冒険者ギルド 1
冒険者ギルドがリアルにあったらどんな感じなんだろ?
きっとむさくるしいおっさんの集まりなんだろうな~。
って思うのですが、リアルを追求しすぎるとむさくるしいだけになってしまいますよね・・・
バランスは難しいです
冒険者ギルドは少し離れた場所にあった。
素材の運び込みがあるから、門の近くにあるのは必然といったところだ。
ギルドの建物は大きい。それだけ冒険者ギルドが幅を利かせているということでもある。
時間でいえば既に冒険者達は出掛けているのだが、依頼を終えて報告に来る冒険者達は、帰ってくる時間がまばらだ。
扉を開けると正面には広い吹き抜けの空間が広がっていた。
向かって右側に階段があって、2階は食事と酒を飲むことが出来るようになっている。
正面に受付のカウンターがあり、受付の女性がカウンターの奥で座って書類整理中だ。
時間的に事務処理をする時間帯なのだろう。
「冒険者ギルドへようこそ。初めての方でしょうか?」
俺達がカウンターに向かうと、受付嬢が声を掛けてくる。
「ああ。登録をお願いしたいんだ」
「お二人で宜しいでしょうか?」
ユキは俺の後ろに隠れて回りをキョロキョロして警戒している。
知っている冒険者に会いたくないのだろう。
「あなたは暁の牙のパーティの荷物持ちをしていた方ですよね?」
受付嬢はユキに気付いたようだ。ユキはその言葉に強張って俺にしがみつく。
「ああ。何か問題でもあるのか?」
「いえ、問題ありません。酷い扱いを受けていたので心配していました。ですが今のその恰好や装備を見て、良い方と組むことが出来たのかな?と思っただけです」
ユキを心配してくれるこの受付嬢はいい人かもしれない。
「暁の牙とかいう奴等はこの子に支払いをしていなかった。それについてギルドから何らかのペナルティを与えることは出来ないのか?」
「残念ながらギルドの管轄外での契約ですので、ギルドからは関与することは出来ません」
「そうか。ギルドが公認で獣人に荷物持ちとか斡旋しているわけではないんだな?」
「当たり前です。ですが獣人に仕事が無いのも事実で、ギルドも目を瞑るしかないのもまた事実なのです」
「ギルドを疑って悪かった。俺とユキの登録を頼みたい」
「分かりました。こちらに記入をしてもらいたいのですが、代筆しますか?」
「ああ、こっちの文字はまだ分からないんだ。すまないが宜しく頼むよ」
「レン・タチバナさんとユキさんですね。レンさんは貴族の方なんですか?」
「いや、違うよ。まぁ元貴族とでも思ってくれればいいんじゃないか?」
「わかりました。ではギルド証がこちらになりますね。最初はFランクからのスタートになりますが、ランクアップの説明はどうしますか?」
「依頼をこなしているうちにランクアップするんだろ。仕事の依頼もランク次第で、受けることが出来るものと、出来ないものがあるんじゃないのか?」
「はい、その通りです。依頼書は向かって右側に貼ってあります。依頼には必ずランクが記入されているので、それを見て欲しいのですが字も読めないのですよね・・・」
「まぁそういうことになるかな」
「あとは字が読める方を仲間にすることをお勧めします」
「分かった。素材の買い取りは依頼書が無くてもしてくれるのか?」
「はい。常時買い取りしている物はあります。薬草関係はほぼ受け付けていて、他にはオークの肉、毛皮、魔石は常に買い取りしていますよ。ですが、初心者には魔物の討伐はおススメしていません。最初は薬草などの依頼を受けてもらうのがいいと思います」
「分かった。それから俺から依頼を出すということは可能かい?」
「可能もなにも、冒険者が受けてくれる報酬を払って頂ければ、ギルド員でなくても依頼出来ます」
「分かった。なら依頼を頼めるかな?」
俺は受付嬢にミレニア教の魔女狩りについて調べて欲しいことを伝える。
「レンさん、この事をあまり他の人に話す事はやめた方がいいと忠告します」
「それって相当ヤバいのか?」
「ええ。魔女の味方と見られれば、ミレニア教徒の人間が襲ってくる可能性が高いです。ミレニア教の信者はどこにでもいますからね。この冒険者ギルドの中にもいると思われるので、依頼者はシークレットとさせて頂きます」
「ああ、分かったよ」
「レンさんは魔女狩りの対象者を救いたいのでしょうか?」
「俺の妹が魔女狩りに狙われていた。捉えられている可能性はゼロじゃない。捕まっているとは思えないが、もしそうなら妹を救いたいんだ」
「捕まっているかどうかは不明ということですね。それなら妹さんの名前と特徴を書いて、保護すれば報酬という形ではどうでしょう?」
「それで見つかるのか?」
「ですから冒険者達が気になる金額を提示するのです」
「冒険者達が気になる金額ってのはどのくらいなんだ?」
「金貨100枚。これだけの金額が提示されたなら情報屋も動きますし、冒険者達も常に捕縛された荷馬車を監視するでしょう。問題はレンさんにこの金額と、ギルドが受け取る手数料を出せるかどうかです」
「手数料はいくらなんだ?」
「冒険者に支払われる金額の2割をギルドが受け取ります」
金貨120枚か。俺はバックから出したように見せて白金貨15枚を出す。
「妹をしっかりとした扱いで戻してくれたら、更に金貨30枚報酬を上乗せしてくれるかな」
まさかいきなり支払うとは思っていなかったのか、受付嬢が驚いた顔をしている。
「凄いですね。ほ、本当に支払うことが出来るとは思っていませんでした」
「あんちゃんって、凄いお金持ちなんだね」
「そんなことは無い。たまたま持っていただけだよ。この世でたった一人の妹なんだ。金を惜しむなんてことはしないさ」
いやいやいや。だからってこんな大金普通出せませんから。
ってこの人はいったい何者なの?
凄く仕立てのいい服装を見れば、お金を持ってるのは一目で分かるよ。
だからってこんな大金を大したこともないような感じでポンと出せないでしょ。
それにこの獣人の子。
昨日まで汚いボロボロの服を着て、ボサボサの灰色の髪だったのに、こんなに真っ白なサラサラの髪だったの?
それに貴族が着るような服を着て、男の子じゃなくて女の子だったとか。
めちゃくちゃ可愛い。
・・・まさかレンさんはケモナー幼女趣味?
あー、私もあと10歳若ければ、レンさんのお眼鏡に叶ったのかな?
悔しい。こんなイケメン金持ちに可愛がってもらいたかったな・・・
「・・・・・・うぶ?・・・大丈夫?調子悪いのかな?」
「あっ、大丈夫です。ちょっと考え事してたので」
「後は何すればいいのかな?」
受付嬢は依頼書の詳細と契約書を書いて、俺にサインだけを求めてくる。
日本語で書くと、受付嬢は初めて見る文字を不思議そうに眺めていた。
「凄い。複雑な文字ですね」
世界が違うしな。見た事もないだろう。
「そうなんだ。全然違うから、早く覚えないとね」
この世界の文字は割と簡単だ。アルファベットに近いから、読むことだけなら割とすぐに覚える事が出来そうだ。
「おいおい、何で追い出したガキがいるんだ!?」
ギルドの扉を勢いよく開けて5人の冒険者が入ってくる。
「何でお前こんな服着てるんだ。まさか俺達の金を盗んで買ったんじゃないだろうな?」
昨日ユキを置き去りにしたリーダー格の男が、ズカズカとカウンターにやってくる。
「そうだ、コイツ俺達の金を盗んだにちげぇねぇ」
ユキは俺の後ろに隠れて怯えている。
リーダー格の男がユキを捕まえようと掴もうとするのを俺が防ぐ。
「何だ兄ちゃん。俺はそのガキに用があるんだ。怪我したくなきゃさっさとどきな」
「ユキは俺の仲間だ。それにこの服は俺が買った。ユキに払う金も払わないようなクズが、盗人扱いするんじゃねぇよ」
「レ、レンさん」
受付嬢が小声で俺に声を掛ける。トラブルを起こさないでほしいのだろう。
「あっ!?誰がクズだって?」
「お前等以外にいるわけないだろ。そんなことも分からないのか?本当に頭が悪いんだな」
「皆さん。ここはギルドですよ。ここで争いをするならギルド証をはく奪させてもらいます」
「そうかよ。じゃあ表に出ろよ。まさかビビッて出れねぇなんて言わねぇだろうな?」
「何でお前なんかにビビるんだよ。お前こそ本当は怖くて震えてるんじゃないのか?」
「兄ちゃん。俺達を馬鹿にするなんていい度胸じゃねぇか」
仲間の一人が俺の肩に手を回し、外へと誘導する。
「ユキ。ちょっと待ってろよ」
割と慎重なレンですが、理不尽なことが嫌いなレンは喧嘩を売ってしまいます。
地元でも同じような感じで、喧嘩をしているのですが、いつかそういうエピソードも書きたいですね




