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諏訪見町のわんこたち、時々ねこ  作者: 竹 美津
わんこやにゃんこ達のお話:本編
6/24

きっと最後でうまくいく:ハイクロ


ハイクロは灰黒だ。

父親がきっと黒毛の犬だろう。だって母さん犬が、濃いミルクの色だからだ。混ざったかどうか、兄弟達は皆、白黒ぶちの短毛だった。


一人でっかいハイクロは、乳のみの時も最後の順だ。今ではハイクロもでっかくなったし、母さんミルクの乳もひっこんで、胸に顔突っ込んでむぎむぎ押しても何も出ないが。その頃ハイクロがそうすると、ミルクの底まで飲んでしまって。だからハイクロの順番は、いつも最後でうまくいく。


ハイクロの塒、破れたクッションに顔を寄せると、兄弟達の匂いがする。くんと鼻鳴る匂いで好きだ。でももう、皆、いない。いつかぱらぱら、尻尾ふりふり、誰かの家に住み着いた。

会えば挨拶するけれど、繋ぐ手の先、耳の先、向いた隣に立つ人に、胸がひらくのはまだハイクロには分からない。はやく見つかれば良いねって、皆が言うけど、ハイクロの番は最後だ。まだまだ時間がかかるかもしれない。


ハイクロだけじゃなくって、人だって良く待っている。バス停の前、あの行列の中に、素敵な匂いの誰かが、いるかもしれない。そんな、ちょっと期待に、どんなかそわそわ、たまには怖い顔をして。


ハイクロの母さんは千知、と書いてミルクという名だ。恥ずかしいからミルクと書けずに、前のパートナーって人がつけたらしい。母さんミルクが恥ずかしいからか?母さん野良だったのは、ハイクロが生まれる前からだ。


少し前に、その母さんミルクは新しく、口説きにきた青鼠色の警察官て人についてった。

母さんミルクはもうハイクロより小さく縮んでしまったけれど、それはハイクロが大きくなってるそうだ。

一番素敵ないい時に、全部ぜんぶの心を持ってて、それから持たせてくれる相手がいなくっては、可哀想だと母さんミルクは鼻つけて。しきりに頬を舐めてくれたものだが、仕方がない。ハイクロはもう大人だ。

売れにくい雄犬だ。


二度呼ばれるのは素敵な事で、母さんミルクのふらふら、匂いに酔って気持ち奪われ足取りに、撫でる人は隣町。今は最初ほど、酔い酔いしてないけれど、ふんわりはたはた、尻尾ふりふり、嬉しいの母さんミルクに、ハイクロは独り立ちってやつをしたのだ。


ああ、ハイクロ達は無くすことこそ恐ろしい。だからたまに顔見に、ハッピーフェイスに手を振りに行く。


毎日だってバスは来る。乗ったり降りたり、ハイクロが、停留所のしるしの丸よりおっきくなるまでに、恐ろしい、無くしを含んだ人ってやつが、やってくるなら。


わくわくと、そして不意打ちねらうよに、そしらぬ顔して、ほんとは怖くてひくひくしてても、最後はきっと。


最後は、ハイクロの番で。

きっと今度もうまくいく。

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