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諏訪見町のわんこたち、時々ねこ  作者: 竹 美津
わんこやにゃんこ達のお話:本編
9/24

ホシのカナタ


カナタって遠いこと。手を伸ばしても触れないこと。


ホシの家は賑やかだ。五十鈴の布団で寝てたら玉子焼き、朝ごはんの匂い。

一から六までごろっと兄弟、5合飯でもまだ足りない。ホシはまだ、食事の椅子に届かない。


カナタはどっさり家にある。

テレビの台もお菓子の棚も、下駄箱の真ん中から上も、洋服ダンスのハンガーも。


「ホシ、どした。何かとるか?」

「あん。たくあん。」


最初が返事で次はカナタだ。

四海ニイがぴらっと一枚、ホシのお茶碗に入れてくれた。

「五十鈴、俺にハムくれ。お礼として。」

「おあよ。」


五十鈴はホシの人だ。だから時々、こんなで朝から決闘だ。

四海の茶碗には梅干しが三つ。


「みっつはねーべ!」

「ハムもうない。」


言って最後のハムを食べながら、今日の五十鈴は、ぼんより、眠たげ。

ホシはカリコリたくわん噛み締め、耳を片方ぱたっと伏せて、両方の顔をパタパタと見た。撫で撫でと、三州のでっかい手が頭を混ぜた。


がっこへいく。五十鈴はホシの手を握って、道をゆっくり歩いていく。

五十鈴が一ならホシは三、歩幅のタララ、ト・タララ。ホシはとっても忙しい。


鳥が飛んでく。

茶色の雀。追えば五十鈴の周りを、きゅうとまるして、生け垣の向こうへアーチ。


五十鈴が、雀だ、と言ってホシに笑った。

尻尾ふりふり、嬉しの揺れ揺れ、ああカナタ。


あたまなぜなぜ、ほっぺをぺろりとしたいのに、五十鈴はカナタ、ホシの手にまだ届かない。


おっきくなったね、って皆が言うから、きっとごはんを、もっとたくさん、ホシならすぐに届くはず。


タンスや椅子は後でいいから、五十鈴のカナタに頑張ろう。


にこにこぱたぱた、今日も学校で、からあげ、たまご、もちろんハムも、たくさんもらってホシは頑張る。


「良く食べるなーホシ。」

「あん。」


五十鈴もほら、笑って。

ホシを待ってる。

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