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第95話

「今度の試合のルール……レギュレーションはある程度決まっている部分は海里から聞いたけれどまとめるとこうだな」

 ハリュウの言葉に合わせてモニターが動く。


・試合は4対4の混合戦闘、3本勝負

・体力が一定割合以上減ると強制ダウン、相手を全てダウンさせた方が勝利

・試合に時間制限は無し、インターバルは20分

・故意に相手を死亡させた場合は反則負けとする


 最後の文言が少しだけセイガの心に引っ掛かるが、概ね容認できるルールだ。

「体力に関しては全員が分かるような形だったよね」

 体力は戦闘開始のその都度、数値化されていて、観客にも分かるように各プレイヤーの上、情報欄に常にゲージで表示されるようだ。

「あはは、なんだかゲームみたいだね☆」

 ユメカの指摘通り、観客からしたらレアリティ溢れる派手なゲームを見ているような感覚だろう。

「その時のコンディションによって多少は上下があるとはいえ、体力は多い方が有利だし、強制ダウンにならないようにこまめに回復するのが大切だよな」

 勿論、回復が間に合わない程の大ダメージを受ければその時点で退場となるので回復と共に強力な攻撃を持っているものが強いと言える。

「回復はボクとゆーちゃんが引き受ける感じだよね?」

 それはいつもの4人のスタイルだ。

「ただ、数的不利になっても回復できるようにセイガも回復が使えるようにしないと駄目だな、お前は持久力が高いからって自力で回復しなさ過ぎだ」

「あはは、そうかもな」

 セイガは大ダメージを受けてもそのまま戦闘する場合が多いのだ。

 今回は判定で強制ダウンを取られてしまうので、いくら本人が平気でもキチンと回復をしないといけない。

「ユメカさんは逆に回復や防御だけではなく、攻撃も出来るようにならないといけないけれど……大丈夫ですか?」

 改めてハリュウが心配そうにユメカを見やる。

 ユメカは少しだけ口を(つぐ)むが、意を決した表情で

「大丈夫だよ☆」

 そう言って笑った。

 それはとても穏やかだけれど、強い意思を感じる笑顔だった。

「私ね、自分で色々考えたんだけれど、多分前の世界にいた時に何かトラウマになるようなコトがあって、人に向けて攻撃するのが怖いんだと思うんだ」

 そして覚えてないんだけどね、と付け加える。

「でも! これ以上そんなものに囚われるのは嫌だし、前にライブをやってね……これだって私にとっては聖戦、戦いなんだって気付いたんだ」

 ライブは楽しい、けれどもそれだけではなく、怖いし全力を出さないと前に進めない……ユメカの大切な力の源なのだろう。

 セイガはユメカのその大きな覚悟をひしひしと感じる。

「だから、断言は出来ないけれど、きっと戦えると思う……あはは、やってみせるでございますよ♪」

 頬を指で軽く掻きながら、ユメカは宣言する。

「それじゃあボクは……」

「メイ坊はもうちょっと体力つけておけ、下手したらユメカさんよりも体力無いんじゃないか?」

「うぅ……わかったよう」

 ライブに向けて、体力作りに勤しんでいたユメカに対して、メイも御業の修行は続けていたが、そちらは精神的な鍛錬が主なもので、体力の方はどちらかというと疎かになっていたのだ。

 とはいえ、試合までそう時間があるわけでもない。

「メイ、良かったら俺も手伝うから一緒に運動をしないか?」

 だから、この船内の時間も重要だった。

「ハイっ!」

 メイの嬉しそうな返事、その前向きさは偉いとセイガは感心する。

「最後にオレだけれど、完璧すぎて特に補強するところが無いんだよなぁ?」

 ハリュウの軽口、とはいえ確かにそれも一理はあるのでセイガ達には反論が出来なかった。

 しかし、ハリュウの心の中では今の先生である戦次長ターラの言葉が重くのしかかっていた。

 

『ハリュウ、お前は限界を超えないといけない』


「実際のところ、勝算はどれくらいあると思う?」

 そんなハリュウの考えを乱すようにセイガが尋ねてきた。

「あ~~~、オレは勝てると思うぜ?」

 それはハリュウの本心だった。

 それが分かったので、ユメカやメイも安堵の表情を浮かべる。

「このルールでは、状況にも因るけれど結局のところ、一番強い奴が最後まで残るのさ……爆発力のある海里やどんな手を使ってくるか分からないJも怖いけれど、この8人の中で最強はセイガ、お前だよ」 

 セイガの戦闘能力は、多くの強敵と戦ってきて相当高くなっていた。

 今ならば、おそらくハリュウ達3人が束になって戦っても、セイガが勝つだろう。

 それくらい、セイガ達の間には実力の差が出来ているのだ。

 それはハリュウとしては嬉しくない事実だった。

「体力回復をし損ねたり、それこそ4対1とかにさえならなければ、セイガを中心にチームワークを取れるオレ達の方が強い、海里達は元々は別チームの人間だからあまり連携は取れないと思うぜ」

 それはセイガも同感だった、海里達4人を見ていると、それぞれが個人のスタイルを持ってはいるが、協力している場面は殆ど見られなかったからだ。

 仲が良いのは海里と瑠沙くらいだろう。

「勿論油断は出来ないけれど、試合までみんなで精一杯頑張ろう」

 セイガの声に

「うん、ボクも今日から頑張って体力作りをするね」

「私もイメトレはバッチリだよ~うふふ♪」

「向こうに着いたら一回WCSの方式で摸擬戦をしてみようぜ」

 3人とも同意した。

 セイガはそんな大切な仲間を心強く思う。

 確かに戦闘力は自分が一番上だとしても、この仲間だからこそ自分は最高の実力を発揮できるのだと、実感したのだった。

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