グレンデル辺境伯邸 1
なろうの欄で書いていたら、保存出来ないまま消えました・・・
やはりPCで書いてからの方がいいですね(ノД`)シクシク
「あんちゃん。あんちゃん。起きてってば」
眠い。何でこの世界はこんなに朝が早いんだ・・・
まだ日も昇らないウチにユキが俺を起こしてくる。肌寒いから毛布にくるまって至福の時間を過ごしたいところだ。でも馬乗りになったユキが、俺を一生懸命ユサユサと揺すって起こしてくれているのに、起きないってわけにはいかないよな。
起きてもボーッとしてる俺の髪の毛をユキはせっせと梳かしてくれる。
「もぉー。あんちゃんは今日、領主様の屋敷に行くんだろ?」
どうもこの体になって、朝起きる事が出来ない。魂が定着していないとかだろうか?
いや、定着してしまったら、この世界から戻る事が出来なくなるような気がする。
ユキが着替えをせっせと持って来てくれるので、眠い目を擦りながら着替えて行く。
ユキは着替え終わっているので、一体何時から起きているのだろうか?
世話焼き女房と化したユキに着替えを手伝ってもらい、俺とユキは一階にあるダイニングに向かう。
「レンさんおはようございます」
ギルドマスターのベルクと受付嬢のアリューシャが正装をして待っていた。
ほとんどの人達が食事を終えている。本当にこの世界の人達の朝に、俺は付いていける気がしない・・・
「ほらほら、あんちゃん。ちゃんと食べないと、領主様に会った時にシャキっとしないよ」
「分かった。ユキ、ありがとう」
世話を焼かれている俺を見てアリューシャが笑いを堪えていた。
温かいスープを口にすると渇いた喉に染みわたる。
「美味い」
さすが商人ギルドの宿だ。
一日3食で生活をしてた俺に、一日2食の生活は少々辛い。
しかもこの世界は一日が36時間だ。朝食べれるだけ食べて、日が沈む前に夕食を食べるのがこの世界の基本になる。その間の腹を持たせるには、かなりの量が必要となり、一食の量が半端なく多すぎるのだ。
ユキは平気で食べているので、俺の分もついでに食べてもらう。毎日ユキに俺が食えない分を食べてもらっているからか、急激にユキがふっくらしてきている。
「ベルクさん遅くなりました」
「いえいえ。アルバート様の屋敷に着いても、すぐに入ることが出来る訳でもありませんから」
貴族を待たせるのは失礼ということで、いつ呼ばれてもすぐに行けるように、前もって行くのだそうだ。
コレは俺達のいる時代と変わらないな。
用意してある馬車に乗り込むと、ユキが緊張のあまりカチコチになっている。
「ユキ。アリューシャと控室で待っていてくれるだけでいいから、緊張しなくても大丈夫だよ」
「本当?」
「ああ。ユキとアリューシャはこのケースを持って、屋敷の人に渡すだけでいいんだ」
本来なら俺が持つだけで済む話なんだけど、交渉する俺達が持つと体面に関わるのだそうだ。
コレだけでどの位の金額が変わるかは分からない。だが使用人に持たせるということが、必要なことらしい。特に今回の物は高額な物の為、一人で一つを持つのだそうだ。
この街の大通りは石畳で舗装されている。だがこの世界の馬車にはサスペンションなどの衝撃を抑える物は存在していない。だから舗装されていてもケツは痛い。
せめて軽トラックなどに付いている板バネが付いていればと思うが、歩かないだけでも権威の象徴なのだろう。
「レンさん。今回二つの物を用意してありますが、もう一つはどのような物を用意しているのですか?」
ベルクが尋ねてくる。
「先日アリューシャにアルバート様には奥方が二人いるので、もう一人の奥様にも何か用意したほうがいいと提案されました。ですのでコレはもう一人の奥方に用意した物です」
「それはいい考えです。アルバート様もその方が購入しやすいと思います」
そういうともう一つのケースを開く。
「おおおおおお。コ、コレも素晴らしい物ではないですか」
「はい。二つは対になっている物です」
工業用製品だから人工のエメラルドが入っているか、人工のサファイヤが入っているかの違いなだけなんだけどね。
「キレイ・・・」
アリューシャはその美しさに呆然としている。
「周りのキラキラする宝石は何という宝石なのでしょうか?」
この世界にガラスは存在しているが、貴族以外は所有していない。
それだけ高価なのだが、まだ不純物も多い。
だからコレをガラスと思う人は誰一人としていないだろう。
「スワロニコフと呼ばれる物です」
まぁスワロニコフ社が造ったからその名前ってことでいいだろう。
「初めて聞く宝石の名前ですね」
「そうですね。私がいた国にしかない物ですから」
「そ、そんなに貴重な物でしたか」
「はい。ベルク殿はこんな輝きを見せる宝石を見たことがありますか?」
「いえ、見た事などありません。レン殿はとんでもない物をお持ちなんですね」
「・・・まぁ国から持って来た物しか無いので、希少価値がどのくらいになるのかは分かりませんが、少しでも高く売れる事を願うだけですよ」
俺はそれとなく貴重なものだとベルクの頭の中に刷り込んでおく。
この世界ではクリスタルガラスを造ることは出来ないから、間違いなく貴重だ。
ケースを閉じるとベルクは息を飲んでいた。額には少し汗が浮かんでいる。彼の中では国宝と言われてもおかしくない物が二つも、この馬車に乗っているのだ。緊張もするのだろう。
「レンさん。もう少しでアルバート伯の屋敷に到着します」
アルバート伯の屋敷は街の大通りを一番奥に行くとある。街が大きいので門から伯爵邸までかなりの距離があった。
「デカいな」
屋敷というより、城といった方がいいほど大きい。騎士の宿舎も訓練施設も敷地内にあるので、かなりの敷地面積がある。
馬車が止まると会話が聞こえてくる。御者が門兵と会話しているからだ。
「馬車にはギルド長のベルク様とレン様が乗っています」
御者が紹介状を見せて馬車の扉を開ける。
「ギルド長のベルク殿とレン様で間違いないでしょうか?」
「はい。商人ギルドのベルクにございます。こちらが目的の物をお持ちになったレン様でございます」
「レンです。お見知りおきを」
「はっ。ではこのまま真っすぐに進んで下さい。そうすれば執事のジョルジオ様がお待ちしています」
門から玄関まで結構な距離があり、執事と見える人がエントランスで待っている。
「近づくほど、屋敷の大きさに圧倒されますね」
「はい。それだけこの街の経済規模が大きいのです」
街の大きさに比例して領主の敷地も広い。兵士の宿舎も訓練所もあるから東京ドーム何個という単位で広さがある。
「到着しました」
御者が馬車の扉を開けると執事が挨拶をしてくる。
「ギルド長のベルク様、レン様。ようこそいらして下さいました」
ジョルジオの案内で屋敷に入る。ロビーを抜けて、待合室のような部屋に俺達は案内された。
「あんちゃん。凄いお家だね。オイラ迷子になっちゃいそうだよ」
確かにそのくらい広い。ソファーに座ると、いかにもという高級なソファーの座り心地だ。
派手さは無いが、いい物ばかり置かれている。淹れたばかりの紅茶が置かれているので、せっかくなので頂く。名前は知らないがダージリンのような香りがする。
「美味いな」
ユキには砂糖を入れて飲ませてみる。
「あつっ」
ユキは猫舌のようでフーフーしながら飲まないと駄目なようだ。
そしてお茶請けのスコーンのような物を早速口に頬張っている。
「んぁんはぁん。んぉいひひぉ」
顔がニコニコしているから美味しいと言ってるのだろう。
「ユキ。食べながら喋るのは失礼になるからね。今度からは口の中に何もない時に喋るんだよ」
「あい」
「お待たせしました。ベルク様、レン様こちらへどうぞ」
執事と女性の使用人が二人やってきて、ケースを使用人が一人一つ持つ。
やっぱり効率が悪いよな。
ジョルジオの案内で長い廊下を歩いて行く。途中で螺旋階段を登り、更に廊下を進むと、突き当りに立派な扉が目の前に現れる。
コンコン
「ジョルジオにございます。お客様をお連れ致しました」
「入れ」
部屋の中からは低いが良く通る声が聞こえる。
「失礼します」
ジョルジオが扉の中に入ると俺達を中に入れてくれる。
「おお、よく来てくれたな。ベルク、久しいな」
「はい。お久しぶりにございます」
「そちらが今回俺に見せたい物があると申した者だな。俺はアルバート・フォン・グレンデルだ。この街の領主で、辺境伯を陛下から賜っている。名前は適当に呼ぶとよいぞ」
「お初にお目に掛かります。グレンデル卿におかれましては、ご機嫌麗しく、謁見恐悦至極に存じます。私はレン・タチバナにございます。以後お見知りおきを」
「ほぅ。そなたは異国の貴族なのか?」
「いえ。元貴族でございます閣下。今は平民に身を落としてございます」
「そうか。まぁよい。とりあえず座るが良い」
俺とベルクはソファーに座る。
「で、ベルクよ。儂に見せたい物があると申したな」
「はい」
使用人の二人がアルバートの前にケースを置く。
アルバートがケースを開けると動きが止まる。
「お、おい。ベルクよ。何だコレは」
「はい。エメラルドの首飾りにございます」、
アルバートはもう一つのケースも開いて再び動きが止まってしまう。
「そちらはサファイヤの首飾りにございます。その二つは対になっているものでございます」
「見れば分かる。見れば分かるが、コレは・・・」
見たこともないこの透明感。内包物も無ければ、ヒビも全くない。
こんな宝石が存在するのか?それにこの宝石の形・・・
見る角度によって光が変わる。変える度に輝きを変える。どうやったらこんな形に出来る?
この圧倒的存在感。神が創った物と言われても俺は疑いはしない。
それほどにこの宝石は美しい・・・
そして神の与えし宝石を飾どる小さな宝石達。
虹だ。この宝石には虹が閉じ込められている。こんな宝石が存在していたのか。
この宝石達が神の創りし宝石を引き立てている。
それにこの二つの首飾りは瓜二つではないか。まさしく神に祝福された物ではないか。
驚きのあまり、ケースの蓋を持ったままアルバートは魅入っている。
「レンと申したな。コレは一体どうしたのだ」
「はい。家宝だった物にございます」
「そうか。ならばお主は高位の貴族だったのではないか?」
「はい。この国と名称は違いますが、タチバナは公爵と同様の立場でした」
「ではレン殿と呼ばねばならないな。そなたは何故この国にやってきたのだ?」
「その辺りは察して頂けると有難いです。それと今は平民でございます。レンとお呼び下さい」
「分かった。色々と事情があるのだな?してベルクよ。何故こんな国宝とも成りうる物を儂の所に持ってきたのだ」
「はい。レン殿はこの地にいるのに、まずアルバート様にお伺いを立てるのが筋と申されました。また、それを通さなければ不義理に当たると申され、私もレン殿と同じ思いでここに来ている所存でございます」
「そうか。それは嬉しいことだ。だがな、これほどの物。しかも二つも国宝と呼べるような品を二つも儂が買い取ることは難しいぞ」
「では一つをお買い上げになって貰って、残りの一つは献上させて頂くというのはどうでしょうか?」
太守であるアルバートに恩を売れるのであれば、このネックレスがタダで渡してもいいくらいだ。
「それでは主は損をするだけではないか。家宝なのだろう?」
「私は妹を探しにこの大陸にやってきました。もし何かあればアルバート様のお力添えをして頂く。というのではどうでしょう?」
「そなたの妹をか・・・」
アルバートは少し考える。
「いいだろう。ジョルジオ。コリーナとナディアを連れてきてくれ」
中世ヨーロッパのお城って凄いですよね。憧れちゃいます'`,、('∀`) '`,、




