商会を立ち上げる 1
毛布にくるまってゴロゴロするのは至福ですね。
そのせいで気付くと寝ちゃっています・・・
40話までは毎日更新を続けたいと思ってますが、それ以降は更新ペースを落とす予定でいます
「ユキの言う通りだ。俺はやってもらいたい事があるから、三人を買ったんだ。ルシェリとエスターにはこの街で俺が立ち上げる商会の管理運営をしてもらいたい。ミレーヌは俺とユキ、まだいないけど追加する仲間と妹を探す為に旅をしてもらうことになる。魔物や敵対する連中と戦闘になるから精霊魔法と弓が使えるミレーヌには援護を頼みたい。君らに求めるのはコレだけだ。」
少しの間静寂が広がる。
「分かりました。ご主人様。諦めたわけじゃないですけど、その決意はいつでも破ってくれて構いませんからね」
「私も助けてもらった身ですから、ご主人様がそういうのなら従います」
ミレーヌも分かったと頷く。
「皆が風呂に入ってからと思ってたけど、今色々話をすることにするよ」
「「「はい」」」
「まずルシェリとエスターに聞きたいことがある。魔女狩りで捕まって、移動していた時の話だ。その時に二人の女性が襲撃してきたって言ってたよな」
「はい」
「二人共女性なのは間違いないか?」
「ええ。私達の手枷と足枷を光る剣で切った時、早く逃げてと言った声が女性でした。間違いありません」
「それからマントを着て、フートを頭まで被って、ストールを巻いて顔を見えなくしていた。これも間違いないか?」
「はい。巻いていたストールが、見たこともない薄くて透けているキレイな素材でした。珍しかったので覚えています」
「光る剣ってどんな感じだったのか、何でもいいから気付いたことでいいから教えてくれ」
「一人が銀色の筒のような物を持っていて、魔女狩りの連中を襲う時に筒の先端から光る剣が現れました。もう一人は長い棒のような物を持っていて、その先端にダガーくらいの長さの光る剣が現れました」
「戦闘はどうだった?」
「はい。圧倒的でした。相手の剣ごと切り裂いて、騎士の甲冑ごと切っていました」
「動きも凄く早かったです。私達を移送していた人数が30人くらいだったのですけど、普通に人の高さくらいまでジャンプしてました」
俺も遺伝子がいじくられているようだから、小夜も当然同じような状態だろう。
明日、施設に行って映像を確認してもらう事にするか。
「その二人はどこに向かっていった?」
「私達が助けられたのはアルジウス王国です。山に囲まれた所を抜けて、ミストルティア帝国に向かうようでした」
「その先にミレニア教の施設みたいなのはあるのか?」
「はい。帝国の最北部にミレニア教の総本山があります」
もしかしたら小夜が向かっているのはミレニア教の総本山なのか?逃げるなら遠くに離れて行く方がリスクが少なくなるはずだ。
「ありがとう。有益な情報だったよ」
「そうですか。お役に立ててよかったです」
二人には不幸なことだったけど、小夜に関して有力な情報を手にすることが出来た。
「それからミレーヌ」
「ハイ」
「教えて欲しいことがある。精霊魔法ってのは何が出来るんだ?」
「セイレイをシエキシテ、マホウをツカイマス。ワタシハ、ミズとカゼのセイレイヲ、シエキスルコトガ、デキマス」
「分かった。弓や防具とか明日買いに行こう」
「ハイ。アリガトウゴザイマス」
「それから答えたくなかったら言わなくていいんだけど、ミレーヌはどうして奴隷になったんだ?ミレーヌのように精霊魔法が使えるなら、奴隷にならなくても金を稼ぐ方法はあっただろ?」
ミレーヌは少し考えて、ポツリポツリと喋り出した。
「ワタシは、トウゾクのスムアジトデ、ウマレマシタ。ハハはエルフデス。ハハはドコカラカ、ユウカイサレテキタソウデス。ワタシは、トウゾクとエルフのアイダニデキタコドモです。
ワタシガ8サイのトキ、ドレイトシテウラレマシタ」
「ミレーヌ。辛いだろうから言わなくてもいいよ」
「イインデス。ワタシはキゾクのヤシキニ、イクコトニナリマシタ。キゾクのオトコはチイサナ、オンナノコを、イッパイ、ドレイトシテ、アツメテイマシタ。オトコハ、アキルト、フタタビドレイトシテ、ウルノデス。ワタシモスコシマエニ、ウラレマシタ」
なかなか衝撃的なことを聞いてしまった。貴族という特権階級がある世界だと、こういう世界があるんだな・・・
「すまないミレーヌ。嫌な事を思い出させちゃったね」
「イインデス。ワタシハ、ヤサシイゴシュジンサマに、カッテモラウコトがデキマシタ」
「そうだな。これからは嫌な思いはさせないから」
「ハイ」
「じゃあ三人共風呂に入ってきてよ」
ここに来る前に水で洗ってきてもらったけど、まだキレイとは言えないよな。
「これは何ですか?」
俺の持ち込んだ石鹸やボディタオル、シャンプーとトリートメントを渡して、使い方を教える。すると早速言ってきた。
「一緒に入って教えて下さい」
「オイラが教えるからね、あんちゃんはゆっくりしててよ」
「そうか。頼むよユキ」
「えーっ。ご主人様と入りたいです」
ユキが三人を大浴場に連れて行ってくれたから、久しぶりに静かな空間が広がった。
静かな時を過ごしたかったが、今のうちに色々整理しないとな。
今までの情報を纏めると、まず小夜がきてから施設の上にある擬装用の家が、ミレニア教の魔女狩り部隊の襲撃を受けてたな。その時小夜は地下にある施設にいて、魔女狩りの部隊は施設を見つけることが出来ないまま去って行った。
襲撃の後は小夜ともう一人の女性が旅の身支度をして、ミレニア教がいなくなった後施設を出て行った。その時一緒にいた女性は誰か分からない。
ギルドの情報によると小夜という名前の女性が捕まったって情報は無かった。
その後はルシェリとエスターが助けられたところに行く。
助けた女性二人は光る剣を持っていたと言っていた。恐らくレーザー兵器なんだろう。俺の知ってる世界より更に未来の技術だ。恐らく間違いない。明日は施設に行って、二人に小夜の映像を見せてみよう。
あとこの世界に来て気になっていた事がある。アルバート辺境伯のことだ。アルバート辺境伯はかなりの人格者だ。それなのに何故ミレニア教の魔女狩りを放置しているのか?
彼がミレニア教の信者には見えない。
敵対すると良くないから、見逃している可能性が高いのかもしれないな。
「あんちゃん。出たよー」
もうそんな時間か。結構な時間が経っていたようだ。
三人共さっぱりした感がある。
「ご主人様。あの石鹸はどこで売っているんですか?あんなにいい匂いする石鹸なんて、今まで見た事ありません」
この世界にも石鹸はある。高価だけど油臭く、使っていても臭いから決して気分がいいものではない。
「シャンプーとトリートメントも凄く良かったです。ゴワゴワだった髪の毛がサラっとしてるんですよ。見て下さい私の髪。凄いと思いません?」
エスターが髪を俺に見せてくる。この世界にドライヤーが無いから、サラサラかまでは分からないけど、それでも本人が分かるくらいには、いいってことだよな。奴隷として売られていた時の髪は汚かったし、匂いも相当臭かった。
ルシェリもミレーヌもかなりキレイになってるな。
「みんな驚いた?全部俺の国の物だよ。売れると思うかい?」
「はいっ!!絶対売れます」
「それなら商品として扱ってみようかな」
「やった。私達も買う事は出来ますか?」
「ちょっとルシェリ。私達は奴隷なのよ。お給金なんて無いんだから諦めなさい」
「そっか・・・そうだよね。私達って奴隷なんだもんね」
エスターがしょんぼりしているが、エスターを見つめるルシェリも少し寂しそうだ。
「あのさ、ちゃんと皆にも給金は出すから安心して。それと皆にはモニターを兼ねて毎日使ってもらいたいんだよね」
「本当ですか?」
「やった。毎日使っていいんですね。それにお風呂に入れるってことですか?」
「ああ。俺は毎日風呂に入りたい人だからね」
ミレーヌまでパァーっと顔が明るくなる。3人共嬉しそうだ。
それだけ効果を感じたってことだろう。
基本的にこの世界の人達は衛生観念が低い。風呂は大貴族や大富豪などしか持っていないし、まして毎日入る人はほとんどいない。手間も掛かれば、コストも馬鹿にならないからだ。
「商会を立ち上げる為に、それなりの施設を用意しないとね。だから明日は商人ギルドに行って、建物を紹介してもらうんだよ。あと、皆と行く所もあるからね」
喉がやられました。完全にカゼデス・・・
皆さんは気を付けて・・・




