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第93話

 すごく騒がしい。

 明るい笑い声が方々から聞こえる。

 そうだ、これはあの夜のことだ……


「どうしたの?セイガ」

 目の前にはユメカのキラキラした笑顔がある。

「はい、かんぱ~~い♪」

 ユメカが瓶ビールでお酌をしてくれて、そのまま勢いよくグラスをぶつける。

 セイガも気持ち良く飲み干した。

「あはは、いい飲みっぷりだねぇ☆」

「……本当におめでとう、すごくいいライブだったよ」

 ここは港街ファルネーゼの新市街にある酒場、ユメカの初ライブの打ち上げにセイガ達も招待されたのだった。

 ユメカはこの場の主役、ということであちこちのテーブルに回っては談笑をしていた。

 大仕事も終えて、気分もハイになっていたからか、疲れているだろうにその表情はいつも以上に晴れやかだった。

「ありがとう♪ それもセイガ達が楽しんでくれたからだよ あっはは」

 ライブはまさかの海里の爆弾発言もあり、騒然としてたのだが、その後はきちんと最後の曲も歌い切り、大成功と言える内容だった。

「いや、ユメカ達が素晴らしかったからだよ」

「うん、ゆーちゃんは偉かったよ~♪」

 メイはお酒を飲んでいないのだが、周りの空気に当てられたのか、こちらも上機嫌だ。

「今でコレだと、お酒を飲むようになったら大変だな」

「え~~? ボクは大人になってもお酒は多分飲まないよぅ? だってあんまりおいしくないもん」

 子供の頃に、面白がって少しだけ飲んだことがあるのだろう、メイは苦々しい顔つきになる。

「あはは、めーちゃんも大人になったらこの美味しさがきっと分かるよお」

「そうかなぁ?」

 ふたりは両手を組み交わしながらその場で楽しそうに踊る。

「でもゆーちゃんがダンス出来るなんて知らなかったなぁ」

「うふふ、振り付けは自己流だけどね~♪」

 セイガもこれは意外だったが、ユメカは歌だけではなく、ライブ中に独特な振りをつけては踊り、そこまで広いとは言えないステージ上を縦横無尽に駆け回っていたのだった。

「でも、あの振り付けちょっと変じゃね?」

 ダンスも上手で器用なハリュウからのツッコミ

「はは」

 セイガも、かつて見たレイミアのダンスに比べるとユメカの踊りは個性的というか、楽しい感じに見えた。

「む~~、確かに自分でも上手では無いって分かってるけれどぉ、可愛かったでしょ?……って今セイガ笑ったぁ?」

 ご機嫌ナナメになったユメカがセイガの鼻を指で押す。

「あ、いや可愛いというか確かに楽しそうだなぁと思ったんだ」 

「うん、ゆーちゃんすごく楽しそうだったよ」

「ありがと~、うふふ、やっぱり嬉しいなっ」

 再びユメカはメイの元へ向かって、ひしと抱きつく。

 そんな光景をセイガは羨ましそうにみつめていた。

「オレはそれよりも、あんなに沢山の歌を歌詞も間違えずに歌い切った方が凄いと思ったな」

 話を変えようとハリュウがライブで感心したことを言う。

 ハリュウも本当はユメカには喜んで欲しかったのだ。

「え?歌詞は結構間違ってたよ?」

 ところが、ユメカの返しは予想だにしないものだった。

「でもスゲー自信満々に歌ってたじゃん」

 セイガはレイミアの曲は覚えていたので、ユメカがライブ中に何度か歌詞間違えをしていたことには気付いていたが、確かにハリュウがそれに気付かない程、ユメカは堂々と歌っていたのだ。

「うはは、だって気まずくなって演奏が止まるよりも、心を込めて歌い続けた方がカッコいいじゃん♪……まあ、もちろん間違えないのが一番だけどね、ふふ♪」

 本番で間違ったら、気分が落ち込んでしまいそうだが、ユメカは持ち前の心意気で乗り越えていたのだ。

 そんなユメカはとても尊敬できるし、恰好いいとセイガは思った。

「いや~、ホント大きな失敗が無くライブが終わって良かったよ~~♪」

 ふとセイガとユメカの視線が合う。

 お互いにちょっと照れくさそうだった。

「あはは、号泣して止まらなくなったらどうしようとか思ってたんだよね、実は」

 それはあるかもしれない。

「その時は会場のみんなが励ますんじゃね」

「ダメ、それは嬉しすぎて逆に泣いちゃうから、はは」

 そんな中、メイが優しく、ユメカの肩を撫でる。

「ゆーちゃんがそんなに嬉しくて泣いてるんだったら、ライブが止まっちゃっても……きっとみんな許してくれると思うな」

「う~~、でもお金を取って見に来て貰ってる身としてはやっぱりちゃんとやり切りたいんだよね」

 メイの手に頬をつけながら、ユメカが囁く。

 その後もユメカが語り、みんなが笑い、ライブの話で盛り上がる。

 今でも思い出せる、これはそんな楽しい夜だった。 

 

 セイガが覚醒する。

「このスリープ装置というものは本当に凄いな」

 時間通り、快適な気分でセイガが装置から体を起こす。

 どうやらライブの打ち上げの時のことを思い出していたらしい。

 そんな内容も含めて、最高のコンディションだった。

 部屋の灯りは微かに朝の光のような色、きっと朝なのだろう。

 セイガはゆっくりと着替えると、簡単に食事を済ませて待ち合わせの場所へと向かうことにした。

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