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第16話:火の精霊イフリート 後

.何もない空間に向き合うショーゴとイフリート。互いに獲物は持たず自然体で立っている。リンたちは邪魔にならないよう別空間からここをみている。


「行くぞ?」


「おう。負けねーぞ」

ショーゴの言葉に犬歯をむき出しにしてイフリートはこたえる。イフリートの言葉を聞くと同時にショーゴの周りにバレットが生み出され、イフリートに向かって放たれた。


「こんなんが通じるとでも?」

イフリートが手を横に一閃。ショーゴの放ったバレットは生み出された炎によって跡形もなく消し去られる。


「こんなもんか?」

イフリートは相手を馬鹿にするような笑みを顔に浮かべる。


「≪集まれ≫」

イフリートの挑発をスルーし一言。その言葉とともにショーゴのの手の中に風が集まりだす。それと同時にショーゴはイフリートに向かって走り出す。距離にして数メートル。子供の体であるショーゴにとって中途半端に詰めづらい距離だ。


「≪斬り裂け!≫」

ある程度距離を縮めたところでショーゴは腕をふるう。それと同時に放たれる風の刃。初級呪文である≪スラッシュ≫』である。射程範囲はバレットに比べると短いものになるが、その分障害物などがあっても使い方によってそれらを切り裂きながら相手へと使うことが可能な魔法である。


「っは!こんなのっ!」

それすらもイフリートは手を横に一閃して燃やし尽くす。まぁそんなのも予想の範囲内。本命は・・・


「≪アイオロス≫!」

イフリートがスラッシュを消しさるほんの少しの間に以前父親に対して使った槍を生み出す。


「おもしれぇ。なら私もだな」

そう言って手を前に突き出すと、イフリートの手に炎が生まれる。その中から出てきたのは一本の太刀。刃渡り2メートルほどの大太刀だ。


「はっ!」

ショーゴは後ろに浮かぶ槍をイフリートの左右から挟撃させる。さらに駄目押しと言わんばかりに無数のバレットを生み出して放つ。


「足りねぇな!」

しかし、それらをもイフリートは消し飛ばす。単純に一回転切りをしただけ。


その光景を見てもショーゴは怯えず突き進み、


「せいやっ!」

槍を振るう。風による補助も付き子供の体からは考えられないほどのスピードと重さのある一撃。

その一撃もイフリートはガードする。つばぜり合いになることはなく、威力を殺すようにイフリートが飛んでまた距離は離れた。


「≪荒れ狂う風!逆巻け!回れ!≫」

離れている間に手を上に向け風を集める。彼の手の上には暴風が集まり、眼を焼くような閃光が起こる。

イフリートは突然のことに眼をつぶり、守ろうとするもののその程度で防げるようなものではなく、目の前は真っ白に染まる。


「くっ!」

あれはなんだ!イフリートは眼をつむりながら思う。彼には風属性しかないはず。あのような雷や光属性のようなことができるはずもない。なのに何故……?

これにはこの世界ではない知識が必要になるので仕方のないことだ。空気というのは圧縮されることで熱を持つ。それによって白光が起きた。一時的にそれほどの現象が起こるほどにまで圧縮させ、簡易的な閃光弾にしたのだ。

その目論見は成功し、イフリートの視覚は封じた。そして、ショーゴの手の中にはいまだ吹き荒れる風の塊が。


それをショーゴは操り、


「≪ストーム!≫」

イフリートに向かって放った。






「いや〜まさかあんなに強いとはな!」

風の魔法の中でも上位に位置するはずのストームを受けたはずなのにピンピンしているイフリート。彼女は自らに勝ったショーゴの肩をたたきながら大声を出して笑っている。


「それで、どうなんだ?」

ある程度満足したであろうところを見計らってショーゴはイフリートに声をかける。元の目的はイフリートとの契約だ。それを忘れてもらっては困る。


「おう!大満足だ!むしろお前にならこの身を任せてもいいな!」

元々強い者が好きなイフリート。自らに勝てる人間など今まで存在することはなく、その初めての存在となったショーゴはさらに精霊王の契約者。シルフだったウィンも信頼しているので自分の身を預けることにまったく異存はなく、むしろ望んでやってほしい気分なのである。


「いいのか?」

イフリートともウィンと同じように契約できることは素直にうれしいが、ウィンとて3カ月ほど一緒に過ごし、ようやく信頼を得てしたもの。それをまだ一日も立っていないほどの時間しか一緒にいないイフリートにしてもいいのか。そのような不安がショーゴの中には存在していた。


しかし、その不安を消し飛ばすほどのイフリートは浮かべる。


「戦っている間に感じたさ。お前のこととかな。それにリンとウィンの二人もお前を信頼している。だから私は大丈夫だと思ったんだよ」

先ほどまで浮かべていた笑顔とは違い、綺麗な笑みを浮かべるイフリート。その表情と言葉の中にあったイフリートの気持ちをショーゴは感じ、


「わかった。こちらこそよろしく頼む」

自身にできる最高の笑みを浮かべイフリートの言葉に頷いた。



「炎の精霊イフリート。汝は我、ショーゴを契約者として認めるか?」


「ああ」


「では、新たな名を授けよう。汝が名はヒータ」

イフリートに新たな名・・・ヒータを名付けた時、ウィンの時とは違い自分の中にポウとなる暖かさをショーゴは感じた。


「おっし。これからは【ヒータ】だな。私の身はお前に捧げよう」

ヒータがそういうと、彼女は炎に包まれる。そして、その炎が晴れると黒の胸当てに同じく黒のミニスカート、ウィンと同じような外套を身につけていた。


「どうだ?似合うだろ?」

くるっと一回転するヒータの姿は確かに可愛い。


「ああ。可愛いよ」

のでショーゴは素直に感想をヒータに述べた。突如、ヒータは顔を真っ赤にした。どうしたのかと聞いてみると、


「い、いや・・・可愛いなんて言われたことがなくてな」

まだ赤みが抜けていない頬を指で掻きながらぼそぼそっと呟くように言う。ショーゴはそれを聞いて笑みを深めた。



「無事済んだようじゃな」

何もない空間に割れ目が生じてその中からリンとウィンが出てくる。


「お疲れ様です、ショーゴ」


「私にはないのかよ」


「あなたが言いだしたことでしょうに。ならば、それを受けたショーゴを労うのは当たり前でしょうけどあなたには必要のないことです」


「いや・・・まぁ・・うん」

イフリートはウィンにぼろくそに言われ意気消沈。いつもの快活そうな雰囲気からは真逆のオーラを放ちそうな勢いである。


「大丈夫か?ヒータ。ウィンもそんな苛めてやんなよ」


「苛めたわけではないのですが・・・すみません。今後は気をつけますね」

ウィンの返答にショーゴは苦笑いしながらヒータの頭をなでてやる。


「ん・・・」

それにヒータは気持ちよさそうな声を上げ、安心しきった幼子のような笑みを浮かべる。


その反応にショーゴは親が子をみるような表情になりながら、この空間から出るまで撫で続けていた。

.


いや、危なかった……。文章にするって難しいね!

さて、今回は一人称から三人称と一人称がごっちゃになった感じに変えてみました。どうですかね?変でなかったらこの形式で続けようと思います。


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