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諏訪見町のわんこたち、時々ねこ  作者: 竹 美津
わんこやにゃんこ達のお話:本編
23/24

那緒は三日月に笑う3


一晩、ゴロニャンと寝て起きて。

ワタクシは、高瀬の司のとこへ行く。

用意をしてる。


ジャーッ、ぷくぷくぷく、くつくつ。

厚焼きたまご。

一夜漬けのかぶ。葉っぱも美味しい。

お味噌汁は赤味噌。すこうし白味噌入れる。司は好きか、どうか。智久はどっちかどっち。

ソーセージも焼いた。

お豆ごはんに海苔。トマトにぶろこりバター醤油。たっぷり。


「勅使塚、頼むわ。」

「お任せ下さい那緒様。おかず、お味噌汁のタッパーはクーラーボックスに全て入ります。あちらに行ったらグリルと鍋で温め直せば完璧です!」


ふんふん。ご飯はまだ、ほかほか。

ご飯の冷めない距離だわよ。

ワタクシ、猫だけど。カールの看取りまで、朝ごはんから夕餉の支度、お家の事を、せっせと覚えた。カールは死ぬまで、最後まで、喜んでくれたわ。今でも、そうよ勅使塚と食べてる。

何でもやるわ。

"the way to a man's heart is through his stomach"

胃袋を掴め!ってやつ。

智久のおかあさん、やるなら那緒は、せっせと愛さねば。


身だしなみも、バッチリ。

カールは着物が好きだった。智久、落ち着いた、ワンピースならどうかしら。好きかしら?

割烹着も、ビシッと白よ。


勅使塚がえっちらおっちら。クーラーボックス。

ワタクシはおひつを抱えて、高瀬の家に、いざ!





キーキー声が叫んでる。

知ってる。あれは広丸の千代子。

ご近所中に丸聞こえよ。

縁側、ドシドシ踏み鳴らす音、近付いてみれば、猫たちを、箒でもってぶっ叩き、追いやりシッシと鬼の千代子よ。


だけど箒なんて痛くないもの。

猫たちは、ふわぁ〜あ、と欠伸なんてして、ちょちょっと避けては、ニシシシ、笑ってた。

「あ、ナオのボス。」


千代子を止めて、わたわたと、後ろから箒掴んで前に出て、司は猫たちに。

「やめて下さい千代子さん!……猫ちゃん!今は逃げて、逃げなさい!猫ちゃんたち!……猫は何も悪いことをしていないのに、叩いてまで追い払わなくても良いでしょ!」

「何言ってんのよ!ここは私の家よ!猫なんか入れさせないわよ!」


あれが司。

ヒョロリと長い背。メガネは丸だわ。和よね、和な顔。カールと全然違う。

だけど、ああ。


ぅなぁ〜うん。ビビビの尻尾。


ワタクシが、待っていた。

ナニカはここに、誰かはここに。


すすっと近づき、おひつを縁側へ。

「アンタ、何よ!この家に一歩でも……!」

「千代子さん!やめて!」


いいによいが、するわ。

あっあ〜んの、うっう〜んの、尻尾をフリフリしそうなによいが。

だけど。ワタクシは2度目だから、慣れているの。我慢が効くわ。

泣きそうな智久が、先よ。


智久は、猫たちを庇っている。

千代子と猫の間に、入っては叩かれ、蹴られて。

あんなに小さな背なのに。庇われた真綾は逃げて笑っているけど、ノラの小さな猫っ仔たちは、智久にひっついて、耳をピン、ふがぁ〜お!シャシャシャーッだわ。


「智久。よくがんばった。猫をありがと。」


ギュッと抱きしめ。

なーうん、ぺろりとほっぺを舐めた。

溢れた涙が、しょっぱくて美味しい。


「ワタクシ、那緒。猫のボス。智久、おかあさんに那緒はどう?」


「えっ?」


お胸に抱いてコロコロと。

ニシャシャと笑えば、智久は。濡れたお目々がキラキラと、ワタクシを見て、まん丸だ。ゆらゆら揺れて、海の満月だ。


「…なっ!アンタがなんで智久の!」

千代子は真っ赤だな。みにくい。

「千代子、ワタクシ、那緒。猫のボスよ。司、猫たちを招んでくれて、ありがとう。」


司の細い目。精一杯に丸く、細いのに智久と似てゆらゆら、お月様。


「あ、あ、ああ、いや、猫ちゃんたちが来てくれて、賑やかでウチは楽しいから、良いんだ。でも、その……。」

チラリ、押さえた千代子を見る。その顔は、もう、苦い煮干しのお腹を食べたような顔よ。

千代子、嫌われてるな。クフフ。


ワタクシは、ニッコリして司に言ったわ。


「那緒はボス。司と智久、高瀬の家、気に入った。お近づきな朝ごはん、作ったわ。この家、ワタクシの家とする。猫の陽だまり場よ。もう決めた。」


「なっ……!」


絶句の千代子を、ぐいっと引く。

ワタクシったら、メイン・クーンですもの。でっかい猫よ。暴力は好まないけど、力はあるわ。


「ぎゃ!」

ドンガラガッシャンどて。

「あ、あ、千代子さん!」


司がアワアワしてるけど、ワタクシ、猫だもの。ボスだもの。

雑魚の千代子なんて、オヨビじゃないのよ。

ガッ、と縁側、落ちた千代子の背に足裏。ドカンと乗っけてあらオホホ。ごめんあさーせ、弱肉強食。


「広丸の千代子。お前は広丸。司は高瀬。智久も高瀬。それで千代子のウチだとか?よくも言えたな、ほざいたな!ここは猫がいただいた!広丸の家に、ひんひん泣いて帰れ!」


千代子はかんかんの真っ赤だ。

だけど足裏離れない。もがいても、ドンのグリグリよ。

「ちょっ……いた、痛いじゃない!退きなさいよ!卑しいケモノのくせに!警察よんで!司!けいさつ!」


つかさ?司、呼び捨てですってぇ?

「お前が司をよぶだとか?ワタクシ、許さない。やるか、やるんだな?」

うなぁ〜おおぉぉぉううぅぅぅ。


ビン!と立った耳。

光るまなこ。

ゆうらり、ぶるりと振るう尻尾。

足下の、千代子に。ぐわあり覗き込む。んがあぁ。

真っ赤な千代子に真っ赤なワタクシの口の中。牙は白、キリリと尖る。


千代子は、ピッと怯えて、助けて!って叫んだ。



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