ハーレム??
「すまないね」
「いいんですよ。私はその方が嬉しいです」
「私も、ご主人様にご奉仕しないといけないので問題ありません」
俺はみんなに謝っているのだが、ルシェリとエスターは寧ろ嬉しそうだ。距離を詰めて来てピトってくっ付いてくる。
「ちょっとルシェリ、エスター。レンさんが困ってるでしょ?」
「あらっ。ご主人様に尽くすのは奴隷の役目ですよ」
「そうそう。私達は奴隷なのでご奉仕しないといけませんから」
そういってアリューシャに向ける視線は勝ったという勝者の視線だった。
まさか、ギルドの宿の部屋が空いてないなんて・・・
ルシェリとエスターは絶対にレンさんのこと狙ってるわ。あの手この手でレンさんを誘惑するに違いないわね。
それにしてもレンさんって、相当女に慣れているわね。
二人がくっ付いても顔色一つ変えないんだから・・・
レンさんって気遣いが出来るし、優しくてカッコイイし、可愛いくて超私の好み。
それでいて超お金持ち。白馬の王子様はここにいたわ。
汗臭くて筋肉達磨の男共と違って、もの凄くいい匂いするのよね。一日中抱き着いていたいくらい。
あの子達も同じように思っているのは分かるわ。だって目がハンターの目をしているもの。
悔しい。何で私はレンさんの奴隷じゃないのよ。だってもの凄い好待遇じゃない。
何なの?あの服装は・・・
どう見ても貴族の平服を全員に何着も買ってあげてるし、どれだけ金持ってるの?
お金がお金を呼ぶって言うけど、レンさんはそれを体現しているみたいだわ。
これからもずっとあんな感じでいくのよね。
どさくさに紛れてハーフエルフのミレーヌもレンさんのシャツの裾を握ってるわ。
分かるわよ。私だっていっぱい可愛がってもらいたいのに。
「アリューシャ。今日は色々ありがとう。本当に助かったよ」
「いいえ。このくらいどうって事ないです。また用事があったら声を掛けて下さいね」
「送って行こうか?」
「まだそこまで時間は遅くないので大丈夫です。本日は本当にありがとうございました」
「分かった。気をつけて帰ってね」
ああ。私はレンさんに気に入ってもらえるように、頑張ったのに・・・
あの時二人を見て焦ってしまったのが運の尽きね。私が冷静でいられたら、私があの二人を買い戻すことが出来た筈だもの。
今日はいいことばかりだった筈なのに、何で私は負け犬みたいにトボトボ帰ってるのよ。
レンさんにこれからも気に入ってもらえるよう頑張らないとね。
「いや、そんなことしなくても大丈夫だから」
「でも、ご主人様に尽くすのは奴隷の役目です。遠慮しないで下さい」
宿に戻った俺達はまず風呂に入ろうと思ったのだが、ルシェリとエスターが俺の体を洗うと言い出した。やりたい盛りの年齢の俺が、嫌な訳ではない。女性二人にもみくちゃにされて、快楽に落ちて行きたいって思わない訳でもない。
ただ小夜がどうなっているのかも分からないのに、そんな事する気分にはなれなかった。
それに俺の心の中には、どうしてもモヤっとした何かがあってブレーキが掛かってしまう。
今までだって何度も告白を受けたりもしてきた。
好きな人がいるわけでもないから、とりあえず付き合ってみてもいいのかもしれない。
そう思うこともあった。やる事はやってきたけど、でもどうしても付き合う気分にはなれなかったんだよな。
最初は小夜の面倒を見ないといけないから無理なのかも?と思っていた。
けれど、今の小夜は歩くことも出来る。
だからどこかに外れたピースがあるような気がしてならない。
幼い頃から何かを思い出そうとすると、酷い頭痛に襲われてきた。
何でここまで思い出せないのか不思議でしょうがない。そこに答えがあるような気がしてならないんだよな。
「あんちゃんはオイラが洗うんだ。だから二人は別で入ってくれよな」
やきもちを焼いたユキが二人に割って、俺に抱き着いてくる。
こういう時ユキは最高のガードだな。
「そういうことだ。俺達が入った後に入ってくれるかな?」
「・・・はい。分かりました」
二人共渋々返事をする。娼館かどこかに売られなかったから、嬉しかったのかもしれないけど、そういうサービスは求めていない。
「あんちゃん、気持ちいいか?」
「ああ、いい感じだ」
「エヘヘ。あんちゃんの役に立ててオイラ嬉しいぞ」
最初は背中だけだったのが、体を全て洗ってくれるって言い出した。
最初はいいって断ったんだけど、ユキのガッカリした顔を見たら、ついついいいよと言ってしまった。
正面に来てゴシゴシ洗ってくれのだが、ユキもここ数日にも関わらず成長が著しい。
毎日ちゃんと食事をしているからか、どんどんふっくらしてきている。
アバラが浮いているのがかなり薄くなってきて、同時に胸も膨らみ始めた。
元々少し膨らみがあったのだが、まぁ子供の範疇と思っていた。
だけどアバラが浮いた栄養の足りてない状態で胸が膨らんでいたってことは、肉付きが良くなれば胸も膨らんでくるってことだ。
今は皮膚が伸びていない状態だから、膨らんできてもパンパンに張っている状態だけど、皮膚が伸びてくればどんどん胸は大きくなっていく。
「ユキ、そこは俺が洗うからいいぞ」
「なんでち〇ち〇だけ駄目なんだ?痛いのか?」
「そうそう。触ると痛い所があるから、自分で洗うのがいいんだよ」
女性の成長は男と比べて早い。ましてやユキは獣人である。
人間と比べたら成長がもっと早い可能性がある。
どれだけキレイごとを言っても、女性に裸で迫られて何も思わないなんてことは無い。
純愛のみで股間が立つなんてことはない。少なくとも俺は生物だ。子孫を残す為の性器が付いていて、女性の裸を見れば抱きたい衝動に駆られる。
「分かった。あんちゃん、今度はオイラのこと洗ってよ」
俺の前に座って、ドカッと体を預けてくる。
「痛かったら言えよ」
「はぁーい」
もたれ掛かってくるから、前から洗うことにする。首から洗って鎖骨を洗い、徐々に下に向かって洗って行く。珍しくユキが俺にもたれ掛かって、大人しく体を洗われている。
昨日まではくすぐったいって、大笑いして暴れていたのに。
「どうだ?気持ちいいか?」
ユキの返事がない。ここ数日慣れないことばかりしてたからな、もしかして調子が悪いのかもしれない。
「背中洗うぞ」
「・・・うん」
まぁくすぐったくて暴れられるよりはいいか。
風呂を出るとルシェリとエスターに冷ややかな目で見られる。
「ご主人様。お風呂ではお楽しみでしたか?」
「・・・普通に風呂に入っただけだぞ」
二人の目が疑わしく俺をみている。
「へぇ~。今度は私にもご主人様を洗わせて下さいね」
「勿論、私もですからね」
「ワタシモ、ゴシュジンサマ、アライマス」
ああ。ミレーヌまで参戦してきたよ。
「俺は皆に夜伽とか求めてないんだ。何でそうしたいんだよ」
「ご主人様が素敵だからです。いい男に抱かれたいって思うのは当たり前のことですよ」
「右に同じ。私もご主人様にいっぱい抱かれたいです」
「・・・ワタシモ、ゴシュジンサマ、ダイスキデス」
おいおいマジかよ・・・
「あー。みんなハッキリ言うね。嫌いじゃないよ、そういうの」
「じゃあいいじゃないですか。それとも女に嫌なことでもあったんですか?」
「そんなことも無い」
「じゃあ何でですか?」
「俺は妹が苦しい思いをしているかもしれない時に、自分だけ快楽に身を委ねる気分にはなれない。これが答えだよ」
「やっぱりご主人様は優しいんですね。そんな感じだから私は癒してあげたいって思うんです。女を抱いて気持ち良くなって、少しでも癒してあげたいって思うのはおかしいですか?」
「まぁ、おかしくはないよな・・・」
俺は押しに弱い。小夜のわがままを一度も聞かなかったことはない。
きっと小夜だけじゃなく、女性に押されると嫌と言えない性格なのかもしれないな。
「あんちゃんを困らせないでよ。今日はみんなに聞きたいこととか、やって欲しいこととかあるんだからね」
「ユキありがとな」
「どういたしましてだよ」
ユキの頭を撫でるといつものユキに戻っていた。




