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第48話

『ええええええ!?』

 ふたりの声が白い部屋に響く。

 セイガも最近、上野下野の所から小説なり漫画なりを借りて色々読んでいたのでこの部屋の指し示す意味は何となく理解出来た。

「セイガくん、コレ……どうしよう?」

 耳まで真っ赤にして瑠沙が上目遣いでセイガを頼る。

 セイガから見下ろすと、その潤んだ瞳と同時に、背が低いのに豊満な胸の谷間がちらりと見えてしまい、セイガは慌ててこれからどうするか考える。

「これは……無理矢理壊してでも脱出しないと」

「でもきっとこういうのって魔法で出られないように細工をしてるだろうから力ずくで出ようとするのは危険じゃないかなぁ」

 確かに瑠沙の言う通りだった。

『……』

 ふたりとも、あまり魔法については詳しくないので、下手に手を出すのは危険に思えた。

「カイリたんだったら何か分かったかもだけど、う~~~ん」

 つけ耳の方のウサギ耳をぴょこぴょこ動かしながら瑠沙が部屋の周りをうろうろと歩く。

 こんな変な状況だが、瑠沙はそんな姿も可愛らしかった。

「これを作った者の思惑はなんなんだろう……」

 人を追い詰めて、その行動を楽しむ悪趣味な人間なのか、あるいは何か他に意味があるのか、セイガには分からなかった。

 けれど、どうにか瑠沙を守ってここから脱出しないといけない。

 セイガはそこに集中している。

 一方瑠沙は…

「セイガくん、私ね」

 もじもじしながらセイガの肩にそっと手を置く瑠沙、温もりが伝わってくる。

「セイガくんとだったら……いいよ?」

 そう、小さな声だがハッキリと、そう告げた。


 場所は変わって、ここはカラメッテ博士の研究塔。

「くくく、ルーサちゃんは演技派だねぇ、ぽっくん興奮しちゃうよぅ」

 カラメッテの前にある大きなモニターにはセイガ達の状況がリアルタイムで流れてきていた。

「いやはや、コレは思った以上に楽しそうやのう」

 カラメッテの隣にはウブスキー博士もにやにやしながらモニターを見入っている。

 そう、あの部屋はカラメッテの実験用のもの、しかも瑠沙は全部知りつつここにセイガをおびき寄せたのだった。

「おうおう、セイガくんもすっかり赤くなってるねぇ、こりゃまだDTかな?」

「ふむ、初体験がこの場所とは不憫だが、お相手が瑠沙嬢ならば大当たりやろ」

 カラメッテが今回実験しているのは文字通り

『魔法の掛かった状態で○○〇部屋に閉じ込められた男女がどんな精神状態、及び行動になるかの検証』

 だった。

 それを瑠沙が自ら実験体として志願したのだ。

 勿論、それをセイガに明かせば実験は失敗してしまうので、あくまで内緒なのだが、瑠沙の演技が上手すぎるのでセイガがそれに気付く様子はない。

『……駄目だよ、流石にそんな理由でしていいことではない』

 セイガの声、音声も勿論記録されている。

「強がっておるが、内心エッチな気分になってるんだろうなぁ…にやにや」

 カラメッテのモニターにはふたりの精神状態や魔力などを計測する機能も備わっていて、随時ふたりの状況を表示している。

 それによると、セイガはかなり気分が高揚していて、魔力の値も上昇を続けている。

 一方の瑠沙はまだ冷静で、ただ魔力の方は少しずつ上昇していた。

「ふむふむ、瑠沙嬢もセイガ氏に釣られてか、強度があがっとる、面白いな」

 一応学術的に分析する両者、しかし内心は……

「ほらほら、早くやっちゃいなよぅ」

「どんな風になるか楽しみや」

 この後の展開にワクワクしているゲスに過ぎなかった。


 セイガは大きく息を吸う。

 恥ずかしくて目の前の瑠沙をみることは出来なかった。

 この部屋にいる間、何か体調にも異変というか、妙な感覚が残っていた。

 命の危険は少ないようにも思えるが、それでも大変な状況にあるのは間違いない。

 瑠沙はいつの間にかベッドに腰掛けている。

 そちらを見てしまうと、視線的に胸の谷間とか、短めのスカートの奥とか、さらに状況を悪化させる要因が予想できてしまう。

 もう一度、深呼吸。

 だが、よく考えると空気すら甘い。

 これは瑠沙の匂いなのだろうか?

 本当にセイガは困惑していた。

(セイガくん……初心(うぶ)だなぁ)

 瑠沙の方は冷静に、セイガの挙動を楽しんでいた。

 勿論カラメッテ達に行為を見られるのは恥ずかしいが、一応数値などのデータだけ計測して、音声や映像の方は残さないよう、約束はしていた。

(でも、あのふたりが約束を守るとは思えないにゃあ)

 どこかで計測しているだろう装置をこっそり探しながら瑠沙は溜息をつく。

(まあ、しゃーないかー)

 それでも、セイガと上手くいくためなら仕方のないことだと自分に言い聞かせる。

(あ、でもココってこーゆー場所に必要なシャワーもトイレも付いてないんだ)

 そのことに瑠沙が気付く。

(デリカシーが欠けてるよぅ、もし……?)

 意識して初めて、瑠沙は自覚してしまった。

 今、結構危険かも知れないということを。

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