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第15話

 それから、海里達4人は船の出発の日までエンデルク邸にて過ごすことと相成ったのだが、何故かセイガもエンデルクの所で過ごす羽目になっていた。

 理由は単純に海里と瑠沙が願ったからだ。

 最終的に、泊まってくれないなら自分達がセイガの家に居候する、と迫られ仕方なくセイガの方が折れたのだった。

 エンデルク邸には沢山の客室があるので、セイガと海里達はそれぞれ個室を貰って持ってきていた荷物なりを開けていた。

 さらにすぐ長期の遠征、さらに船旅ということで、次の日にはセイガが港街ファルネーゼを案内して海里達はさらに土産や服など様々な買い物をしていった。

 上野下野のいる楽多堂にも立ち寄り、珍品とその講釈を聞いたり。

 リチアが経営する名物の食堂、オリゾンテで昼食を食べたりして、5人はこの一日で近代と中世が融合したような街を大いに楽しんだのだった。

 ちなみに、この日ハリュウは再びターラと訓練、ユメカとメイとレイチェルは3人で何やら出掛けているようだった。

 丸一日一緒に居たので、セイガもかなり海里達の人となりを知れた気がした。

 海里はリーダー気質だが、意外とずぼらというか大雑把な所があったり、高貴な雰囲気を持ちながらも話すと結構気さくな人に見えた。

 瑠沙はずっと可愛い姿をセイガに見せてはいたが、ふとひとりで物陰にいたりして、何となくセイガはその点が気になっていた。

 フランは色々なものに興味が無いのか、文句は言わないが特に自分から何かするようなことはなかった。

 Jは一番フリーダムで、自分の欲求を優先するタイプにセイガには見えた、ただ思った以上に性的なこと以外には常識的な人物のようだった。

 それぞれ、癖は強いが、セイガとしてはきっと仲良くできる。

 そう考えていた。

 そして、一夜明け、船旅の朝がやってきた。  



 まだ、太陽が水平線のすぐ上に見える頃、セイガ達は港街の一番大きな埠頭に集合していた。

「うわあぁぁ、おっきいねぇ、すっごいねぇ! うふふ、コレに今から乗るなんて、なんだか夢みたい♪」

 大きく両手を広げて、ユメカが目の前の船の大きさを測る。

 全長399m、乗船可能な人数は1万人を超える…

 豪華客船「ティル・ナ・ノーグ」号はワールドでも最大級の船だ。

 まるで都市がまるまる入っているかのような迫力の姿

 この船は世界一周のクルーズの途中で、丁度ファルネーゼから学園郷へと本日から移動するのだ。

 さすが店主と言うべきか、或いは最初からこの豪華客船の存在を知っていて、学園郷を薦めたのかも知れない。

「これだけデッカいと、遊べる場所も多そうだよね、楽しくなってきたじゃない」

「私は船酔いがちょっと心配だったけど、あんまり揺れ無さそうで安心かな」

 海里と瑠沙、客人のふたりも満足そうだ。

「コレは面白いコトになりそう☆」

「カイリたん、どうしたの?」

 含み笑いをする海里に瑠沙の澄んだ瞳が注がれる。

「何でもない、それじゃあ早速乗船かましますかぁ!」

 そのまま、海里を先頭にシックスト組が階段を駆け上がっていく。

「あの者達、終始このような感じだったな」

 エンデルクがセイガを見やりながら嘆息する、どちらかというと静寂を好む若き王にとって、騒々しい客人と過ごしたこの二日間は大変だったのだろう。

「自分は皆思ったより明るくて助かりました、楽しんでくれているのだなと実感できました」

 客人の4人は意外とセイガに協力的だった。

「セイガは女性陣にモテモテだったんだってね、ルーシアから聞いたよぉ…ふふ」

 横のユメカに肩を突かれて、セイガはどきりとした。

 やましいことは何もしていないのだが、何となく居心地の悪い感じがしたのだ。

「ふ~~~~ん」

 メイの方はそれだけ言ってセイガを見上げる。

 セイガは底知れぬ圧をふたりの笑顔から感じていた。

「ま、誰とでも仲良くなれるのはいいこった、オレ達も行こうぜ♪」

 ハリュウに押され、セイガが逃げるように階段を上がっていく、それにユメカとメイも続き、最後にエンデルク達3人が乗り込む。

「それにしても、レイチェル先生は残念だったね?」

 そう、この場にレイチェルと上野下野の姿は無かった。

 朝早いので、店主や知り合いの見送りはやんわりと断っていたのだが、同行する筈のレイチェルに関しては急遽学園からの仕事が発生して出発には間に合わなかったのだ。

「ああ…そうだな、でもレイチェル先生も仕事を済ませたらテレポートゲートで船まで直行すると言っていたから…きっと大丈夫だよ」

「うん、そうだよね」

 セイガの言う通り、船賃はレイチェルの分も支払っているので、特殊な乗船ということで船舶会社側にも話はついている。

「でも、出発って絶対ワクワクするから、先生は味わえないのが…ね」

 外の景色を見ながらメイ、海鳥が街に向けて飛び立っている。

「仕方あるまい、気になるならばお前達が今の気持ちを語ってやればいいだろう」

 エンデルクが船内の通路に降り立つ、そんな姿も様になっていた。

「ふふ……ありがとね、エンちゃん」

「問題無い」

 そのままエンデルクは船内に入っていき、従者のふたりが続く。

「ユメカさま、またあとでおさんぽしましょうね♪」

「うん、まずはみんな自室に行かないとね♪ うふふ」

 そうして、セイガ達はそれぞれの船室へと向かったのだった。

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