第58話
そんな事情は知らないメイ達は、ベッドの上にお菓子と飲み物を並べ、談笑を続けている。
ちなみに、セイガが用意した今回のホテルも、かなり高級なランクの宿だったのでこれらの品々も全部ルームサービスで運ばれたものだった。
なお、3人ともお酒は飲めない、あるいは苦手だったのでソフトドリンクである。
「あっはは、でもそれ絶対変態だよ~」
メイは素面の割にはかなりテンションが高くなっている。
「だよね~! 私もコレ以上はマズいと思ったんで逃げたんだけどね♪」
瑠沙も無邪気な笑顔だった。
「それにしてもルーサさまがぶじでよかったです~」
ルーシアだけはいつも通りの表情だったが、やや眠そうな雰囲気だ。
「それはイイとして、そろそろ瑠沙は白状した方がいいとボクは思うな」
「なにをですか~?」
何故か先にルーシアが反応する。
「なにをですか~~?」
そしてルーシアの声を真似ながら瑠沙がとぼける。
すごく似ていてメイもルーシアもびっくりするほどの声色だ。
「だって瑠沙がわざわざボク達を誘ったのって絶対何か意図があるんでしょ?」
「そうなのですか~?」
そしてまたルーシアが先に反応する。
「まあ、メイのいう通りなんだけどね」
瑠沙が短めのズボンの先を撫でながらそわそわとする。
ふわふわの生地がベッドの上で揺れていた。
「あのね、出来ればでいいんだけど……セイガさんのコトを教えて欲しいの」
俯き、上目遣いでメイを見やる。
メイは、それがちょっと意外だった。
「瑠沙は、見た感じ男性との接し方が上手だし、今までだってセイガさんに色々と手を出してたからボク達に助けを求めるとは思わなかったよ」
メイの正直な気持ちだ。
「うん、自分で言うのもアレだけれど、私大抵の男性はオトす自信があるよ」
瑠沙がゆっくりと
「ただ、それは本当の自分を隠して、相手の求める女の子を演じているからで」
素直に言葉を紡ぐ
「だから最初はセイガさんも簡単にメロメロに出来ると思ってた」
「うんうん」
メイが頷く、ちなみにガールズトークということで、マキさんは既に引き出しに仕舞われている。
「でも、今は全然無理……というか逆に私がセイガさんのことをもっと知りたいというか、でも自分から直接は聞けないというか……」
「それでボク達から聞きたいんだね」
「そうなの、恥ずかしいけどメイならセイガさんのコトを色々知ってるかなと思ったんだ……メイもセイガさんのこと」
「わ~~~わ~~~~!」
瑠沙の口をメイが慌てて塞ぐ。
「むぐぐ」
「それではわたしは?」
ルーシアの問いにようやくメイの手から逃れた瑠沙が
「あてにしてない」
とそっけなく答えた。
「そうですか~ しょんもりです~」
ルーシアが可愛らしく項垂れる、それを見て慌てた瑠沙が言い訳っぽく
「ただっ、ルーシアには最初変な態度を取っちゃったし、出来ればちゃんとお話ししたいなって思ってたの、ホントだよ?」
そう付け加えた。
「そうなのですね~、きづきませんでした~♪」
それを聞いて、ルーシアはナイトキャップを直しながらえへへと微笑んだ。
「それで……聞いても、いいかな?」
小首を傾げて、子兎のような可愛さで瑠沙がメイに迫る。
「うん、……いいよ?」
そんなメイの声を聞いて、瑠沙は飛び跳ねるように喜んだ。
その後、セイガについてアレコレ……
本当に細かい所まで瑠沙はメイとルーシアから話を聞き続けた。
あまりに真剣だったので、メイ達も頑張って答えていたが、流石に疲れてきたので一度その話は中断して、今のところ3人はまったりとお菓子を食べている。
「まさかボク達3人で恋バナをするとは思わなかったよ~」
我ながら、珍しいことだとメイは感じていた。
「こいばな……はじめてしましたが、たのしいおはなしですね~」
「ルーシアだって恋とかしたコトあるでしょ?」
少し前にルーシアの実年齢を知った瑠沙が聞き返す。
「わたし、『こい』というものはよくわからないのです」
素直に、ルーシアが答える、その言葉に嘘は見えない。
「うそっ? だってもう200年以上は生きているんでしょ?」
「はい~」
こくりとルーシアが頷く。
「しかしわたしはせいしんてきなねんれいは……きっとおふたりよりもおさないのです」
ルーシアの見た目は10代前半位だが、ルーシアが言うにはどうもそれよりさらに幼いというのだ。
「なんだか不思議だね」
「そうですね、ながいねんげつをいきていますから、いろいろなちしきやけいけんはたしかにあるのです」
かつては乳母として、幼少時のエンデルクとテヌートを育て上げてきたルーシア。
「でも……きもちはまだ、わからないことがいっぱいなのです」
心の成長はまだ、途上なのだ。
「それじゃ、ルーシアもこれからきっと恋とかするんだね」
メイがそう告げる。
「そうなのですか?」
ルーシアがきょとんとする。
「でもルーシアはてっきりエンデルク王のコトが好きなんだと私は思ってたよ」
瑠沙の言葉に、ルーシアが手を振る。
「いえいえ~、エンデルクさまはたいせつなかたですが、すきというのとはちがうとおもいます~」
これもきっと本心なのだろう、ただメイはちょっとだけ違和感があった。
「分からないのに、どうして違うって言えるの?」
「?……ああ、たしかにそうですね~それはわからなかったです」
ルーシアも咄嗟に否定した自分が分からなかった。
「ふふふ、自分でも分からない感情、それってもう『恋』、なのかもよ」
瑠沙が楽しそうにルーシアの鼻を指先でなぞる。
「ふにゃ~ ルーサさま、くすぐったいですよ~」
そのまま、ルーシアと瑠沙がじゃれあう光景を見て、メイもなんだか嬉しくなったのだった。
ちなみに
「なにぃ!? 私を置いてパジャマパーティーなんて酷いよう?!」
と、エンデルクとパフェを食べて帰ってきたユメカも交えたパジャマパーティーは朝方まで続いたようだった。




