那緒は三日月に笑う2
今夜も水飲み場、三日月。
集会場で報告会。
ワタクシ那緒は手枕で、ベンチでユルラリ、ふさふさの自慢のお尻尾をゆらしていたの。
魚屋の情報通、真綾が、ニシシシ、笑う。笑える。
「高瀬の司んち、ノラが行ったよ。」
沢山、行った。
儚げな雌。大きくなりかけな、少女猫。お水をちょうだいな、と窺って。
あどけない雄。少年猫。ほっぺに傷して、痛いの、と。
仔っこの3匹だまだま、遊びに来たの、え、おうち?ワカンナイ。マイゴー。
高瀬の司と智久は、まずチョイと様子見に行ってみたい冒険好きの仔っこ達、何やかやと、軒先に来たのを。
お水?はいはい、熱中症も怖いからね。喉が渇いたら遠慮しないで、いつでも飲みに来てね。
あれれ、ほっぺを枝で引っ掻いたの?消毒してばんそこ貼ってあげる。
おやおや、3匹猫ちゃん。お母さんとはぐれちゃったの?遊びに?智久、遊んでおやり。湯屋に行って、獣湯の情報ユーヤちゃんに聞いてくるね。お母さん来るから、いい子して待ってるんだよ。
司は智久のいいお父さん。
紳士で優しい。優しっ仔の智久は、司に似た。広丸の千代子に似ずに。
ワタクシ、益々好ましく思うわ。
真綾は続ける。
「ノラっ仔がひっきりなしに行っちゃあさ。今度は母さん猫、お礼に行く。マアヤも行ったぜ。ノラ達優しくしてくれて、あんがと!って。」
豪華な、お刺身パックをぶら下げて。
「まあ真綾。悪かったわネ。」
「ううん、良いサ。ウチのオヤジ、マアヤのニャゴニャゴ話聞いて、猫が世話になってるんじゃあな!ってサ。」
持っていきな、ってとびっきりのを捌いてくれた。
それから飼いも行くようになって。
ご主人に言って、なんかのお裾分けを。水ようかん。夏みかん。おまんじゅう手作りしたから。おさかな、頭がとれちゃったやつ。
司は、ありがとう、ってお茶菓子もてなし、智久は遊び懐かれ、ゴロゴロニャンに寛いで、いつしか高瀬は猫のたむろす、陽だまり場に。
「あそこの縁側、よき。」
「なぁ〜お。なかなかよき。」
お家も古くて、庭から集まりやすい縁側、風もいい。仔っ子達、かくれんぼに鬼ごっこ。大人猫はお茶のみ司とまったりこ。
「司は、ほんやく、ってのやってる。ずっと家いる。」
もちろん猫は、仕事の邪魔はする。
するけど、大騒ぎしないから。
陽だまり場での喧嘩は、御法度だもの。
藤十郎が、腕組み真綾にふんふんと。
「で、司はどの猫がもらった?」
「うんにゃ。まだ、愛し愛しの我が猫っこ、ないってさ。」
ノラ達、飼いの産まれ仔、フリーな猫。
雌雄、みんな、フンフンと、匂いを嗅いで擦り付けて。
でも、まだ、あぁ〜んの、うっう〜んの、好き好きパートナーは、ないのだと。
「諏訪見の猫、ほとんど行った。」
「そっか。パートナーは、無理か。」
ムゥ。
猫達は、むむ〜ん、と真面目にぎゃふんと千代子を言わせるべく、さて、と耳寄せお尻尾フリフリ考える。
「まだよ。」
ん? と皆、那緒を見たわ。
まだよ、まだなのよ。
「まだ、那緒、行ってない。」
司の所に。
ニャゴニャゴ、ニャーオ!
「ナオのボス、行くか。」
ニシャ、藤十郎が笑うわ。
「行くわ。」
「ナオのボス、司と愛し、なったらメチャオモシロだな!」
「ワカンナイ。愛しならなくても、住もうか。」
ボスが住んだら、猫達の乗っ取りは完璧。司も嫌がらなそう。智久も嬉しい。猫も、嬉しい。
ベンチから、ストンと降りて。
三日月背負ってニンマリ笑う。
猫の勘ってヤツ。ビリビリ鼻先、ひんやり冷たい夜風に、ひくひく伝わる。きっと、そう、待っている。
ワタクシの求める何かが。




