奴隷を求めて 2
「あとは戦うことが出来る人材なんですよね?」
「ああ。またアリューシャに交渉とか任せていいかな?」
「ええ、もちろんです。レンさんに変な輩を付けないように頑張ります」
コレは運だから頑張ることじゃないけど、いい人材が見つかるといいな。
それから何件も当たったが、あまりいい人材と呼べる人はいなかった。
「うーん。やっぱり売れ残りなんですねぇ」
ルシェリも見てそう思ったようだ。各地を回って、それでも売れ残るのだ。何かしら問題があるからだろう。
「ご主人差。戦える条件は剣を使うことだけですか?」
「いいや。弓を使えたり、魔法を使えたり、とにかく戦うことが出来るなら何でも構わないよ」
するとエスターがさっき見た店に戻って行く。
「ご主人様この子はどうですか?」
戦うのが条件だったから、女性を省いていたが、エスターが俺に勧めるのはハーフエルフの少女だった。
それ以外、エスターは特に理由を言わない。
自分達が高額の金額で買わされたからか、エスターは値段をふつかけられないようにしているのかもしれないな。勧めるには何かあるのかもしれない。
「店主。彼女はいくらだい?」
「ああ。ハーフエルフだからな。まぁ金貨50ってところだ」
マジかよ。
「じゃあ、その値段で買わせてもらうよ」
金を払うと店主はヤル気の無さそうに奴隷の譲渡をする。それが終わると、さっさと椅子に座ってパイプを吹かしだす。まぁ儲けなんてそこまで無いんだろうから、ヤル気も起きないのだろう。
「まず名前を教えてもらえるかい?」
手の甲に浮かび上がる奴隷紋をじーっと見つめながら考え込んでいた。
「ワタシは、ミレーヌデス。ジンゾクのコトバ、ジョウズ、シャベレナイ」
「宜しくミレーヌ。俺はレンだ。レン・タチバナだ。こっちの獣人はユキ。それから商人ギルドの受付をしているアリューシャ。それから今日俺が奴隷として迎えたルシェリとエスターだ」
その後も見て回ったが、目ぼしい人材を確保することは出来なかった。
さてと、本当ならこのまま宿に戻って歓迎会でも開きたいところだけど、必要な物を揃えないと。
「まずは三人の服を買わないとだな」
この前ユキの服を買った店に行ってみるか。
「おやっ。この前のお兄ちゃんじゃないか。今日は何だい?」
「この3人の服を用意してもらいたいんだ。今着る服と、着替え用に何着か造ってもらいたいんだよ」
「分かったよ。その前にだ。アンタ達、汚いし臭いから体を洗ってきな」
彼女の娘達が三人を店の裏に連れていく。井戸の冷たい水で行水をしているようだが、共同風呂のおっちゃんの所に行けば良かったな。
「アンタは女を買い漁ってるのかい?両手じゃ収まらないくらい女が欲しいみたいだね」
「違うけど、そう思われてもしょうがないな・・・」
「それで?今回はどんな服を用意すればいいんだい?」
「ハーフエルフは動きやすい感じで、あとの二人は事務仕事に家事とかやってもらう予定なんだ。本人と確認しながら、それに合わせて4~5着造ってもらえるかな」
「下着もかい?」
「あぁ。そっちは更に多くてもいい」
「分かったよ。それにしてもアンタはもの凄くいい服を着てるじゃないか。どうやったらそんな細かい生地が出来るんだろ?縫製も人の手じゃ出来無さそうなくらい丁寧だよ」
女将は俺の服をジロジロと見ている。
考えられないほど細かい科学繊維を機械で造ってるとは言えない。それに縫製もミシンでやってるなんて説明出来ないよな
「生地も俺の地元の物だから、ここじゃ手に入らないよ。興味あるかい?」
「ああ。商会を立ち上げるなら是非仕入れて欲しいね」
「分かった。考えておくよ」
女将さんと話していると、3人が体を洗い終えて戻ってくる。
娘二人も待機していて、テキパキと採寸をしていくが、さすがに女将の方が早い。既に型を起こしている。
退屈そうにしているユキに、女将がクッキーを持ってきてくれた。ユキは嬉しそうにパクパクと食べている。アリューシャは店内の出来ている服を二人と見ているので、俺はハーフエルフのミレーヌを連れて店内に置いてある服を見に行く。
「ミレーヌが着たい服を選んでくれ」
「ハイ。ゴシュジンサマ、アリガト、ゴザイマス」
この店にくる前に聞いたのだが、ミレーヌは弓が使えるのだそうだ。それから精霊魔法を使えるとのこと。ルシェリは少し精霊が見えるらしく、精霊使いの才能はあるらしいが、使う事は出来ないらしい。
精霊使いの周りには精霊が常にいるのだそうだ。だから、ミレーヌが精霊使いとバレないよう、俺に勧めて来てくれたのだ。
ミレーヌは高そうな服を見て、少し遠慮がちだ。
「ミレーヌ。お金のことは気にしないでいいからな。自分が好きな服を選んでくれればいいから」
アリューシャが俺は金を持っているから遠慮はしなくてもいいと耳打ちする。
俺のエピソードまで語ってるぞ・・・
「ハイ。ワカリマシタ」
ミレーヌはどこか不安そうな顔をしていたが、ようやく嬉しそうな顔をしてくれた。
彼女はスリットの入ったチャイナ服のようなデザインの物を選んだ。なかなか刺激が強そうだと思っていたのだが、さすがにパンツは履くようだ。
だが、パンツを履かないでいれば、夜会などのパーティドレスとしても使えそうだな。
そう考えるとミレーヌはセンスがいい。
「ミレーヌは、いいセンスをしてるね。女性らしいし、カッコイイ」
「アリガト、ゴザイマス」
ミレーヌの耳の先が赤くなっている。照れている感じが初々しいな。
「レンさん。こちらも決まりましたよ」
アリューシャが二人を連れてきた。こちらは派手さは無いが、質素ながら使い勝手のいい服をチョイスしている。
「二人共いい感じだ。凄く似合ってるよ。それに見違えるほどキレイになった」
そういうと二人の顔がパァーっと明るくなる。
「私はレンさんという方が、女性の扱いが上手な方だということがよ~く分かりました」
アリューシャはジトーっとした目で俺を見ている。
「妹を元気付ける為に毎日ほめていたからさ。だから慣れてるのかもしれないね」
俺がそういうとアリューシャはハッとした顔になる。
「すみません。レンさんの事情を知らないで喋ってしまいました・・・」
「いいよ。女性からはそう思われてたし、男には嫉妬されてたからさ。でもね、女性が喜ぶ言葉を、言えないような男にはなりたくないんだよね」
言わない事は美徳じゃない。ただの怠慢だ。
「ご主人様、こんなに高そうな服を買ってもらって良かったのでしょうか?」
エスターがモジモジしながら俺に話しかけてくる。
彼女はドレープの効いたワンピースを選んでいた。高級店の使う生地だけあって、なめらかなドレープがエレガントだ。大人っぽい彼女に良く似合っていた。
「気にしなくていいよ。あまりにも見ずぼらしい恰好だと、足元見られるからね。その分ちゃんと働いてくれればいいから」
「はい。頑張ります」
今まで汚い恰好でいたからか、笑顔が絶えない。でも髪はまだボサボサだから、帰ったら洗わないとね。
ルシェリは着心地の良さそうなシャツにゆったりとしたパンツルックだ。
どちらも派手さは無いが、素材がいいから見る人が見れば分かるといった感じだ。
アリューシャも羨ましそうに見ている。
「女将さん。彼女にも服を仕立ててもらえるかい?」
俺はアリューシャに服を仕立ててもらうようお願いする。
「レンさん。い、いけません。私はただの付き添いですから」
「いいって。アリューシャには世話になったし、これからも世話になるだろうから気にしないでよ」
駄目です駄目ですと俺にアピールをするが女将が割って入る。
「アンタもそれ以上拒否するのは失礼になるよ。いいって言ってんだから、遠慮なく甘えるんだね」
「はい。分かりました。レンさん、本当にありがとうございます」
仕立てて貰っているとアリューシャは嬉しそうだ。
「いいね、凄く綺麗だ」
そういうとアリューシャの耳が真っ赤になっている。ユキ以外は俺より年上だけど、こっちの世界の人はスレて無いというか純粋だよな。
目標にしていた人材の確保が出来なかったけど、3人も優秀な人材を確保出来たのは喜ぶべきだよな。リーダー的な役割を果たしてくれる人材がいないが、奴隷市は割りとすぐに行われるみたいだから、それまでに他の事を進めればいいだろう。




