fade1 遥かなる
別れの季節に 私は出会った
相手の名前も分からない それが〈恋〉という物なのかは分からないけれど
それが運命だったのは事実なのだろう―――――――
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fade1 遥かなる
「華乃、最近ボーっとしてない?大丈夫なわけ?ココ」
友人の桜井美鈴の声に気付き、私、冬咲華乃は自分の世界への帰還を余儀なくされた
「ココって?」机につっぷしていた重い頭を上げて私は自分の席の隣に立っている美鈴を見上げた
「ココよ、ココ」そういって美鈴は私の額を指ではじいた
「あだっ!」私は頭の痛みに耐え切れず、涙目になりつつも額をおさえて美鈴をにらみつけた
「自分の妄想の世界に浸ってにやにやしてるからよ、高ニ女子が妄想恋愛してどうするのっ!」
そう、美鈴の言うとおり私も美鈴も桜麗高等学校第ニ学年である。
が、しかし!
どうして高ニ女子が妄想恋愛をしてはいけないのかっ!?
そこが私には不思議で仕方ないのである
こぉんなに楽しいものなのに、みんながはまらない方が私には不思議でならないのだ!
「何よ、その何か言いたげな目は!」美鈴はプゥッと頬を膨らませて言った
「何かって!今私が考えてたのは妄想じゃなくて現実のことよっ!」これは事実だ。
断じて事実だ。断固事実だ。完璧な事実だ。
「あぁ~、またあの夢の王子様〈仮〉の話?聞き飽きました」美鈴はここで大きなため息をつく
「なによそれっ!しかも〈仮〉!?断固現実ですっ!それになによっハァッって!そんなにため息つくことないでしょッ!?」ハァッ!と私の息はすでにあがりそうになっている
「ホントに飽きないわねぇ、二人とも。私は毎日おんなじ会話ばかりで疲れたわ」そういって現れたのは、クラスメイトの岡崎薫。正真正銘高ニなのだが、私にはこの人が同学年だなんて絶対に信じられたものじゃない
だって成績優秀、容姿端麗、清廉潔白以外のどの言葉もあてはまらないようなこんな人、絶対人間じゃないっ!
私はそう思っていつも、彼女を「岡崎女史」と呼び、常に彼女の頭やお尻に触覚や尻尾が生えていないか、観察をしているのだ
「華乃さんの夢の王子様〈仮〉はいつ聞いても感動的よね」
むぅぅっ!?おのれも〈仮〉をつけるのかぁっ!?
私の中でしばし葛藤。
「薫もそう思うでしょ???私も!絶対無いわよね?あんな夢みたいな話」
美鈴は岡崎女史を薫と呼び捨てにする。恐るべし。
「岡崎女史…毎日聞いてたの?」
「聞いてたというか…聞こえてたって言うのが正しいんじゃないかな?だってクラス全員に聞こえるくらいの声であなた達が叫んでるんだもの」
さらば、私の大好きな静かな生活…と私は、静かに別れを告げた
「ってことは、夢の王子様〈仮〉のことはうちのクラス全員が知ってるってことになるわよね?」
まじですか!?神さまっ!私、恥ずかしくてもう学校にこられません~~~!!!
「そうね、みんな噂していたし」
―――これでお分かりいただけたと思う。私がいかなる学校生活を送っているかを
しかし、絶対に夢の王子様に〈仮〉をつけられるのだけは許せないっ!!!
その理由も含めて、次回語るとしよう―――
続く…
ハジメマシテの方も多いと思います、星塚です
きになるな、と思ってくださる方は、続きも読んでくださると嬉しいです、ハイ