ミレニア教を知る
しばらく毎日更新をしようと思っているのですが、段々ヤバくなってきました。
でも出来る限り毎日更新を目標に頑張ります。
ギルドを出ようとすると、カウンターの方から声が聞こえる。
「レンさん。応接間の方へ来てもらえますか」
受付嬢が呼び止めるようにやってくる。そのまま応接室に案内されてソファーに座っていると、ギルドマスターのルークと別の受付嬢が資料を持って入ってきた。
「レンさんが依頼を掛けてから、こちらで情報収集したものです」
受付嬢から渡された資料にはミレニア教がここひと月の間に行った魔女狩りの回数と、攫われた女性の名前が記されていた。
「早いですね」
「ええ。専属の情報屋がいるので、現状で分かっている情報を、レンさんに提供させてもらいます」
このひと月の間にミレニア教が行った魔女狩りは3回。捉えられた女性の数は11人。年齢も名前も判明しているが、小夜の名前は無い。身元もちゃんと分かっているようで、小夜はいない事は確定した。
「襲撃された中に、無人となっている家屋に突入したこともあるようです」
ビンゴ!!俺が見た映像のことだろう。
「じゃあ今の所、ミレニア教に捉えられているということはないのですね?」
「ええ。街の中限定ですけど、外で誰かが捉えられたという話も聞きません。恐らくは可能性としては低いです」
「そう。それは良かった」
「依頼の方ですけど、どうしますか?このまま出しておくという訳には行きませんが・・・」
「そうですね・・・恐らく妹は一人ではなく、二人で行動していると思います。間違えて同行者を殺して、連れてこられても困りますね」
お金が勿体ないということはあるが、俺一人で探すよりも大勢の人に探して貰える方が見つかる可能性は高い。
「コレを見せて下さい」
俺はその場で日本語で書いた手紙を渡す。
「妹を探す人にこの手紙を持たせて下さい。本人が見れば必ず分かると思うし、どうしても付いて来れない理由がない限り、必ずギルドまで付いて来てくれると思います」
俺は何枚も同じ内容手紙を書く。日本語で書いてあるから、ギルドマスターも受付嬢も何が書いてあるか分からない。
「分かった。依頼は取り下げないでいてくれるのか?」
「勿論です。ミレニア教に捕らわれて無くても、その辺で見つけてギルドで保護してくれても、同じように報酬を支払うよ」
「えっ?それでこの金額を出すのですか?」
「構わないよ。妹の小夜を連れ戻すのが一番の目的だからね。冒険者の人には現状の状況を伝えながら慎重にお願いします」
「ひぇ~。やっぱりレンさんは凄いお金持ちなんですね・・・」
この世界でお金を持ってても、あっちに持って帰れる訳じゃないし、せいぜい経済を回すように使わないとね。
「それにしてもミレニア教は何で魔女狩りなんてしているんですか?」
俺は率直な意見を聞いてみる。
誰も抵抗しないなんておかしい。
「それは私にも分からない。ただ、以前はこんなことする教団では無かった」
「じゃあいつ頃からこんなことをするようになったんですか?」
「今から20年ほど前になる」
ギルドマスターのルークは少し考えてから喋り出す。
ミストルティア国の連中が、地に女神が降臨されたと騒いでいた事があった。しかし見た事もない神なんて誰も信じはしない。だがミレニアという名の女性が起こす奇跡を目の当たりにした者が増えて行くと、次第に疑う者はいなくなっていった。
噂が噂を呼び、降臨したと言われるミストルティア国は彼女を女神として奉り、ミレニア教と称し、それを国教とした。国の支援を得たミレニア教はたちまち巨大化し、教えは国を越えて他の宗教を蹂躙していく。
ミストルティアが戦いを仕掛ければ聖戦と称し、ミレニアの教えを信じた者達が内乱を起こして、あっという間に周りの小国は陥落していった。
小国だったミストルティアが、宗教を背にして巨大な帝国を築きあげていった。
「ミストルティア帝国には神が存在しているってことですか?」
「そうだ。その者を神と信じるかは別だが、間違いなく神と呼ばれる者はいる」
存在している神か・・・
確かに目の前で奇跡を起こされれば、神と崇めたくなるのは必然なのかもしれない。
人は弱い生き物であり、力を持つ者に救いを求めるからだ。
「魔女狩りが行われるようになったのは今から5年ほど前からだ」
再びルークは語り出す。
ミレニア教の信者が各街を周り、警告を発していった。
神が警告をお告げになられた。数年の内に世を乱す者がこの大陸に舞い降りる。かの者は女であり、この世界の理を逸脱した者である。その者は平和を乱す存在であるから、その者を捕らえよ。
そう御触れを出したのだ。
ミレニアの信者はこの大陸のどの街にも存在している。その者達が怪しいと思えば女性を告発しているのだ。
「こうして魔女狩りが行われるようになったのだ」
生きている神か・・・
確かに目の前で奇跡を起こされたら信じてしまうのかもしれないな。
「ルークさん。いい情報を知る事が出来ました。ありがとうございます」
「いや。こちらもレン殿にウチのギルド員が迷惑を掛けてしまった。こうして依頼も下げずに依頼をしてくれることに感謝する」
俺とギルドマスターは立ち上がり握手をする。
「また何かあったら力になるから、いつでも寄ってくれ」
「その時はまたお願いします」
俺達は受付嬢と共に部屋を後にする。
「今日はいい情報を知ることが出来て良かったよ。また宜しくお願いします」
「はい。私で良ければいつでも力になりますね」
受付嬢はカウンターの外にあるテーブルに俺達を座らせると、紅茶とお菓子を持ってきてくれる。
「それから別の話ですけど、先日レンさんを襲った暁の牙のパーティは、冒険者ギルドから追放処分となりました」
「本当ですか?」
「ええ。なのでユキちゃんは安心して下さいね」
そういってユキの頭を撫でる。ユキも嬉しそうだ。
彼女もユキが粗雑に扱われていたことに心を痛めていたのかもしれないな。
しばらく雑談をしていると、冒険者ギルド内の様子が見えてくる。
この空間は汗臭く、匂いが染み込んでいて鼻が曲がりそうだ。
テーブルも分厚く切った木をそのままテーブルにしただけの適当なテーブル。
だが乱暴に扱う冒険者達にはピッタリのイメージだ。
これがゲームで見る冒険者ギルドと違ったリアルな世界。
小夜を探す目的が無ければ、ゆっくり冒険をしてみるのもいいかもしれない。
「じゃあまた経過報告を聞きに寄ります」
「ねぇちゃんありがとな」
「はい。またのお越しを待ってますね」
出してくれた紅茶を飲み干すと、俺とユキはギルドを後にした。
ミレニア教の実態が徐々に分かってきました。大まかな設定はあるんですけど、細かい設定がまだなので早くしないとです・・・




