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諏訪見町のわんこたち、時々ねこ  作者: 竹 美津
わんこやにゃんこ達のお話:本編
7/24

2人何かを待つねぐら:ハイクロ、野良No.2になるサクナリと出会う

本日2回目の更新です


灰黒のハイクロがねぐらに戻る。

月光ひんやり毛皮を照らして、闇よりほんの少しばかり、浮いた輪郭そろりと紛れ。今居た空気を残す。気配。


すん、と鼻を持ち上げて、伝わる、混ざる、工場の裏、木屑のこなこな。ここはハイクロの、大事なねぐらだ。


煙草の煙、の匂い。誰だ。


雌?かもしれない。ハイクロ達は揺らいでいるから、繁殖期までどっちかとも、分からないのも少なくない。


うるるる、る。


警戒にうるめく。向こうは向こうで、ハイクロの匂いを、嗅ぎあてて、ひゅと息飲んで、ひたり、動かず。間、間、間を置き探り宵闇、ちりり光った5つ。ハイクロと相手の目、そしてもう一つは。

動く、煙草の火、見えた!


小さいのだ。でも強い。


「誰。」


ハイクロ誰何する。


けほ、こほ。


返事は咳き込み。吸ってないのに当てられた。

すっと近付き、ぱんと叩けば火が飛ぶ、くるりと赤く尾を引き流れ星。

じりっとにじり消す。

力さんの工場が燃えたら、酷いじゃないか。


ねぐらに寝転び、頬杖ついて、ひゅひゅと引く息、咳は止まらず。

うん、げほっ。


「が、返してたばこ。」


図々しい。


「でてけ。」

「やだあ。」


「ナンデ。」


だってハイクロの場所だ。匂いで分かるだろ、他の犬のものだって。奪うなら、戦ったっていいけれど、だって工場の力さんが、野良でも吹きさらしじゃ、可哀想だって、ハイクロに作ってくれたんだ。

工場の端っこ、畳にお布団、一斗缶。それにお気に入りの。


「あはは!なんで?」


くふくふ、ぴたぴた。

ちっさいからってずるい。ハイクロは、ちっさいのには寛大だ。だって死ぬし。

目の前のはそうでもないが、やりすぎた時のぶったおれ、松坂さん家の煩い雄。ちっさいパピヨンぐったりパピヨン。挑まれ危うく警察沙汰。

ハイクロは焦った。それ以来、ちっさいのには寛大なのだ。


「•••なんで、ハイクロのねぐら!」

「たばこだからさあ。」


たばこ〜?


火がね。けへこほ。

ちっちっ、とライター。くしゃくしゃの箱。

雨降ったとき、ねぐらがないと、消える。たばこ。


「吸える?」

火の向こう、吸い口寄越す。

ピッと取り、すくっと吸って、「ゲホッ、がっ、ごほ、くふっ!」ありゃ。


「あう。やっぱね。」

「•••なんでたばこ。」

「ひみつ。それあげる。」


たばこ。

けほこほ。咳もいがらっぽく、うう〜と耳が下を向く。

貰い物、くしゃくしゃの箱のたばこは、力さんにあげよう。ハイクロは片手に火のついたたばこを持て余し。とりあえず、一斗缶の切った穴の下、灰を掻き分け道つけて、新聞紙、木っ端突っ込みたばこを落とした。

火が、ぽぽぽ、めらりと燃えてゆく。


「ラーメン食う?」

「くー。」


ひくん、と相手が震えて火を見てる。いや、もっとその上か。上手く火が着く。もくもく燻る。ずっと、ずっと見てる。


「何?」

火って見ちゃうよな。

ハイクロ、視線に聞いてみた。


「あたシ、サクナリ。」

「ハイクロ。」


つう、と目が追う。

「煙。」

「ああ。」


うふんと鳴いたサクナリは。


「ハイクロ、ずっとノラ?」

「うん。」


だと思った。あはは!


「うれしょん出るよ。会うと。」

「ええー!?」

ああ〜んて。なるから。

くふふ、ふ。なんて笑うので。


どきどきハイクロは正座して、ずずいっとできたラーメンを、サクナリに差し出した。

「う、うれしょん?」


「うん。あとねー、ごろってなる。」

う〜んのああ〜んできゅんきゅんのぱったぱた、だよ。


おおお。

ラーメン食べ食べ。


その日からサクナリは、ハイクロのねぐらに住み着いた。


「それは返して。」

「う?」


お気に入り。兄弟の匂いつき破れクッション。

「いーよ。」

「うん。」


でっかいのとちっさいの。仲良く一畳。


2人、何かを待つねぐら。


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