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第99話

 ジャンキー細田とはその後は一旦別れることになる。

 理由としては

(わたくし)は今度の試合でも実況を務めますから、あまり一方に加担するのはフェアでは無いでしょう」

 というわけだ。

 それでもスタジアムの手配から、バアクの紹介、そして仲介など本当にお世話になりっぱなしでセイガは感謝しかない気持ちだった。

 セイガ達は何度も摸擬戦を行い、色々なパターンでの戦術を練っていた。

 無論、これを過信することは危険でもあるが、得るものはやはり大きい。

「ベリィぱああんちっ!!」

 隙をつきユメカに近付こうとした偽瑠沙にユメカの赤く輝く拳が炸裂する。

 動きの速い偽瑠沙を捉えられるようになったのは単純に凄いがそれよりも……

 人形とはいえ、ユメカが攻撃をするようになったコトが大きな進歩だった。

 ユメカの主な攻撃手段でもある<夢空(イマジナリィ)>は彼女の想像が直接具現化する能力で、同じ技でも毎回必ず同じように発動するとは限らない。

 しかしその分、予測不能な攻撃が可能なため、戦闘に慣れている者ほど、寧ろ見極めにくい方策となっていた。

 それからメイもまた、体力作りの成果が出てきているのか、長期戦でもへこたれずに戦えるようになっていた。

 集中したり、大技を放つとすぐにバテていたメイだが、その成長はメイの自信に繋がっている。

 セイガも簡易ながら、自分と仲間を癒す剣技を覚えたので、ただ前に出るのではなく、周囲の状況を前よりも気にするようになった。

 ハリュウは、見た目は変わらないが、どうやら何か考えがあるらしく、ひとりでいる時はずっと瞑想するかのように静かにしていた。

 そんなシックストでの日々の中のある日、セイガ達はとある場所にお呼ばれされていた。


「うわぁぁぁ! すっごい立派なビルだね☆」

 ユメカが見上げるのは高さ70m程、市街地の一角に建つ黒いビルだ。

 けして圧倒的に大きいものでは無いが、周りのビル群と比べて不思議と存在感が強い印象がある。

「うはは、ようこそ私の『不夜城』へ!」

 海里はいつもとは少し印象の異なる、シックな黒いドレスを着て、ビルの入口で待ち構えていた。

「不夜城か……いいね、確かになんとなく雰囲気を感じる」

「でっしょ♪ ここがワイらの城だかんね、夜は夜でまた煌々としててカッコいいんだから」

 褒められて嬉しいのか、海里がセイガの背中をバシバシ叩く。

「今日は改めて、私の誘いに乗ってくれてあんがとね」

 照れくさいのか、海里はそのまま不夜城へ向かい歩き出す。

 一同が入ってまず驚いたのは、1階には複合商業施設さながらの色々なものが入っていることだった。

「ライブハウスに劇場でしょ?、コンビニやゲーセン、寿司屋に酒場もあるで」

「へ~、ここだけで生活できちゃいますね」

 メイの言う通り、外に出るまでもなく暮らしていけそうな雰囲気、人は少ないが、皆こちらを遠目に見ている。

 海里はそんな人達に手を振りながら説明する。

「ここはワイら専用だからね、気心知れた面々だけで引き籠りまくれるなんて、まさにオタクの夢だと思わない!?」

 不夜城は海里の自宅であるだけではない、海里を慕い、サポートをしているチームメンバーの大半もここで暮らしているのだ。

「あはは♪……確かに、なんかワクワクしちゃうね」

「それにしてもここまで大きいビルを建てられるとか、WCSの賞金って半端ないんだな」

 感心のしどころは様々だが、セイガ達にとっても不夜城はいい場所に見える。

「ふふん、ここを建てるまでには他にも会社を作ったり色々あったけどね、とにかく私と赤虎隊(しゃっこたい)が凄いってことだよね~」

「しゃっこたい?」

 初めて聞く名前にセイガが首を傾げる。

「あ、言ってなかったっけ?ワイの大切な同志にして家族みたいな存在、それがチーム『赤虎隊』さ♪」

 高らかに叫ぶ海里に合わせて、周辺にいた人達、つまり赤虎隊のメンバーが拍手をする。

 確かに海里はWCSに於いては単体のプレイヤーだが、それをサポートするチームが存在することは聞いていた。

 こうして、直接見るとまた違った印象、とてもアットホームなものをセイガは感じた。

「特に会わせたい奴らがいるからさ、まず話はそこでしようよ」

 そうして、セイガ達は海里に案内されるまま、上層の一室へと向かった。


 不夜城は全部で19階、下層は商業施設や各メンバーが働くオフィス、中層はメンバーの部屋が続き、上層には海里の仕事部屋など、そして最上階が海里の自室となっている。

 セイガ達が通されたのは上層の応接室ともいえる場所であり……

 そこには既に先客がいた。

「ども、赤虎隊のリーダーさせて貰ってます、『ジオッタ』です」

 最初にセイガ達に近寄り挨拶をしたのはこの場で一番体格がいい二十代半ばほどの好青年だった。

 続いて前に出たのは、眼鏡をかけた知的な雰囲気の男、ジオッタと歳も近く仲がいい感じだ。

「俺は『マユカゴーシュ』、よろしく」

 その後ろには穏やかな雰囲気の中年の男性がいる。

「はじめまして、『ヌクミズ』というものです、長旅ご苦労様、海里様の相手はさぞ疲れたでしょう?」

「あ~、ヌクミズ氏ひどい~」

 笑う面々、とても仲が良いのが見て取れた。

 そして、ヌクミズの後ろには隠れるようにセイガ達を見るもうひとりの小柄な女子がいる。 

「わわ、わたしは『ユワリ』デス……よろデス」  

 大人しい性格なのか、短い髪の少女はそれだけ言うと再びヌクミズの背中に隠れてしまった。

「こいつらが赤虎隊(うち)のトップメンバー、通称四天王さ♪」

 誇らし気に海里が4人を見回す。

「正直その名称はいささか恥ずかしいのですけどね」

 ヌクミズの苦笑

「大体『赤虎隊』ってネーミングもちょっと古臭いよなぁ」

 ジオッタの愚痴にマユカゴーシュも頷く。

「うわ、みんな裏切りやがったな!」

「……わたしは海里様のネーミングセンス好きです、敢えて漢字を多用するところとか赤が好きだからそこは拘っているところとか、オシャレにしたい時は英語を使ったりもするところとか……すいません」

 ユワリは思ったより饒舌に話してきた。

 そんな海里達の様子から、信頼関係の深さも分かる。

「あはは、凄く仲良しなんですね♪」

「そうだろ、自慢の仲間さ」

「俺達としては『ファン』と『推し』みたいな関係ですけどね」

 海里は笑顔のまま、マユカゴーシュは真顔で説明する。

「え?家族じゃん?」

 横を見ながら海里が右手でツッコむ。

「まあ、そうとも言えますが、あんまり近すぎてもいけない気がするんですよ」

 あくまで海里をサポートして戦力的に支えるというのが赤虎隊のメンバーの総意なのだろう、海里はそれを聞いて一応頷いた。

「ま、そんな感じでフォースでセイガ氏達が自分らの大切な仲間を紹介してくれたようにさ、私も教えたかったんだよ……こいつらをね」

 海里の満面の笑顔、レプリカントのことを話していた時とは対照的だった。

「ちなみにWCSに出れるのはプレイヤーだけだけど、赤虎隊には『普通の人間』もいるんだぜ?」

 シックストでは一般的には『プレイヤー』というのはWCSの選手のことを指す。

 本来の意味、『真価』持ちである『プレイヤー』と作られた『レプリカント』のことをレプリカントは知らないからだ。

 だから敢えて海里は『普通の人間』という言い方をしたのだが、セイガ達はその話が出るとは思わなかったので、かなり驚かされた。

「そうなのですね」

 セイガが四天王を見やる、彼等は当然プレイヤーだろう。

 ただ、海里の言葉をあまり気にしていないようでもあった。

「聖河さん、あまり心配しないでくださいな、うちらは世界王の支配体制に屈しても悲観してもいませんよ?」

 ヌクミズがゆっくりと前に出る。

「海里様の願いを叶えるために、うちらは存在しているのです……どうか、海里様のお話しを……本心を聞いてはくれませんか?」

 そう言って、ゆるりと頭を下げる。

「おいおい、今日は正直そこまで話すつもりは無かったんだけど?」

 逆に海里の方が焦っている。

「初めて会いましたが、彼等になら伝えても構わないとうちは判断しました」

「そうだな、ルーサ―や俺達以外にここまで心を許している海里様を見るのは珍しいよ」

 赤虎隊のリーダー、ジオッタも同意見、おそらく赤虎隊全体も同じ気持ちだろう。

 マユカゴーシュとユワリもそれぞれ頷いている。

「あ~~~」

 海里は頭を抱えるが

「ヨシッ 俺も女だ、いい加減腹を括るよ」

 顔を上げ、貫くようにセイガをみつめる。

 それは妖艶なほど美しかった。

「話を……聞いてくれるかい?」

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