本当だけど、ユキが見ていない所でガス抜きは必要かもしれない。
それとユキも恐らくは俺の子を産みたいって思ってる。胸が膨らんできているし、もう子供を産めるのかもしれない。だがさすがに俺の倫理的にはアウトだ。
ユキを見ると俺が見ていることに気付いて、無邪気な笑顔でニヘラと笑い返してくる。
「ワタシモ、ゴシュジンサマ、ト、イッショにアルキタイ、デス」
ハーフエルフのミレーヌもくっ付き虫のようにピトっと張り付いてくる。
ミレーヌは成人しているが、ハーフエルフなので、パッと見は子供にしか見えない。
ミレーヌを見ると、ミレーヌも無邪気な笑顔でニヘラと笑い返してきた。
「じゃあ、行くか」
「イキマスデス」
傍から見たら、大好きなお兄ちゃんを奪い合う妹達だろう。
すると後ろの方からあまり良くない気が充満していた。
今振り返ってはいけないと男の本能が警鐘を鳴らしている。わざわざ地獄の門を開く必要はないのだ。
「アリューシャすまないね」
「いえ。レンさんがおモテになるのは知ってますから」
「ハハハ。そのうち何かで返させてもらうよ」
最初からドタバタだな。
俺がこっちの世界で家を買うなんて思いもしなかった。
ただ俺には金を産むための錬金術がある。商会の立ち上げも問題ない。
問題なのは時間だ。時間だけはどうにもならない。でも焦ったところでどうにかなるわけじゃない。
本当にもどかしいな・・・




