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第6話

 次の日、セイガ達4人は学園「4‐17支部」に来ていた。

 セイガ達の住む場所から一番近くにあるこの学園は、小高く広い丘陵の上に建っている。

 小さなひとつの街と言ってもいいくらいの広大な敷地に幾つもの施設があり、勉強、運動、芸術など様々な用途で使われている。

 そのうちの一つ、教職員が働く中央棟の入口にセイガは立つ。

「ここに来るのはあの時以来だな……」

 普段のセイガは勉強をするための講義棟や訓練をするための演習場、それからユメカとよく話をする演舞場や食堂、購買などが主な利用場所なので、学園の運営を担っている中央棟にはあまり馴染みが無いのだ。

「うふふ…そだね、あの時のコトを思い出すとちょっと緊張しちゃうね」

 それはセイガとユメカが学園長に、とある事変の報告をした時の話、メイとハリュウはその時はいなかったのだが、後にその秘密と共に話を聞いたのだった。

「さあ、どうやら面白い話のようだし、さっさと行くぜっ♪」

 ハリュウが先陣を切って歩き出し、皆がそれに続く。

 昨夜、学園の教師であるレイチェルに聞いた話では、今回は学園長から直々にセイガ達に頼みがあるそうで、その内容というのは

「学園側の代表だなんて…ボクはちょっと緊張しちゃうなぁ」

「あはは、そうだね♪」

 近日、学園に招かれるとある人物との案件だった。

 長い廊下を微かに笑いながら歩く4人。

 今日は広い廊下を沢山のスタッフや生徒が歩いている。

「俺が適任というのは…戦力的な意味なのだろうか?」

 護衛任務のような、そんな風にセイガは考えていた。

「どうだろうな?単純な護衛なら別にもっと専門の人員がいるだろうからな……おっと、到着したようだぜ?」

 ハリュウが前方の大きな扉を指差す。

 廊下の突き当り、そこは掛けられたプレートからも分かる通り学園長室だ。

 セイガは大きく息を吸うと、ドアをノックした。

「……どうぞ、入って」

「失礼します」

 両開きの扉を両手で大きく開けて、セイガがまず入室する。

 天井の高い、広い部屋の中には3人の女性がゆっくりとした面持ちで立っていた。

 中央にいるのがここの学園長である『アザゼル・スキエンティア』、理知的な瞳に眼鏡をかけた、40代ほどの見た目のスーツの似合う貫禄のある姿。

 その隣りに、添えられたように立つのは秘書の『リンディ』、見た目はクールそうな子供、といった風だが学園長の護衛と多岐に渡る雑務をひとりでこなす、とても優秀な女性だ。

 今は大きな黒いマントとローブを纏っている。

 そして、3人目の人物が嬉しそうにセイガ達の方へと歩いてきた、

 長く青い髪に、綺麗な青い瞳、豊満な体のラインがよく分かる白いスーツ姿、短めのスカートと黒いタイツの間の領域もまたとても魅力的なこの女性こそ

「ありがとう♪ よく来てくれましたね」

『レイチェル先生』

 セイガ達とも馴染みが深い『レイチェル・クロックハート』だった。

 セイガにとっては初めてこのワールドに再誕した際に案内をしてくれた存在であり、ワールドについての知識を講義でたくさん教えてくれる恩師だ。

 ユメカもメイも仲良くしているし、ハリュウに至ってはワンチャン狙っている様子が見て取れた。

「いやホント、いつ見てもレイチェル先生は美人ですね、その心身とも綺麗な姿に心が洗われますよ!」

 そう言いながら、ハリュウがレイチェルの両手を握る。

「うふふ……お世辞は嬉しいけれど、まず今日は学園長の話を聞いてくださいね」

 やんわりと手を放してレイチェルが傍らに控えた。

「それでは、話はある程度レイチェル先生から聞いているとは思いますが、改めて今回の用件を説明します」

 学園長の声に、場が一瞬で鎮まる。

「今度、『第6リージョン(シックスト)』から大切なビジターが来訪するのですが、そのガイドをセイガさん達4人にお願いしたいのです」

「しっくすと?」

 セイガには一瞬分からなかったが、すぐに『世界構成力』で内容を理解した。

 このワールドには生命の住む惑星が7つ存在している。

 それらを『リージョン』という風に分けて呼んでいるのだ。

 セイガ達のいるこの星は『第4リージョン(フォース)』と呼ばれている。

「つまり他のリージョンからの来訪者となります、リージョン間では情報の規制があり、それぞれが独自の生活をしていますから…だいぶ毛色の変わった存在と言えるかもですね」

 シックストがどんな世界なのか、セイガには分からなかったし、どんな人物が来るのか…セイガはワクワクが止まらなかった。

「実は先方がセイガさんをガイド役として指名してきたのです」

「ええ? それってもしかして?」

 ユメカが恐る恐る学園長を見やる。

「そうですね、おそらくセイガさんが『スターブレイカー』であることを知ってのご指名でしょう」

「うはは……そうですよね」

「そうか…」

 セイガも神妙な表情になる。

「そして先方からは自分達が4名での来訪となるのに合わせて、ガイド役も計4名にして欲しいという通達がありました」

 控えていたリンディが補足説明をする。

「なるほど、それでオレ達4人が適切ってことになったんだな?」

「そうなります」

 表情を見せずにリンディが頷く。

「4人……どんな人達なんだろう?」

「そうだよねー、スゴイおじいちゃんたちとかだったら対応も全然違うもん、うふふっ」

 ユメカは変な想像をしたのか、笑みがこぼれている。

「確か、向こうの世界での実力者の女性なのですよね?名前は確か…」

 レイチェルの問いに秘書が答える。

「『龍宮殿 海里』、まだ若いながらに相当なプレイヤーで今回はとある大会での優勝権利としてこのフォースへの来訪を希望したそうです」

 リージョン間の移動は、大きく制限されていて、特定の許可と手段が無ければ殆ど不可能なのだ。

 今回はシックストの上層部から学園へと打診があり認められた、希少な例である。

「こっちに来たいなんて、しかもセイガを指名するなんて、明らかに目的がある感じですよね?」

「絶対そうだよ」

 全員の視線がセイガに集まる、セイガは恥ずかしそうに頭を掻くと

「それでも、俺は構いませんよ」

 そう、ハッキリと告げた。

「ふふ、そうだよね、別に悪いコトばっかりじゃないかもだし、アレですよね? ガイドっていうくらいだからこっちのいい所とか案内するのが仕事ですよね?」

「そうですね、滞在期間はひと月程ですが、その間にこのフォースの観光もしたいそうです」

「観光も、ね……まあ、向こうの意図が分からない以上、こちらも普通にガイドの準備をするくらいだろうしな…楽しく行こうぜ?」

 ハリュウがキラリと笑いながらグッドサインを送る。

「私もサポートしますし、学園も出来るだけバックアップするわ」

 レイチェルがセイガに手を伸ばす。

「ありがとうございます、それじゃあ…よろしくお願いします!」

 セイガがその手を大きく握り、この案件は成立したのだった。

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