第92話
宇宙は、思ったよりも明るいんだな。
セイガはそう感じていた。
遙か遠い、太陽からの光、それから7つの人の住む惑星からの光があるからだろうか、真っ暗な空間が広がりつつも、窓から見える先には幾万もの星々が映っていた。
ハリュウの話では、リージョンの他にもこの太陽系には幾つもの惑星やその衛星が存在するらしい。
そのような未知の世界、通常、人が生きていけるような環境ではないのだが、もし叶うのならば、そんな場所にも手を伸ばしたい。
そう考えながらセイガは窓から目を離し、部屋の中の面々を見つめる。
そろそろ、ミーティングの時間だった。
「さて、改めて説明するよ……ルーサーが」
「もう、またそのパターンなんだからぁ」
8人は別室、どうやら居住スペースらしい、そちらに集まっている。
こちらも殺風景な部屋だが、テーブルと壁にタンスのような物入れがあるのでちょっとだけ生活感があった。
「さっきカイリたんが言ってたけど、第6リージョンまではこの航宙船でも約80時間ほど、結構掛かるんですよね」
前に豪華客船で学園郷まで行った時もそれくらい時間が掛かったが、あの場合は船内に沢山の施設があった。
ここは8人で暮らすにはやや手狭なくらいだし、いくら外の風景が非日常的でもずっと眺めていればさすがに飽きそうな気はした。
「で、一番楽に過ごせるのは、スリープ施設を利用することです☆」
瑠沙の説明に合わせて、船体後方の区画が各自の額窓に表示される。
「これを使えば好きな時間、睡眠状態で過ごすことができるし、体調も装置が管理してくれるので快適なのです♪」
『おお~♪』
自然とセイガ達4人の歓声が上がる。
「勿論、途中で起きて何かするのも可能ですよ~、一応食事やトイレ、お風呂なども用意されていますし、リージョンとのネットワークは切れていますが、船内用のデータを使って映画やゲームを楽しんだりは出来ますしね」
額窓は普段なら常時各リージョンのネットワークと繋がっているのだが、ネットワークはリージョン毎に独立しているので、中間地点と言えるこの宇宙空間ではどちらのネットワークともリンクできないのだった。
「うわ、ホントだ、キナさんとの通信も圏外になってる」
「なので、皆さんがこれからどう過ごすかは各自の自由となります~」
「ま、ワイらは行きでもう宇宙には飽きたから多分ずっと寝ちゃうけどね」
海里が軽く手を振る。
「セイガ氏が構ってくれるなら夜通し遊んでもいいけど、ここは時間の感覚もマヒすんだよね」
確かに、時間の感覚というのは周囲の環境による影響が大きい。
この変化の少なさそうな船内でずっと過ごすのは、おもったより大変そうだ。
「一応朝昼夜と分かるように船内の灯りが自動で変化するようにはなってるんだけどね♪ そんな訳なので、分かんないコトについてなんだけど、あとは船内の案内を見てみてね☆」
「あ、全部投げた」
「だって~、私もそんなに詳しくないもん」
瑠沙が両手を上下に振って誤魔化す。
「あ、それと一応この部屋は共用だけど、向こうにそれぞれのお部屋もあるから自由に使ってね♪ プライバシー的な問題もあるもんね」
そうして、各自好きなようにするという方針の下、解散となった訳だが
セイガ達はひとまず……とある一室に集まっていた。
「で、これからどうするよ」
まずはハリュウが切り出す。
どうするというのは、今後の身の振り方についてである。
「まずは、みんな結構疲れていると思うから一度休むといいと思う、それから時間を合わせて対策を練ろう」
対策というのは、WCSについてである。
ここまで、移動する準備の方が忙しく、大切な試合についての話し合いが全然出来ていなかったのだ。
「そうだね……私の場合、WCSってナニか…そこから分かんないし」
「ボクも」
女性陣の知識はその程度だった。
「俺は一応自分で分かる範囲は調べてみたけれど、向こうの世界にとって結構大事なイベントらしいから、気を引き締めて行かないと駄目かもしれないな」
「そうなんだ」
一番戦いには消極的なメイがうっへりとする。
「ま、オレもそれなりに資料を集めてきてっから、とにかくどう戦うか考えようぜっ?」
「それは助かる」
「じゃあ……いつ対策会議はするの?」
宇宙にいるという興奮が一気に覚めたからか、ユメカは既に眠そうだ。
「明日の朝とかにしよう、スリープ施設があるとはいえ、規則正しい生活をした方がきっと心身にはいいと思う」
セイガの笑顔が眩しい。
「そだね」
夜更かし大好きなユメカはちょっと苦笑いしながらも肯定した。
「それじゃあ、また明日……ですね♪」
メイも眠そうに瞼を擦る。
そうして、セイガ達は一旦別れ、それぞれ宇宙での休息を取ることにした。




