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諏訪見町のわんこたち、時々ねこ  作者: 竹 美津
わんこやにゃんこ達のお話:本編
21/24

那緒は三日月に笑う1


月に叢雲、夜の水飲み場。

地面が綺麗なタイルのそこは、ワタクシたち猫の、集会場なの。

しなやかでしょう。密やかでしょう。誰も彼も、飼いもノラも、足音立てずに、今日は何の話か、ってウキウキ、ひそひそ、忍んでくるのよ。


「おートウジュウロー。」

よく来た、ばんわ、ニャオ。

ナ、ナ、ナ、ナ。

挨拶飛び交う。ダラリとベンチに寝転がり、手枕ゆうらり、那緒なおは尻尾を揺らしてた。

魚屋の看板猫、真綾が藤十郎を呼ばわって、鼻と鼻をツンとつけ、挨拶、ニコリ。


「今日、高瀬の智久。可愛がりっこの、チョコと仲良しさん?」

「ダナ。真綾、サスガ。話はやい。」


藤十郎は、すっすっとあちこち手を振って、返事を返した。

那緒の前まで、月に照らされ、うっすら微笑み。こんな時の藤十郎は、面白い事を考えてる顔よ。

「ナオのボス。お願いにきた。」


なーぁうん。

言ってごらん、とワタクシは、頷いたわ。那緒はボス、雌ボスよ。

メイン・クーンて猫らしくって、センターでも、賢くって大きくって、温厚だね、ってお墨付き、カールのお家に来たんだわ。

カールはね、もういないの。

おじいちゃんだったから、初めて会った時も。

大好きよ、ってした時。

「あぁ、こんなムスメができちゃったら、死んで天国になんかいけないよ!」

って、泣き笑い。

面白楽しく暮らして、ありがとう、って眠るまで。そう、看取ったの。

カールはここ、日本の、諏訪見町が大好きだった。

漁師町よ。生まれた海を思い出すんですって。

最後がここで、そして那緒がボスになったと知って、ものすごく喜んでいたわ。


「Oh my goodness! 那緒がボスだって!?いやいや!そりゃそうだ、うちのムスメは賢くって美しい!立派なお耳も、ふさふさの尻尾も、相談すれば親切に考えて上手くやるところも、頼り甲斐があるものな!この町のどの猫だって一目おいてる!」


そういった訳なのよ。

執事の勅使塚は、那緒が夜、猫集会に行くのを心配して、ほら、あんな所で見守ってるわ。


「遺された那緒様を、次のパートナー様に無事にお渡しし、そしてそこでもつつがなくお過ごしになられますよう。お助けするのが勅使塚の生き甲斐にございます。」

なのですって。心配症ね。

でも、猫集会に近づき過ぎたら無粋だからね、って重々言ってあるのよ。


「ナオのボス。高瀬の智久、猫が貰う。広丸の千代子にキーッと言わせる。どうだ?」


なぅん?

手枕から起き上がって、仁王立ちの藤十郎に、鼻をツンと上げたわ。

「ふんふん。広丸の千代子。確かに、最近、猫にもっと酷いわ。広丸の旦那さん、猫に夢中だって?智久は、千代子の浮気っこ、優しの仔だっけ。」

「ニャオ。智久、寂しっこ。トウジュウローが預かった。猫がみんなで、可愛がってやる。そんでさ。」


智久の父親、つかさも、猫がいただく。


「浮気の家でデカイ顔、犬猫イジメにわがまま放題。そろそろシメて、仔っこを泣かせたツグナイさせる。」

面白いだろ、どうだ。


藤十郎がニシャ、と笑えば、猫たち皆、ニシャシャシャ、にゃおにゃお、と笑い合う。


「千代子、うざかったよな。」

「石とか投げる。」

「水ぶっかける。」

「叩く。」

「何もしてないだったのに。」

「広丸とこの猫も、イジメてるらしー。だから外に出さない、広丸のダンナ。」

「隠してんだ。大事にしてる。」

「知ってるけど。」

「知ってるけどニャオ?」

「色々やられニャンだぜ。そろそろこっちもやったろニャン。」

雄たちが腕組みすれば。


「智久、優しの仔よなぁ。」

「ウチの仔、迷子、送ってくれた。」

「転んで泣いたら、お菓子くれたよ。」

「ウチも。」

「ウチも、千代子が水かけ、智久がタオル。」

「千代子が智久、パシッしてる見た。」

「しょんぼりしてた。」

「かわいそう。千代子冷たい。」

「可愛がってやろ!智久、かわいっ仔!」

雌もニャゴニャゴ、お胸に抱いてやろ、と頷き合う。


「ナオのボス。どうか?」


ふぅむ。

ニシャアとワタクシも笑う。

猫ですもの。そりゃあイタズラ好きよ。

「智久もらう。司もらう。良いね。司も優しい雄だって?」


千代子さんが、結婚してるって知らなくて、お父さんがごめんね。

でもね、智久ができた事は、お父さん、すごく嬉しい。

智久が来てくれたから、全部良かったんだ。

お父さんが情けなくって、ごめんね。


「千代子の文句、智久に言わないらしー。」


うーん。

gentlemanね。智久が傷つく、母親の悪口言わないだわ。

「紳士は猫が貰うに相応しい。では藤十郎。」

「ナオ、ボス!」


ヒソヒソヒソ、ニャゴニャゴニャ。

猫の集会は大概、愉快な集会よ。

どうイタズラしてやろっか、ニャシャシャ!


笑いが止まらないけれど、ボスとしては、ニンマリ口の端、三日月ほどにカーブさせ、それじゃあみんな。


「智久と司は猫のものに!」

「「「「猫のものに!」」」」


ニャー!


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