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第13話

 衝撃的な邂逅から数時間が経ち、学園での手続きなり説明などを終えた面々は、とある館に集まっていた。

 そこは綺麗な広い庭園、邸内の部屋の数も多く、まるでお城のような豪華さを誇っていた。

 その中でも大掛かりなパーティーを開けそうな大きな部屋にセイガ達4人、海里達4人、それにレイチェルと上野下野が集められている。

 それぞれ、まだ固いところもあるが、何とはない話を交わしていた。

 一方こちらは同じ邸内での一室

「エンデルク様、準備が整いましたよ?」

「分かった、それでは王が参ろうか」

 片方は意志の強そうな青色の瞳をした青年。

 サラサラの金色の髪、すらりとした長身でありながらも引き締まった肉体、一見して高級なものだと分かる服装、そして容姿はかなりの美形の部類といえるだろう。

 もう片方はかなりの長身、烏の濡れ羽のような黒髪と、白い肌から映える紅い瞳が悪戯そうに光る黒いスーツの男。

 主従の関係なのであろう、ふたりは静かに階下の客室の前へと向かう。

「エンデルク様、参られまして御座います」

 わざと無礼にも聞こえる敬語で従者の男がドアを開ける。

 セイガ達の視線が集まる中、エンデルクが颯爽と中に入った。

「皆の者、よく来たな」

 言葉はそれだけだったが、エンデルクのオーラがとても強く、ハリュウや店主などはノリで

「はは~!」

 とひれ伏してしまいそうな程、その存在感は大きかった。

「ふ~~~ん?」

 そんな中、海里が値踏みするようにエンデルクを見やる。

「……なんだ?」

 エンデルクもその視線を感じていた。

「あっはは、凄いじゃない、本物の王様に会えるとは思わなかったわ♪」

 海里が快活に笑い、エンデルクの警戒も解かれた。

「ふむ、お前もどうやら酔狂でそのような高貴な身なりをしているわけでは無いようだな?」

 そしてエンデルクにしては珍しく、褒めるような口振りだ。

「まあね、私も伊達で『女帝』のPN(プレイヤーネーム)を頂いてるわけじゃないからね!」

 王冠をくいと掻き上げる動作は一見ワイルドだが、妙に威厳もあった。

「ぷれいやーねーむ?」

 初めて聞く言葉にセイガが首を曲げる。

「あ、そっか、第4リージョン(こっち)の人はPNってわかんないんだっけ?だったら自己紹介も兼ねて説明するわ……ルーサ―が☆」

「ええっ?」

 いきなり指名されて瑠沙の兎耳がぴょこんと跳ねる、どういう仕組みなのか、あのつけ耳は感情に伴って動くらしい。

「あわあわ、……こほん♪」

 この場の全員を見渡しながら瑠沙が声をあげる、ちなみにこの場で一番背が小さいので子供が周囲の大人を見上げるような、そんな姿勢も愛らしい。

「私たちのワールド、第6リージョンではWCSという有名な競技があるですが、その参加者を基本的にプレイヤーと言います♪」

 両手を上げながら瑠沙が続ける

「その中でも、強くて広く活躍しているプレイヤーには特別な称号というか通り名を持つことが許されていて、それがPNなのです☆」

「なるほど」

 セイガが頷く、実力者とは聞いていたがおそらくそれのことなのだろう。

「確か、皆さんPN持ちなのですよね?」

 セイガ達よりは事情に詳しいレイチェルだ。

「そう! 私がさっき言った通り『女帝』、最強のワイに相応しい名前やね」

 えっへんと海里が胸を張る、ちなみに海里の胸はとても大きいというわけでもないが、綺麗なラインを魅せていた。

「私は『白兎』♪ WCS内ではチームを組むことも認められていて私は『SOラビッツ』のリーダーでもあります、てへ☆」

 瑠沙の説明に海里が合わせる。

「私自身は一匹狼だけれど、私を崇拝し、支援してくれる家族のような大きなチームが別に存在するわ……名前はまだナイショね♪」

「ワガハイはチーム『特殊性愛同盟(マニアックス)』のリーダー、PNは『道化』で通しておりますな」

 Jが恭しく一礼した後、フランが前に出る。

「フランは『ジャイアントバスターズ』のリーダーなんだよ?PNはね…『魔獣』って付けられちゃったんだけれど、フランそんなに怖くはないよ?」

 フランの言葉に、他3人が沈黙している。

 どうやら、4人とも大きなチームを率いるような存在、それだけの実力があるということだろう、セイガは改めて相手の戦力を計った。

「うふふ、そっかぁ…みなさんお強いんですね、コレなら道中は安全そうだね♪」

 ユメカが何となく空気を読んで無難な発言した時

「みなさま~ おちゃのよういができましたよ~♪」

 ドアが小さく鳴って、小さな影が部屋に入ってきた。


 それは、可愛らしい少女だった。

 年の頃なら十四~五くらい、緑色の長い髪はうなじの所で丸くまとめられ、華奢な体躯には、黒と白を基調としたクラシカルなメイド服が良く似合っている。

 羽根のように軽いその小さな少女は赤茶色の純真そうな瞳で客人を見回した。

「きょうはいい茶葉がてにはいったんですよ~ どうぞのんでみてください~」

 木製で彫刻の入ったティートローリーを運びながら、メイドの少女が甲斐甲斐しく皆にティーカップを渡していった。

「ふむ、これで全員が揃ったな……それでは改めて名乗ろう」

 エンデルクが赤く燃えるようなマントを翻しながら宣言する。

「我の名は『エンデルク・ノルセ・プライム』、前の世界、トレシア王国の王だ。今回はこの屋敷を客人に提供するので、滞在中は好きに暮らすがいい」

 海里達は結構長い滞在期間となるので、相談した結果、エンデルクの屋敷を使う算段となったのだ。

「それからそこにいるのが庭師の『テヌート』と乳母(ナース)の『ルーシア』だ、滞在中に困った事があったらその者達に聞くといい」

「テヌートと申します、以後お見知りおきを」

「ルーシアです~♪ なんでもきいてくださいね?」

 いつの間にかエンデルクの左右に控えていたテヌートとルーシアがそれぞれ頭を下げる。

「ナースと言いましたがそちらのお嬢さんは看護婦さんですかな?」

 興味深そうな瞳のJ、看護婦という言葉にアクセントというか、愛が込められていた。

「いや、我の幼少期からの世話係だ」

 ワールドでは、見た目と実際に生きている年数が合わないということが結構あるのだが、おそらく幼少期というのは元の世界の話だろう。

 海里達の視線がルーシアに向かう。

「わたしは、聖竜族というとくしゅなしゅぞくなので、一族のなかではまだまだこどもですけれどもう200年いじょうはいきているのですよ~」

 えっへんと小さな胸をそらせてルーシアが説明する。

 その姿を特別な意味で見据える存在がいた。

 瑠沙だ。

(この子……確実にルゥを脅かすような存在になるわ!)

 ほぼ同じ身長なので、真っ直ぐに瑠沙とルーシアの視線が合わさる。

(名前も似ているし、何よりその…声)

「……あなた」

 瑠沙は敢えて可愛らしい声でルーシアを指差す。

「はい、なんでしょうか?」

 応えるルーシアの不思議そうに聞き返す声もとても可愛らしい。

「……私は絶対にあなたには負けないんだからねっ」

 何をかは言わずに瑠沙が宣言する。

「ほえ?なんのしょうぶかはわかりませんが…」

 その時、ルーシアの視線が瑠沙の胸元に注がれる。

 身長、体格は殆ど一緒のふたりだが、胸の大きさだけは圧倒的に瑠沙が上だったのだ。

「わたしも……まけたくないです~!」

 バチバチと視線がぶつかり、ふたりの背後に兎と竜のオーラが見えるような、そんな光景だった。

「うふふ……あれ?ルーシアがそんなコトいうなんて珍しいね♪」

 妙に微笑ましいふたりの姿を眺めつつユメカ、ルーシアとは親友で付き合いも長いからこその言葉だったのだが

「そういういみではユメカさまも敵なのです~ ぷんすこ~!」

「えええっ?」

 どうやらさらにルーシアの逆鱗に触れてしまったようだった。

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