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第14話

「さて、ある程度みんなでの話もしたことだし、そろそろ次の予定を決めたいと思うんだ」

 セイガが、歓談をいっとき止めて、そう切り出す。

 あの後、ユメカとルーシアの間でちょっとした問題もあったが、そのからは一同和みつつ、立食形式でアレコレと話をしていたのだ。

 メイはJを異常に警戒していたが

「ワガハイ、神に誓って処女相手に同意なく無理矢理は致しませんのでご安心を」

 という言葉を一応信じて、少しだけ態度を軟化させていた。

 とはいえ、ユメカの隣りで隠れるような素振りはしているのだが、それは仕方のない話だろう。

 メイとしては出来ればセイガの後ろに隠れたかったのだが…

「予定って、何のコトですかぁ?」

 セイガの傍にはずっと瑠沙と海里がいて、近付けなかったのだ。

「セイガ氏にさっき聞いた話だと、私たちをどっか面白い場所に連れてってくれるんでしょ?」

「それはすっごい楽しみだね☆」

 そう言いながら瑠沙がセイガの腕に(もた)れ掛る。

 先程から瑠沙はことあるごとにセイガに近付きボディタッチなどをさりげなく行っていた。

 セイガは、そんな行動に慣れていないので、かなり内心では動揺していた。

 そして、そんなセイガを見るのは、なんかちょっとモヤモヤするユメカだった。

「ええと……俺達も初めて行くのだけれど、ここからある程度遠い有名な場所を観光のメインの場所として考えているんだ」

 誤魔化すように、瑠沙から離れながらセイガが前に出る。

「儂は基本的にはお留守番じゃが、ここにいる面々は全て旅行に行く手筈となっておるな」

 店主はエンデルク達のいない間の邸内の管理と、楽多堂の仕事があるので、時々様子を見に来るだけで、学園郷には一緒には行かないのだ。

 逆にレイチェルは極力みんなと一緒に行動するが、学園の仕事などがあった時などは一時的に離れる可能性もあるとのこと、但し彼女は一瞬で遠くまで移動が可能な『テレポートゲート』を使用できるので距離はそれほど問題では無かったりする。

「はい、そこでその場所までの移動手段なのですが、一応2つ用意しているのでどちらがいいかみんなの意見を聞きたいのです」

 セイガが自分の額窓を取り出すと、同じ情報が全員の額窓に共有された。

「ひとつ目は飛行機、空の旅ですね。これなら5時間程で目的地に到着します。利点は勿論早く着くこと、それから空からこのワールドの景色を見られることですね」

 海里達にとっても飛行機は身近なのだろう、それぞれ頷く。

「もうひとつは豪華客船を使った海の旅です。時間は3日ほど掛かりますが、折角ならゆっくり優雅な方法もありかなぁと思っています」

 豪華客船、その言葉に知らなかった面々が反応していた。

「船も考えてたのかよ、オレは飛行機好きだけど……そーゆーのもイイな、豪華客船ってことはカジノとか遊びの要素もあるんだろ?」

 そんなハリュウの問いに

「ああ、色々なショーや施設も入っているらしい」

 セイガが嬉しそうに答えた。

「我等は時間を考えると飛行機の方が好都合だが、まあどちらでも構わん」

 これまた珍しく、エンデルクが折れている。

「セイガ氏としては船旅がおススメってわけね?」

 セイガの話し方で察したのか、海里がセイガに顔を近づける。

 とても、いい匂いがした。

「ああ…そうだな、一応過去に小さな船での冒険はしたことがあるけれど、豪華客船というものは初めてだから気になってる」

「でも、3日もすると飽きちゃわないかなぁ?」

 瑠沙の指摘ももっともだった。

「私たちはもう、どちらでも楽しめるよう意見を合わせてるから、お客様4人が好きな方に決めちゃってねっ ははは♪」

 そう、すでにハリュウ以外の面々でその点は話し合っていた。

 セイガ達の中には船に弱いメンバーはいないようだったので、どちらになっても大丈夫な筈だった。 

「フランとJはどう思う?」

 海里の問いに

「ワガハイはどちらでも…愉しみ方は幾らでもありますからな、うひひ」

「フランもどっちでもいいや」

 ふたりは特に意見は無いようだった。

「そっか、……じゃあねぇルーサ―、ちょいちょい?」

 あとは瑠沙の意見だが、海里が何やら瑠沙に耳打ちすると、途端に瑠沙の兎耳がぴょこんと跳ねた。

「うん、私も船旅でいいよ☆」

「はい決まりね、あとのことはお任せしていいんでしょ?」

「ああ、勿論だ」

 そうして、意外と簡単に移動手段が決まった。


「……ねぇ?」

 宴もだいぶ進んだ頃、瑠沙がくいくいとセイガの服の脇腹の部分を引いた。

「?」

 セイガはそのまま、部屋の壁際の方へと瑠沙と向かう。

「どうしました?」

「あのね……私、ちょっとなれなれしかったかなぁ?」

 ちょっと不安そうな瞳で、瑠沙がセイガを見上げる。

 その表情にセイガはどきりとしてしまった。

「ええと、びっくりはしたけれど…悪い気はしなかった、かな?」

 セイガの言葉に瑠沙の笑みがこぼれる。

「よかったぁ♪ あのね、セイガくんのコトはカイリたんから聞いててね、きっとすごく優しくて強い人なんだろうなぁって思ってたの、それで実際逢ってみたら想像以上にカッコよくて……はしゃいじゃったんだぁ…ゴメンね?」

 可愛らしく舌を出す、そんな行為も魅力的だった。

「ははは、ありがとう……自分ではそうは思っていないけれど、褒めて貰えるのは嬉しいよ」

 そんな、一見仲睦まじい光景を少し遠くからユメカとメイが見ていた。

「うわぁ…なかなかレベルの高いアプローチをしてくるなぁ、あの子」

 ユメカの溜息、メイはセイガの姿に不安を感じていた。

「セイガさん……ああいう女の子が好きなのかなぁ?」

「う~~ん、どうだろ? 近くにあんな感じ…とはいえアッチは残念な子だけど積極的にセイガに好意を寄せる人もいたけれど、セイガって意外と流されないというか自分の意思は変えないようなタイプだと思うよ?あはは」

 ユメカとしても、セイガがあっさり瑠沙に惹かれるのは、違う感じがしていた。

「そうだよね、セイガさんは真面目だもん」

「それにあの瑠沙さんは多分、狙って行動しているからなぁ、セイガもそのうち相手の考えに気付くんじゃないかなぁ?」

「でも……セイガさんって結構鈍い所もあるよ?」

「あはは……そうだね」

 そんな女性陣ふたりの視線にセイガは結局気付いていなかったのだった。

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