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サバイバル演習・終

.声をかけてきたものの、それに俺は特に反応を示さずにいた。なんだか独り言のようにも聞こえたから。


「寝ている……か。まぁ聞いていようがなかろうがこれはオレの独り言だ」

そう言って彼女は話し始めた。


「オレは生まれつき魔力を放出出来ない体質らしくて、群れの中ではずっと疎まれていたんだ。でもそれだけならよかった。年を経るごとに段々オレのことを認識しなくなって、最終的には群れから置いてけぼりにされた。親にも忘れ去られてな。それからは死に物狂いで生き残ろうと色々やった。その結果かどうかはわからないが、一つの力を手に入れることができたんだ。でも、そんなときにあいつに出会った。それからはお前の知っている通り。なんとか退けることができたが、オレはボロボロになて死にかけた……というわけだ」

それだけ言ってオオカミは口を閉じる。しばらくすると寝息が聞こえた。少しはすっきりしたのか多少はキレイな顔をしている。

完全に寝入っていることを確認して俺は後ろに集まっている三人に声をかける。


「奴の居場所は?」


『えぇ。あれだけ力をまき散らしていれば何もしなくてもいとも簡単にわかります』

ウィンの言うとおりだが、地形まではわからない。そのあたりを確認するためにも捜索に出した。


『しかし、準備はまだ終えておらんのだろう?』

リンの言うとおり、まだ準備は終わっていない。いくつか仕込みは終わっているが、これでは足らないだろう。

今出せる力は全力の数十分の一。手数だけならそれなりにあるのでいいのだが、火力のあるものといわれると少々心持たない。

安全のためにも万全を期すべきなのだが、


「コイツの話聞いちまったしな」

一人は嫌だと寝息で漏らしていた。その理由も今日わかった。それらから俺自身思うこともできた。それだけで俺が無茶をする理由としては十分だ。


『こうなったら意地でも自分の意思を曲げねーからな……』

そう言ってため息を漏らすヒータ。それなりに長く付き合ってきているため俺の性格もよくわかっていらっしゃるようだ。


「そういうこと。むろん死ぬつもりはなく、勝つつもりでいく。だからみんなも力を貸してくれよ?」

俺の言葉に、三人はため息をはきながらも、笑顔で首肯するのだった。





.「先手必勝!」

たどり着いたヤツの寝床を強襲。風の属性を付与したボーラが奴の目をめがけて飛んでいく。今日の昼につけた傷は既に治っているようだが、それと同等……もしくはそれ以上の傷をつけて戦いの火ぶたは切られた。



痛みによって強制的に起こされたワイバーンは怒りの咆哮をあげる。しかし、その傷をつけた敵の姿を確認することはできなかった。見ることも、音を聞くことさえ。


この理由としてはショーゴがとある二つの魔法を使用していることにある。


姿を隠す≪隠遁インビジブル


自分の影響で鳴る音を全て消す≪消音サイレント


この二つの魔法を陣を利用して発動させた。この場で聞こえるのはワイバーンの音のみ。


敵の姿を見ることもできず、いらいらとストレスをため込んでいくワイバーン。その間にもここ等一帯に自分の足と魔力の塊によって陣を描くショーゴ。その合間には牽制ともいえる≪バレット≫をいくつかばらまく。それもまた、自身に致命傷を与えることはないものの、そう何度も食らいたいものではない。




後もう少しで仕込みも終わる……そう思ったが、甘かった。


咄嗟にシールドを五重に張るも、いとも簡単に破られ数十メートル離れた崖にまで吹き飛ばされる。

自分と崖の間にシールドでクッションを作り、叩きつけられて死ぬことはなかったものの、そもそも、敵の攻撃に直撃した時点で色々なところがボロボロになっていた。


何が起きたのか。それは簡単なことで、ワイバーンがその硬い鱗におおわれた尻尾で自分の周囲をなぎ払った。


たったそれだけの攻撃でこちらは戦闘不能になりかけている。内臓にも骨が突き刺さっているようで吐血する。

霞む視界にワイバーンの姿が見えた。口の中に赤いものをため込んでいる。炎のブレスだ。何の防御手段も持たぬ今の俺にあの一撃を食らえばひとたまりもない。



どうするか、必死で思考していると、俺とワイバーンの間に立ちふさがる影が現れる。オオカミだ。


「お前はやらせない……助けてもらった恩もあるからな」

その身体が光る。あれは魔力と気が融合しているのか?オオカミの中で生まれる暴力的なほどの莫大な力。それは、ワイバーンの溜めていたブレスが放たれると同時にオオカミからも放たれる。極太のレーザーのようなものがブレスとぶつかり合い、爆発した。閃光とともにあたりに充満する粉塵。俺の目には満身創痍のオオカミのみがうつり、ワイバーンの様子を知ることができない。これで、ワイバーンが無傷であるとほとんど詰んでしまうわけだが……。





嫌な予感ほどよく当たる。さすがに無傷とまではいわないが、余計に激昂させるだけであった。

咆哮とともに前傾姿勢をとる。体当たりか何か、そのための力を溜めている。


こちらはどちらも満身創痍。オオカミのほうは避ける程度の余力は残っているようだが、動く気配はない。俺を庇う位置でワイバーンをにらみ続ける。


その中で俺は必死に魔力を練り上げていた。ここで成功しなければ死ぬ。封印?そんなものはねじ伏せる。どんなに強力であろうとも所詮は人のかけた封印だ。精霊王の契約者である俺に解けない道理はない。


もう一度咆哮をあげたかと思うと、奴は走り出した。その姿を見て、一層身体に力を込めようとするオオカミ。俺のことなど気にせずに逃げればいいものを。


迫るワイバーン。接触するまであと数秒といったところで、ようやく封印を無理やり破ることができた。それとともに溢れだす魔力。久しぶりの全力だからか心と体が高揚するが、


しかし、今はそれに身を任せている場合ではない。即興で再び5重の障壁をワイバーンの前へと展開する。


さすがに一瞬で張ったものだからか4枚目までは破られるも、最後の1枚でその動きは停止する。それと同時に強固な障壁の檻がワイバーンをその中へと閉じ込める。初めに仕込んでいた陣によるものだ。魔力が少なくとも強固なものが張れるように。それに加え今は全開の魔力がある状態であって、そんな二つが合わさるとどうなるか。


もはや一つの別次元ともいえるほどにこの世界から隔離されていた。ワイバーンごときでは破ることは不可能。下手をすると最上位のドラゴンでも無理かもしれない。


そんなわけで一息つける余裕ができた。突如として俺の中に現れた強大な魔力に茫然としているオオカミの姿に俺は思わず笑みを浮かべる。ひと月の間ほとんど仏頂面だった顔ばかりだったので他の一面を見れて新鮮だったのだ。


そんなオオカミのもとへと俺は向かう。動けないほどの重症だった身体は目に見えるスピードで治っていく。


「助けてくれてありがとう」

感謝の気持ちを込めて背中を撫ぜる。くすぐったそうに身をよじるが別段嫌がっている様子ではない。


「ここからは―――――選手交代だ」

その言葉とともに俺の傷は全て塞がった。これは精霊と契約したことによる効果というか副次効果というか、魔力があればあんな風にすぐに傷を治すことができる。今は意識的にやらなければ起きない現象ではあるが、もう何柱かと契約すれば常時発動するようになるらしい。どこまで俺の人外化は進むのか。疑問を持つもののそのうちわかることなので考えるのはやめた。


さて、ここまでボロボロにされたおとしまえはつけてもらわないと。後は、後ろの三人がものすごくご立腹な様子で、


『あの爬虫類が……よくもショーゴを傷つけおったな』


『バラバラに切り刻んで』


『塵一つ残すことなく燃やし尽くしてやる』

というか、修羅が背後に浮かんでいた。あまりの形相にその姿を直視することはできない。


『ショーゴ、あれを使え』


「言われなくてもそのつもりだ」

リンの言葉にそう答え、俺は特別な陣をワイバーンの隔離されている空間へと形成する。その準備はすぐに終わり、


「陣―――――精霊王の領域」

俺のその言霊がトリガーとなり発動する。それと同時に結界の中にすさまじいほどの重圧がかかる。隔離されているはずの結界がビリビリと震えるほどに。ワイバーンなど身動き一つ取れていない。

その重圧の原因は新たに顕現した3柱の精霊。


火の精霊ヒータ。自身の身長に届きそうなほどの大太刀を持ち獰猛な笑みを浮かべている。


風の精霊ウィン。風を纏った槍を何十本も自分の周りに浮かべ、ワイバーンを見つめる。その顔は無表情。


そして最後。一人でも圧倒的な魔力を持つ二人を合わせてもその足元に及ばない魔力と威圧を迸らせる、


精霊王リン。


彼女たちがこの世界に顕現したのは、リンの固有武装による。


固有武装とは前に父さんと模擬戦をやった時に俺が出した槍や、今ヒータやウィンが持っているそれらのことを指す。


それらはそれぞれの精霊が司る力を武器としてこの世界に具現化させたものだ。そして、全ての上に立つリンが持つ固有武装は、精霊の存在できる世界の構築。現実には基本的に姿を現すことのできない精霊が顕現できるようになる……とんでもないほどの規格外っぷりだ。


しかし、まだこれは創ったばかりで試作段階のもの。強力な結界の中に特別な陣を描き、膨大な魔力によってようやく発動することができる。上位精霊にすら及ぶこの身の魔力が10割あったにもかかわらず、今では3割ほどまで消費されている。


ただ、維持には世界から魔力が供給されるらしくこれ以上は減ることはないのだが。


そんな中へと俺も入る。この世界はリンの構築する空間を現実に持ってきただけであり、頻繁にそこで過ごしている俺にとってはこの程度の重圧は無いに等しい。ただ、味方がいるときには使用できそうもない。その辺りは要検討といったところか。


「さて、みんなやるぞ」

俺の言葉に全員がかまえる。


「まずは私が」

そう言ってウィンは後ろでつき従っている槍を飛ばす。それらはワイバーンの翼の付け根へと殺到した。


「消し飛びなさい」

全てが突き刺さると同時に腕を振るい、両翼を切り飛ばす。空へと舞い上がったそれは無数の風に切り刻まれ、言葉道理に消し飛んだ。


一泊遅れ、その身を襲う痛みにワイバーンは思わず咆哮をあげようとした。しかし、その音は俺達のもとへと届くことはなかった。原因であろうウィンのほうを見る。


「耳障りな音は消しました」

笑顔でそう言われる。すがすがしいほど綺麗な笑みだった。


「じゃ、次は私だ!」

大太刀が炎を纏い、背中からも炎が噴き出し、それらは三本の巨大な剣を形作る。


「せーっの!」

その身体を回転させ、炎の大剣をワイバーンへと振るう。それは前後の足を全て斬り飛ばし、塵一つ残さず燃やしつくされる。


しかし、その傷口は炭化し、ワイバーンの血液が出ることはなかった。痛みで苦しんでいるようだが。


「では最後に我らじゃ」


「おう」

俺達は頭上に純粋な魔力だけを集める。通常集まることがないほどの魔力が集束されることによって空間が歪む。そして、その膨大な魔力の塊は胴体しか残されていないワイバーンに向けて放たれた。

全てを拒絶するかのように突き進む。それがワイバーンに命中した瞬間、何の音も鳴らすことなくこの世から影も形もなく綺麗に消え去った。


魔力とは世界に満ち溢れ、空気と同じく必要不可欠なものだが、集まりすぎるとそれは全てを消し去る危険物と化す。


ただ、そんな魔力俺とリンが力を合わせない限りは不可能なことなので起こることはまずないと言っていい。


ちなみにさっき飛んで行ったあれはワイバーンを消し去り、結界をぶち破ることでエネルギーを使い果たしなくなった。それとともにリンの固有武装も解かれて、いつも通りの姿へと戻った。



それにしても、一気に魔力を使ったからか足元がふらつく。これまであそこまで魔力を使ったことなどまずない。父さんとの模擬戦ではリンにリミッターをかけてもらって成人した一般的な魔術師より多少多いくらいにとどめているのでそこまで使うことはないのだ。


それはいいとして、倒れそうになる足に鞭を打って茫然としたままのオオカミのもとまで歩く。一言だけ、一言だけでいいので伝えておきたいことがある。


フラフラと危なっかしい足取りで近づいていくと、俺の様子に気がついたのかこちらへと駆け寄ってくる。


ちょうどたどり着いたところで膝が折れる。あわててオオカミが俺の身体を支えた。ちょうど俺の顔の真横にオオカミの耳が来る。好都合だ。途切れそうになる意識を必死につなぎとめながら、一言だけ口に出した。


「お前は……一人じゃない」

なんとか言えた。そのことに安堵をおぼえ、俺は意識を闇の中へと引きづり込まれた。





.それからの後日談。父さんから聞いた話だが、俺を回収しに来た時、オオカミが俺を守るようにずっと威嚇していたらしい。


俺の親であることをなんとか理解させて、連れて帰ってはきたが、ずっと俺のそばを離れようとはしなかった。



で、今。俺の寝ているベッドで寄り添うようにオオカミが眠っている。俺が起きるまでずっと眠っていなかったらしく、俺が起きた瞬間嬉しそうな顔をしたかと思ったらすぐに気を失った。



そのオオカミの背中を慈しむように俺はゆっくりと撫ぜる。気持ちよさそうにするその姿を見ながら窓の外を見る。暖かな日が差すこんな日には眠気が襲ってくる。先ほどまでずっと寝ていたが、どうやらまだ寝足りないらしい。大きく欠伸をしながら布団の中へと潜る。

オオカミが起きたら頼むとしよう。当初の願いを。どうなるかはわからないけど、きっと悪いことにはならないと思う。


とりあえず今は寝よう。襲う睡魔に俺はあらがうことなくそのまま身をまかせた。


今回はいつもとは違って凄く長くなりました。分けるところが見つからなかったんで……。

というわけで、今回で幼少期編てきなものが終わり、ようやくメインの学院編に入ることにします。個人的にキャラ一人ひとりの話を書こうかと思いましたが、別に学院編に入ってもできるか。と思い行くことにしました。

ただ、キャラが全く足りそうにないので頑張って考え中ですが、充分に増えるまでちょいと時間がかかるかも?いいキャラとか考えつけば気軽に考えてもらえると更新速度が上がると思います。

多分次回は来週までにはあげられるかと。プロローグ的な話なんで。ちなみに結構時間が飛ぶと思いますのでご了承を。


今更ですが、感想で何人かの方が再開に喜んでいただいて嬉しかったです。返信はできていませんでしたが、この場でお礼を申し上げます。


あと、オオカミが食糧にならなかった理由に関してもネタばれになるかと思って応えれませんでした。話を挙げてから返信しようとは思っていたのですが……すみません

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