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ラグナロク  作者: ピロ
第2章 異世界
22/44

訓練所にて

風呂上がりにTシャツ1枚で横になって動画を観ていたら、そのまま寝てしまい風邪をひきました。

皆さんは気をつけて下さいね

「いらっしゃい。服は出来てるよ」

翌日、ユキの服を受け取りに行く。

「問題ないか確認するから一度着てみてくれ」

サイズはピッタリだが、若干の修正をしてくれる。

特に尻尾の出る部分は特に細かく直してくれた。

「凄い。尻尾が楽になった」

この前のワンピースは既存の物を着る事が出来るようにしてもらったが、今度の服装は旅装用に仕立てたパンツルックだ。獣人は露出が高く、動きやすい恰好をしている。理由は尻尾の感覚が気持ち悪いからだ。歩行に関してのバランス感覚が悪くなるので、余程のオーダーメイドでなければ、獣人の能力を低下させてしまうことになる。

だから俺はちゃんと仕立ててもらえるように追加で銀貨を渡した。

必要経費はケチるとロクなことがないからな。

ユキも動いてみて支障がないのか嬉しそうだ。

合計3着分を直してもらい、ついでにタブレットで購入した分も直してもらってから、俺達は冒険者ギルドに行く。


「レンさん、今日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」

「こんにちは。今日は訓練場を使わせてもらいたいんだよ」

「ど、どうぞこちらです。私が案内しますね」

受付嬢は慌てて俺とユキを案内する。

いつもの様子と違う受付嬢の態度に、この場にいた冒険者達が不思議そうな顔をしている。

ここの冒険者が依頼者の俺を襲撃するという行為をしてしまったから、さすがに気まずいのだろう。

訓練場は中庭にあった。

「こちらを使って下さい」

受付嬢は木剣を置いてある所に連れてきてくれる。

「ありがとう」

様々な種類の武器が置いてある。刃は潰してあるが、本気で殴りつければ軽い怪我では済まないだろう。

「それじゃあ最初はゆっくり打ち合いながら、徐々にスピードを上げて行こう」

「うん。分かった」

ユキはスピアなので突いてくるのだが、思った以上に早い。それに石突の方も上手くけん制にも使ってくる。コレは天性の才能というやつだろうな。しかも小さいから、足元を狙ってくるのがかなり効果的だ。

俺は格闘技はやってきたけど、剣道や武器を使う武道をやった事はない。

だから受け流すだけで精一杯だ。

「ユキ、お前凄いな」

「本当?」

俺が関心すると、ユキの顔がパァっと明るくなる。

今まで存在すら否定されてきたのだ。認められることは嬉しいのだろう。

その証拠に尻尾がクルクルと動いている。

それからしばらく打ち合いを続ける。俺もロングソードの扱いに慣れて来た。技術が俺には無いから、受けて流して、隙を見て攻撃するの繰り返しだ。コレをもっと素早くしていかなければならないのだが、俺もユキも素人だから今のスピードを超えると、必ず怪我をするに違いない。


それから試したい事があった。俺の身体能力だ。培養液に浸かっていた状態の体が、何故こんなに強いのか・・・

そういえば小夜の髪は金色で瞳がブルーだった。遺伝子が操作されているのか?

まず全力で走ってみる。俺の本当の体でこんなに早く走れることはない。そのくらい違うのだ。これならオリンピックで金メダルを取る事も簡単に出来るだろう。

「あんちゃん、足早いなっ!!」

ユキと打ち合って分かったが、ユキは相当に足が速い。獣人の基礎能力だろうが、そのユキから見ても俺の足は早いようだ。ジャンプをすると俺の身長くらい飛び上がる事が出来た。

それから力も相当に強くなっている。その辺にあった拳大の石を握る。力を入れるとやはり砕け散った。

ゴリラ並みの握力がありそうだな・・・

ユキも昨日魔法付与の指輪を渡したが、力が相当上がっているとのこと。間違いなくストレングスリングのおかげだ。

レジストリングとヒールリングは今の状況からは分からないが、そのうちに分かるだろう。


俺とユキが休憩をしていると、一組の冒険者達が入ってくる。

「おっ、珍しく使ってる奴がいるな」

「ホントだー」

「あいつ等が噂になってる奴だ」

6人の冒険者達が訓練場に入ってくる。

男4人と女性2人のパーティか。

ユキは怖いのか俺の後ろに隠れてしまう。

「俺達も使っていいか?」

「ここは冒険者が使っていい施設なんだろ?俺らを気にすることは無いんじゃないのか?」

「へ~。やっぱ肝が据わってるね」

俺は普通に答えたのだが、何かおかしい事でもあったのか?

リーダー格である戦士の男が俺の近くにくる。

「俺は悠久の探索者のリーダーをやってるランスだ。暁の奴等を倒したってのはアンタのことだろ?」

「まぁ、そうなるね」

「やるねぇ。俺はあいつ等の事嫌いだったから、聞いた時はスカッとしたぜ」

そういって俺に握手を求めてくる。

俺も他の冒険者達と揉めたいわけじゃ無いから、こういう人達は有難い。

「俺はレンだ。昨日冒険者として登録したばかりなんだ。宜しく頼む」

「そいつはすげぇな。俺はてっきり他から移動してきたのかと思ったぜ」

「うんうん。私もそう思った」

「それにしてもレンってカッコいいよね。私ミーシャ。弓使いよ」

「私はロロナ。ヒーラーしてるの。レンは彼女とかいるの?」

リーダーのランスを押しのけて女性二人がやってくる。

「いい男がいるとすぐコレだ・・・」

後ろのスカウトの男がぼそりとつぶやく。いつものことなのか?

するとユキが俺を取られまいと、抱き着いてくる。

「あれっ?この子、暁の奴等に酷い扱いされてた子?」

ミーシャと名乗った女性がユキをじーっと見つめている。

「そうだよ。暁の牙にいた子だよ」

「えっ!?女の子だったの?メチャクチャ可愛いんですけど」

ユキは怖がって俺の背中に隠れてしまった。

「すみませんね。ウチの人達は距離感掴めない人が多いんですよ」

ソーサラーの男はジークフリード、スカウトの男はローグと紹介してくれた。

この人だけ他の人より年が上で、実際のまとめ役はきっとこの人なんだろうな。

「構いませんよ。俺達はそろそろ出るつもりだったし」

俺が立ち上がると、ランスがジロジロと俺をみる。

「なんかカッコイイよな」

「「でしょ?」」

三人が意気投合している。確かに軍用の服はカッコイイからな。でもリーダーのランスと女性二人と見ている所が違うと思う・・・

「本当ですね。これは一体どこで手にいれたのですか?」

ソーサラーの男がユキの手のリングに興味津々だ。恐らく魔法が掛かっている事を知っているに違いない。

「キャラバンの店で、銀貨2枚で手にいれたんだよ」

「本当ですか!?わ、私は少し用事が出来たので失礼します」

大人で落ち着いた人だと思ったのに、凄い勢いで訓練所を出て行った。


「なぁレン。少し俺の相手をしてくれないか?」

出ようとした時に、リーダーのランスが提案を持ちかけてくる。見た感じベテランっぽいから剣の訓練には最適だろう。

「俺は素人だけどいいのか?」

「さっきちょっと見てたけど、そんな風には見えなかったぞ」

そういって訓練用の剣を持ってランスは構える。

「じゃあ胸を借りるつもりでやらせてもらうよ」

俺が構えるとランスが様子見といった感じで打ち込んでくる。

俺も様子を見ながら打ち返す。ランスはベテランといった感じで、フェイントを入れながら攻撃をしてくる。俺が姿勢を崩すと、すかさず鋭い攻撃をしてきた。しまったと思うが、この体のスペックが高いせいか、ギリギリの所でかわすことが出来る。

やっぱ強いな・・・

俺は攻め手に欠けていた。経験が無いから当然だ。

ランスは更に緩急も付けて攻撃をしてくるようになった。そして受け損なって躓いたところで剣を胸の前に突き付けられる。

「参った」

それでもランスが肩で息をしているのを見て、少しだけ安心する。

「レン。お前本当に素人か?」

「うん、ランスとこんなに打ち合う事が出来る人って早々いないからね。ビックリだよ」

「よかったらウチのパーティにおいでよ」

よく分からなかったが、ランスはかなりの手練れのようだ。後で聞いたことだが、彼らはここのギルドで唯一のAランクパーティだった。俺はそんなランスとそれなりに打ち合う事が出来たのか。負けて悔しいが、少しは報われたのかなと思う事にした。

「そっちの嬢ちゃんは俺と相手してみるかい?」

するとスカウトのローグが声を掛けてくる。

「うん。オイラ強くなりたいからやる」

俺の背中に隠れていたユキだったけど、ローグの前にやってくる。

ユキは俺と違っていきなり全開でローグに突っ込んで行く。

「早いっ!!」

ランスが驚いた顔をする。

「ホントだ。ヤバいくらい早いじゃん」

ミーシャがランスに相槌を打つが、そんなに早いのか。

確かにユキは素早くて、足元を狙ってくるから相手にしにくかった。

だけど、相手に出来ないほど早いわけではないと思ったのは、俺の体の能力が異常だからなのか??

ローグはショートソードを2本持って、ユキの攻撃を流している。ユキが小さいのもあってか、下半身の方に攻撃が集中してやりにくそうだ。

だが流石はベテラン冒険者。攻撃を躱してカウンターを仕掛けている。しかも相手の動きを止めるような攻撃を繰り出しているから、ユキのスピードが完全に殺されていた。

コレがベテランとの違いか・・・

俺はランスの時も思ったが、思うように攻撃をさせてもらえない。

少しの差のように見えて、コレが大きな差なんだって気付かされた。

ユキも気付けば首元にショートソードを当てられている。

「いい勉強になった。ありがとう」

俺はランスと握手をする。ユキは俺の背中にビタッとくっ付いて泣いてる。

悔しいんだろうけど、俺とユキとでは経験が違う。まだ悔しがっていい段階じゃないだろ。

「おい」

ローグがユキに声を掛けてくる。

「いい攻めだった。だが狙ってくるのが同じところで攻撃パターンが読みやすい。そこを工夫すればもっと強くなるはずだ」

適格なアドバイスだ。やっぱり歴戦の冒険者って感じだ。

「分かった。オイラもっと強くなるよう頑張るよ」

「俺からも礼を言わさせてほしい。ユキもきっと何が足りないか分かったと思う。ありがとう」

「ああ。まぁ冒険者ってのは死ななければいいんだ。生き残れば勝ちってことを忘れるなよ」

「そうそう、そこだよねー」


最初に出会った冒険者が暁の牙だったから、冒険者にあまりいい印象が無かった。

でもこうやって親切な冒険者もいるってことも分かったのは収穫だな。

「何かあったらまた声を掛けてくれよ」

俺とユキが出て行く時もランスが声を掛けてくれる。

俺は手を上げて挨拶をし、訓練所を後にした。



悠久の探索者はナーセルで一番強いのパーティです。

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