第15話:火の精霊イフリート 前
.今日も今日とて魔法の訓練。場所はいつものリンのとこ。監督はリン及びウィン。三人であーだこーだ言いながら話し合う。内容?もちろん魔法とかのことについて。
「ふむ・・・。ではショーゴ、そろそろ新しい精霊と契約するか」
ある程度話の内容に終わりが見えた頃、リンが突然そんなことを言い出した。
「え?もうやるのか?」
ウィンと契約して約三カ月ほど。もっと時間をかけて行くのかとばかり思っていたのだがそれこそ年単位とかそれくらい。
「それはあなたの習熟度の早さのせいですよ、ショーゴ」
俺の言葉にこたえたのはウィン。垂れ目でも何時も鋭く感じられるその眼には今は呆れたような感情が浮かんでいる。
「どういうことだ?」
「それはですねショーゴ。あなたは風属性に対しての融和性が高すぎるんですよ。たった三ヶ月で基本的な呪文全て覚えるってどういうことですか?ねぇ」
目が怖い。ハイライトが消えてるような気がするほどに怖い。
「落ち着け、ウィン。ショーゴがこういうのであることはある程度予想できたろう」
「リン、これはその予想をはるかにぶっちぎるほどにおかしいです。私は数年単位かと思ってたんですよ?」
「我だってそうじゃ。まぁ風に関してはほんとに高そうじゃったから他はこうはいかんはずじゃ」
「・・・そうであることを祈りますよ」
はぁ・・・とウィンはため息をつく。精霊にも呆れられてそのうえあんなに怒られるとか俺どうなってんだよ。むしろ俺がため息をつきたかった。
「まぁそういうわけじゃ。風はあらかた終わった。後はもっと改良を加えたりするだけ。なれば新しい属性にも手を出すべきと我は思うのだが?」
リンの言葉を聞いて、まぁそれでいっか。と思う俺は少々適当すぎるのかもしれないが、これが性分なので仕方がない。ひゃっほうキタコレ!みたいなことにはならんが、多少はテンションが上がるのもあるし。
「じゃ、やるか」
「うむ」
俺の言葉にリンは頷くと、前と同じ場所へと向かう。前の魔法陣のままでいけるようだ。
しかし今回呼び出す精霊はどの属性なのだろうか。そういや聞いてない。そう思って聞こうにもすでに呼び出された後だった。
「また少女・・・」
魔法陣の上に立っていたのはまたもや少女。歳のほどはウィンと同じくらいだろう。眼は紅色。ウィンの垂れ目とは逆でやや釣り上がった目元はどこか強気な印象を感じられる。髪は目と同じ紅い灼熱をほうふつさせるような真っ赤な髪をショートヘアーにしている。服は俺のいつも着てるジャージを真っ赤にしたものを着ていた。
どこぞの中学生か。と思ってしまう。
「ん?ああ精霊王か。久しぶりだな」
ポケットに手を突っこんだまま少女はリンに言葉を掛ける。
「ああ。汝も元気だったか?」
「まぁ私らに元気もクソもないだろうけどな」
「違いない」
そう言い合って二人して笑みを浮かべる。あの少女、格上とかそんなん考えない奴のようだ。俺と気が合うかもしれない。
「イフリート、少しぐらい敬語を使ったらどうですか?」
真面目な性格をしているウィンはそんな少女・・・イフリートって言ってたな。まぁ彼女にため息をつきながらそういう。あきらめ気味な感じが出ているのはこれまで何度も言ってきて駄目だったからであろう。がんばれ・・・。
「そんなん私に似合うわけないじゃん。考えてもみろ?私が敬語を使う姿をさ」
イフリートがそういうとリンとウィンは顎に手を当て、考えだした。ついでだから俺も考える。目の前の少女が目上の人物に対して敬語を使う姿・・・
「「「ぶっ!!」」」
全員5秒としないうちにふいた。いや・・・これは・・・
「いや・・・別に馬鹿にしておるわけではないぞ・・・くくっ」
「ええそうですよ。決してそんなことはありません・・・ふふっ」
せめて最後の笑いはなくそう二人とも。イフリートが顔を真っ赤にしている。羞恥からか怒りからか・・・両方だろうな。
「ええい!てめーら笑うんじゃねえ!ていうかその人間だれだ!なんでここにいるんだよ!」
おおう!イフリートは怒りからか髪が逆立って火の粉が周りを舞っている。もうチョイ怒ったら火の玉とかが飛んでくるのかもしれん。そう思ってリンに話を進めるよう目くばせする。
リンは俺の視線に頷いた後、イフリートを落ち着かせ話を始めた。
「なるほどな・・・」
リンとウィンの説明を聞いてそうつぶやくイフリート。ちなみに、全員地べたに座り込み、ウィンは女の子座り、俺、リン、イフリートは胡坐をかいている。ウィンと同じ性別だろうにこいつらはどうしてそんなに胡坐の格好のほうが似合うのだろうか。
「まさかこんな人間がいるとはなぁ・・・。世界は広いもんだ」
うんうん。と腕を組んでイフリートは頷く。ちなみにこいつも初めのウィンと同じ表情を浮かべている。
「で、大丈夫なのか?」
問題はここ。ウィンの時は特に問題なくスムーズに事が運んだが今回もそんな風に行くとは限らない。
イフリートは俺の言葉を聞いて少々考えた後、
「そーだな。別にいいぞ」
「そうか?なら「ただし!!」なんだ?」
「私と戦え」
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今回前後編に分ける気はさらさらなかったけど3000字超えるのが目に見えていたのでここまで。次回も1週間くらいで更新します。