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学院のとある日 1

.太陽の暖かい日差しを感じつつ、穏やかな風に吹かれ、心地よいまどろみに身を任せてうとうととしていると、目の前に影が生まれる。何事かと思って目を開くと、少女―――――セリアの顔が目の前にあった。


「……」


「……おはよう」

無言のまま見つめていると、無表情のまま顔を赤らめ目覚めの挨拶をしてきた。ただし、俺に馬乗りになったまま。


「降りてくれ」


「……」

身体を起こすためにそう頼むと、若干だが残念な表情を浮かべ素直にどいてくれる。立ち上がって、伸びをする。身体の節々がこぎみいい音を鳴らした。


そんな俺の様子を無表情のままじーっと見つめるセリア。幼少期から時をある程度経たため多少は成長した姿が目に映る。


感情を感じさせない深い蒼色の瞳は若干垂れ目で眠そうな印象を与える。スッとした鼻立ちに綺麗な紅色の唇。

身体的には女性らしさが多少欠けている幼さを感じられる体型だが、まぁそれが小動物的な愛らしさを与える。


全体的に本当に美少女として育った彼女は、いまだに交友関係が異常にせまい。数少ないその人物たちもこの後すぐに登場することとなるであろうから割愛させてもらうが。



さて、今俺達がいる場所は学院の屋根の上。屋上ではなく、屋根の上だ。そんな場所にいる理由は講義をサボった俺を呼びに来てくれたのだろう。感覚が正しければお昼だから。


それに学院内では優等生で通っている彼女がここにいるということは間違いなく休憩時間ということになる。校舎の中からも生徒たちの話声がここらまで届いているし。


「みんな待ってる」


「わかった。じゃ、いくか」

セリアの言葉にそう答え、袖の中から縄を取り出す。先端に鍵爪が付いているいて、それを屋根の出っ張った部分に引っかけて屋根から飛び降り、すぐ下の窓に飛び込む。


引っかかった鍵爪を風で外してまた袖の中に収納する。その後に続いてセリアも窓から俺のほうに飛び込んでくる。こちらは縄などを使わず屋根に指を引っかけて身体能力だけで飛び降りてきた。


もはや慣れたものなので俺の胸に飛び込んできたセリアをしっかりと受け止める。その後はしばらく抱きついたままのセリアをそのまま引きずって目的地まで向かう。これも既に日常茶飯事なので気にしない。それに周りには人の姿が皆無であるし。



目的地へと向かう中で、段々と人の姿が増えていき、それにつれてこちらへと視線を向ける人が増える。


セリアには羨望と劣情を、俺には諦観と嫉妬を。


俺らに向けられる視線の前者は同学年から上級生の目、後者はつい先日入学してきた1年生どもの目だろう。


俺らの評判や去年の行いを知っている者どもからすると、まぁ妥当な感情である。1年生も、まだ俺らのことを知っていなかった去年の全員がそんな目だったからそれもまた理解できる。


一部の顔見知りなどには軽く挨拶しつつ、その他の視線は全てスルーして目的地へと向かう。セリアも同じように。コイツの場合は知人以外はすべて眼中にない、といった感じなのだが。






.それからサボった俺のことを探している教師に遭遇しないルートを通り、無事目的地である部屋へと到着する。


ノックもせずに扉を開ける。すると、中からはいいにおいが漂ってきた。その匂いの発信源となっているところには一人の少女―――――ユーリィが立っている。


鮮やかな赤色の髪はポニーテールになって腰まで届き、目は綺麗な橙。全体的に活発的な印象を与えられる顔立ちをしている。セリアよりかは女性的な印象を与えられる体つきだが、まぁ……うん。どっこいどっこいといった感じとだけ言っておく。そんな彼女はなにやら楽しそうに鼻歌を口ずさんでいる。


そして何よりも特徴的なのが、まず頭から生えている犬耳と腰のあたりから出ている尻尾。彼女が獣人であることを示す証だ。


そして、もうひとつは黒と白を基調としたメイド服である。その服に身を包んだユーリィは扉を開いた音に気付いたのかこちらを振り向き、


「あ、お帰りショーゴ、セリア。もうちょっとで出来るからあっちで待ってて」

太陽をほうふつさせるような明るい笑顔でそう言った。


その言葉に了解の言葉を返し、奥へと進む。居間のようなその部屋には中央にテーブルが置かれていて、その周りにソファが置かれている。


その3つあるソファの一つに少女が眠りこけている。長く腰まで届く茶色の髪は、床に広がり、強気な印象を与える釣り目な瞳は穏やかに閉じられている。身体つきは無駄な脂肪がなくすらりと引き締まった長身であるが、まぁ女性に必要だと思われる脂肪も存在していない。


それでも、美少女なのだが……


「ぐこー……」

おっさんかのような寝息と、ぼりぼりとおなかを掻く姿で全てが帳消し、いやマイナスへとたたき落とされるような光景であった。


まぁいつものことなので俺は表情を変えることなく、そいつに近づき昼飯を知らせる。


「起きろ、昼飯だぞ」

肩をユサユサとゆすると、瞳を小さく開く。それと同時に、頭上に伏せられていた獣耳と髪と同化していた尻尾が揺れ動く。これも、この少女が純粋な人間でないことを示すものだが、先ほどのユーリィとは多少事情が違う。


それを示すのは首元に存在するチョーカーという名の首輪である。これはこの少女の正体は俺の使い魔である証だ。そして、使い魔とは幼少期に助けたオオカミであり、そのオオカミが今はこのような少女の形をとっている。


その理由は川よりも浅く、砂の山よりも低い単純明快なものなのだが、今回は割愛する。


なぜかって?それは、


「おまちどーさま〜」

ユーリィとそれを手伝うセリアが持ってきた昼飯を食べるためである。出来たてであることを示す湯気とともに食欲をそそるいいにおいが部屋の中に漂う。


それに反応し、半覚醒状態だったオオカミ―――――リィスも完全に起きる。大きな欠伸をしつつ伸びをする。その姿を見つつ、俺や食事の準備が終わったユーリィとセリアはそれぞれの席へと着く。


それを確認し、俺は手を合わせる。他の三人も俺にならって手を合わせ、


「「「「いただきます」」」」

その言葉とともに目の前の昼飯に手をつけ始めた。


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