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第69話

「さあ対決も山場!

 ここからフィールドの床は減っていき、フィールド自体も縮小します!」

 言われてみると、上空に浮かぶ立方体の壁面も微かに動き始める。

「こりゃあコレの出番かな、うふふ♪」

 ユメカは額窓から魔法の箒を取り出すとすっと跨いだ。

 魔法花火をパチパチと弾かせながらユメカは箒ごと夜空を舞う。

(……コレ……長時間は乗れないかも)

 少しだけ、身震いするユメカ。

 一方の瑠沙は背中に背負ったランドセルから勢いよくジェットを吹かせ滞空している。

「いよいよ本当の勝負、だね」

 瑠沙がユメカに近付きながら花火を何度も打ち出す。

「わおっ!」

 ユメカも勢いよく飛翔すると、花火を避けながら攻撃を始めた。


「激しい空中戦です!

 夜空に飛ぶふたりと

 七色の花火の応酬が繰り広げられています!」

 目まぐるしい戦い、ユメカはやや混乱しながらもどうにか箒を操り、攻撃を仕掛けていく。

(ユメカさん……思った以上にやる…でも!)

 上を取った瑠沙が一気に下降してユメカに肉迫する。

「きゃあ!?」

 ユメカは咄嗟に花火シールドを展開するが、瑠沙の勢いは止まらずピンボールのようにふたりは当たり壁際へと弾かれた。

「負けるもんかぁ!」

 ユメカは壁にぶつかるが、外に出るほどの衝撃では無かったので、どうにか踏み止まる。

 瑠沙もジェットで激突は回避して、再びふたりは対峙する。

 一瞬の沈黙

「瑠沙と一緒に踊りましょ!」

 決め手の掛け声と共に瑠沙が再びユメカにチャージする。

「お断り!」

 くるりとユメカは弧を描き飛び跳ねる。

 あまりの勢いに降り飛ばされそうになるが、どうにか両手と太腿に力を込めてやり過ごす。

 そして充分距離を取ると、勢いよくステッキを振り上げた。

「いっけぇ!」

 それに合わせて上空から幾つもの花火が流星のように瑠沙に降り注ぐ。

「うにゃ!?」

 瑠沙は後退しながら剣と銃で花火を打ち落とすが、一発が足下で炸裂してくるくると宙を舞ってしまった。


「瑠沙選手ピーンチ!

 立て直せるかっ?」

 目が回ってしまい、一瞬ユメカの位置を捉えられない。

 ユメカはその光景を見ながら……

 動くことが出来なかった。


「あれ?

 どうしたことでしょう

 ユメカ選手、急に動きが止まったぞ?」


 吐き気がする。

 空を飛んでいて、酔ったから……

 ではない。

(やだ……やっぱり…攻撃、できないよ)

 自分でもどうしてなのか分からない、強烈な拒絶反応。

 これは殺し合いなんかじゃない。

 楽しい花火大会の余興、たんなるイベントだ。

 だから大丈夫だと思っていたのだが……

 勝負の決着が見えてきた今、ユメカは怖くて動けなくなった。

「ユメカっ!」

 離れた場所なのに、不思議とセイガが自分を呼ぶのが聞こえた。

 すごく心配そうな声、きっと顔も青ざめているだろう。

 心臓が痛い、こんなの……

「いくよーーー!!」

 みるみる瑠沙が近付いてくる、早く逃げないと

 しかしユメカは震えるばかりだ。

 そのまま瑠沙の花火を受け、ユメカは大きく飛ばされる。

 どうにか片手で箒を掴みぶらさがるが、このままでは危ない。


「今度はユメカ選手の大ピンチだ!」

 勿論このチャンスを瑠沙は逃さず、一気に距離を詰めようと空を疾走する。

 ユメカは落とさずにいた右手のステッキを握り直す。

 大きく振りかぶり、渾身の攻撃を放とうと……

 するが、右手は石のように固まってしまった。

「必殺! 花火剣!!」

 ドオンと大きな音を立て、瑠沙の放った剣撃はそのまま花火の炸裂となりユメカを箒ごと夜空へと巻き上げる。

 そして、フィールドの壁を越え、大輪の花火とユメカが上空へと舞った。


「決まったぁ!

 勝者は瑠沙選手!

 そして今年の対決は科学花火軍団の勝利となりました~♪」

 セスの勝利判定、特設フィールドの外に上昇したユメカはどうにか気を失わないよう体勢を整えようとする。

「……あれ?」

 そんなユメカを支えたのは一瞬で上空まで飛翔したセイガだった。

「あはは……負けちゃった」

 一応、大会の救護班もスタンバイはしていたのだが、それよりも速く、セイガがユメカの下へと向かったのだ。

「ユメカは頑張った……とても偉いよ」

 セイガもまた、ユメカの異常に気付いていたから、ただ優しい言葉を掛ける。

 そんなふたりの様子を、勝者であるはずの瑠沙は、少し寂しそうに見上げるのだった。

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