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ラグナロク  作者: ピロ
第2章 異世界
14/43

商人ギルドへ

季節の変わり目は急に寒くなったり、熱くなったりと体調を崩しやすいので

皆さんも体調を崩さないようにして下さい。

「あんちゃん。おはよう」

目が覚めるとユキの顔が目の前にある。俺が起きるまでずっと見ていたのかもしれない。

「おはよう」

この世界の朝は肌寒い。ユキが毛布に潜って俺に抱き着いてくる。

「あんちゃん。あったかい?」

「ああ。あったかいよ」

頭を撫でてやると更に嬉しそうに抱き着いてきた。

「ユキ。お腹空いたか?」

「うん。お腹空いた」

「今日はいろいろとやることがあるからな。飯いっぱい食って出掛けるぞ」

「分かった」

朝飯をいっぱい食べれると知って、ユキの口元が緩んでいる。今にも涎が垂れてきそうだ。


「今から朝飯食べれるかな?」

「ああ。もう少しで終わる所だったからね。早いとこ食べておくれよ」

この世界の朝は早い。陽が昇ると共に人々は動き出す。

昨日いた客は冒険者が多かった。食べ終わった皿がそのままになっていて、女将が忙しそうに片づけをしている。

「俺達が最後なのか・・・」

「うん。あんちゃんが起きた時にはもう誰もいなかったよ」

冒険者達は空が白む前に街を出発している。出来るだけ早く出て、日が沈む前に帰ってきたいのだろう。それだけ外で野営するのは危ない。


「あんちゃん。今日のスープも美味いな」

「ああ。しっかり食べて、いざって時に力が出るようにしろよ」

環境がそうさせているのだろうが、獣のようにガツガツと食べている。

美味しそうに食べるのを見るのは好きなんだけどな。もう少し食べ方を教えたほうが良さそうだ。

昨日も思ったが、ここの食事は美味しい。

出来ればここで食事をしたいところではあるが、売春宿なんだよな・・・

「女将さん美味しかったよ。ご馳走様」

「ああ。また来ておくれよ。それと今度はウチの子達も相手にしてやってくれ」

「わかった。そのうちね」

売春に関しては適当に流しておく。

さてと。昨日テント街で聞いた商人ギルドに行こうか。

「ユキ。商人ギルドは知ってるか?」

「うん。こっちだよ」

ユキに手を引かれて行く。ユキは役に立てていることが嬉しいのかご機嫌だ。

「ここを曲がるとすぐだよ」

宿から10分くらい歩いただろうか、石造りの立派な建物が現れた。

入り口には商人らしき人達が溢れ、商売の話に盛り上がっている。

「ユキ、いくぞ」

小上がりになった階段を登って扉を開けようとすると、ユキが付いて来ない。

「どうした?」

「うん。オイラ前にここに来た時、皆に嫌な顔されたんだ。獣人はきっと入っちゃ駄目なんだと思う」

確かに獣人の差別があるのかもしれない。だが一番の原因は汚れていたからだろうな・・・

「俺がいるだろ。ほらっ行くぞ」

怖がっているユキの肩を抱き寄せてギルドに入る。

「いらっしゃいませ」

受付の女性が声を掛けてくる。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ああ。商人ギルドに所属したいのと、買って貰いたい物があって来た」

「分かりました。ではこちらの用紙に必要事項を記入して下さい」

俺はとっさに文字が書けない事に気が付く。

「すまない。俺は文字の読み書きが出来ないんだ」

受付嬢の顔が一気に冷ややかになる。

「お客様。文字が書けないのに、商売をするのはおススメ出来ませんが・・・」

「本当にすまない。俺が読み書き出来る言語とは違うんだ。出来るだけ早く覚えるようにするから、代筆を頼めないだろうか」

俺は受付嬢に周りの人には見えないように銀貨を差し出す。

受付嬢の冷ややかな顔が嬉しそうな顔に変わる。地獄の沙汰も金次第ってやつだな・・・

「レン様。ではこちらがギルド証になります。年会費は金貨1枚になります。会員証を無くすと再発行に銀貨1枚掛かるので気をつけて下さい」

ギルドに所属すれば、ギルドへの売買が出来ることが出来る。街ごとのギルド限定ではあるが、お金を預かってもらう事が出来るそうだ。

店を出す場合は、露店なら年会費金貨1枚。店舗なら年会費金貨5枚を納めることで、商人ギルドが所有する、定期便の馬車に荷物を載せることが出来たり、他にも色々とメリットはあるようだ。


「それから、俺はこの国に来たばかりで知らないことが多いんだ。少しこの国の常識を教えてくれる人を紹介してくれないか?」

「そうですか。報酬はいかほどを考えていますか?」

「そうだな。金貨1枚で受けてくれる人はいるだろうか?」

「分かりました。私、アリューシャが受けさせて頂きます」

アリューシャの顔が見るからに笑顔に変わった。まぁ教えてくれるなら誰だろうと構わない。商人ギルドの受付嬢なら色々と知っているだろうし適任だな。

「明日、私は休みを取っているのでそれで構いませんか?」

「ああ。頼むよ」

「レンさん。ギルドで買い取りをして貰いたいとのことでしたが、どういった物を売りたいのでしょうか?」

俺は周りに人がいない事を確認して、バックからアタッシュケースを取り出す。,

エメラルドの人工宝石に、スワロニコフのクリスタルガラスを埋め込んだ、豪勢な造りのネックレスを受付嬢に見せる。ランクの低い2カラットのエメラルドで白金貨10枚って言ってたからな。20カラットの最高ランクの人工宝石がいくらになるのだろうか。

思った以上の物が出て来たからか、受付嬢の動きが止まる。

「レ、レンさん。しまって下さい。少々お待ちくださいね」

受付嬢は慌ててカウンターの奥に小走りで消えて行く。

奥で何やら話しているとパタパタと小走りで戻って来た。

「レンさん、こちらへどうぞ」

カウンターの中に入り、奥の客間に案内された。

「あんちゃん・・・」

ユキは不安なのか俺の裾を掴んでいる。

「大丈夫だよ。心配するな」

ユキの頭の上に手を置いて、撫でて一緒に入る。

「レンさん。こちらにどうぞ」

受付嬢に促され部屋に入ると一人の男性が待っていた。

「ようこそ商人ギルドへ。私はこの商人ギルドをまとめているベルクと申します」

初老の一歩手前くらいだろうか、恰幅のいいギルドマスターだ。

俺とユキはソファーに座るように促されてソファーに座る。

「レンさんがお持ちの物を当ギルドに販売したいと伺いました。物を見せて頂けますか?」

「はい。こちらになりますね」

そういってネックレス専用のケースを開いてベルクに見せる。

「こ、これは凄いですね・・・私も今まで色々見てきましたが、これほどの物を見るのは初めてです」

それはそうだろう。これは人工で造られている。

これが偽物かどうかは“ キレイすぎる ”で判断されるからな。

しかし、この世界では宝石を造ることは出来ない。そしてカットの技術も持ち合わせていないのだ。

だからこれは恐ろしく綺麗な宝石でしかなく、クリスタルガラスの生成もこの世界には存在していない。

だからギルドマスターといえど初めて見る宝石でしかないのだ。

ギルドマスターの手が震えている。

「レンさん、これは一体どうしたのでしょうか?」

「といいますと?」

「これほどの物の存在が、世の中で知られていないのが不思議というのがまず一つ。それに今までこんな形の宝石は見たことがありません。どうやってコレを手に入れたかです」

おそらく出自が分からない人間がこれほどの物を持ってくれば、盗品では無いかをまず疑うだろう。

「宝石の形はカットすることによって、光を反射してキラキラと輝くんです。これは俺の国の職人の技術なんですよ。それから俺はこの大陸の人間ではありません。俺の名前はレン・タチバナ。元々は貴族の出身だった。こういえば何となく分かってもらえるでしょうか?」

「貴族の方でしたか。これは失礼しました。ですが訳ありということは分かりました」

よし。都合のいいように解釈してくれた。

「ということはコレを資金に、この国の貴族の後ろ盾を得て、いずれ元の大陸に戻るおつもりでしょうか?」

「いえ。それは無いですよ。俺はこの国に、行方の分からなくなった妹を単身で探しにきたんです。だからあまり持ち合わせが無い。元の国にも居場所があるわけでも無いし、家宝であるコレを売って少しでも資金にしようと思っています」

「では出来るだけ高く売りたい。そういうことで宜しいでしょうか?」

すっかり俺が某国の没落した上位貴族と思っているな。

「まぁそういうことになりますね。もしギルド長に知り合いで、コレを所有出来る貴族の方がいれば紹介して欲しいのですが?」

「・・・これほどの物でしたら、王都で開催されるオークションに掛ければとんでもない値段が付くことでしょう。それかこの街の辺境伯であるアルバート様に会って、交渉するのもいいかもしれませんね」

オークションか・・・王都にちゃんと届くかどうかも心配になるな。だが値段をつけるにはコレが一番だろう。でも今はコネクションが欲しい。辺境伯ならこの辺りの街を統治している筈だから、コネクションを持って置くのはメリットだろう。

「この街の貴族を無視してオークションは、あまり覚えがよくないですね。まずはグレンデル卿に話をしようと思うのですが、その場合、俺はどうすればいいのすか?」

「はい。レンさんが我々と同行して頂ければ、後は我々で交渉しますよ」

「ベルクさん。是非お願いしたいですね」

貴族に直接顔と名前も覚えてもらうチャンスだ。

「物が物だけに、辺境伯に会うまで私が持っていても構わないですか?」

「ええ、もちろんです。ただギルドからの紹介ですので、売上の2割は頂くことになりますが、宜しいですか?」

「構いません。それから私は値段に詳しくありませんし、ベルク殿が上手く交渉をしてくれるのなら、売り上げの1割をベルク殿に受け取ってもらおうかと思っています」

「ほ、本当ですか?では私の方で頑張って交渉させて頂きます」

自分の売値次第で懐に入る金も変わってくるのだ。ベルクは出来るだけ高値で売ってくれるだろう。

ベルクに大体の価値を聞いたところ、国宝と呼んでもいいレベルの物だそうだ。

確かに豪勢なのは間違いない。巨大なエメラルドに、見たことも無いほどキラキラするクリスタルガラスを散りばめたネックレスだ。

さて、28万円で購入したネックレスがいくらに化けるのか・・・

「ではレンさん。定宿にしている所を教えてもらえますか?」

「あっ、俺はここに来たばかりで定宿はありません」

「それは良くないですね。では交渉が終わるまで、我々が所有している宿に泊まって下さい。護衛もいて信頼出来ますし、我々もレンさんと連絡がしやすくなります」

「ええ、分かりました。是非そうさせてもらいます」

ギルドマスターはこの後すぐに、この街の領主アルバート・フォン・グレンデル辺境伯にアポを取り付けてくるようだ。

「領主様からの依頼は最優先になるので、もし宿泊先から出る時は出先を必ずお伝え下さい」

「ええ。わかりました」

それと街からは出ないでくれと念を押された。

俺はユキが退屈していないかと心配していたけど、大丈夫そうだ。

商人ギルドの持つ宿は向かいにある豪勢な建物だった。

受付嬢が案内してくれて、何と最上階の特別扱いの客間に案内される。

「あんちゃん。オイラこんな立派な部屋初めてみたよ」

天蓋付きのベッドを見てユキが興味津々だ。

しかもやたらと大きくて、キングサイズのベッド二つ分くらい大きさがあるぞ。

「では明日の朝、ここに私が伺いますので待っていて下さいね」

俺は裕福な家庭で生まれて来た。過去を遡ればかなり高貴な生まれといってもおかしくはない。それなりに豪華な物を見て来たつもりでいたが、コレは次元が違う・・・

中世の王族が住まうような豪勢な造りだ。

「あんちゃん。このベッド凄く大きくて凄いよね。何でこんなに大きいのかな?」

ユキは嬉しそうにベッドに飛び込む。


このベッドは5~6人の女性と行為に及ぶ為のものだろう。

無邪気に喜ぶユキには言えない事実だ。


「ユキ。街の案内だけじゃなくて、これから俺の手伝いをする気はあるか?」

俺には信用の出来る仲間が必要だ。

ユキはきっと俺の秘密を知っても、バラすようなことはしないだろう。

「うん。手伝うっ!!オイラは冒険者になりたかったんだ。だから魔物退治だってやるからな」

あんなに酷い扱いを受けてたのに我慢してたのは、冒険者に憧れてたからかもしれない。

「それなら武器と防具も買いに行かないとな」

「ホント?ユキにも買ってくれるの?」

「ああ、仲間になるんだ。当たり前だろ」

ユキは仲間という言葉に目をキラキラさせて、俺に飛びついてくる。

物凄い力で俺の頬に頬ずりして、顔をベロベロを舐めてくる。これが獣人のマーキングというやつなのか?



こうして俺は、しばらくユキの愛情表現にされるがままになっていた。



宝石はキレイで好きですが、天然物とか人工物とか気にならないです。

宝石が造ることが出来るのは凄いと思いませんか?

ましてそれを製造する技術のない所に持っていけば・・・


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