藤十郎おねえさんは仔っこを従える2
白猫チョコとパートナーなのは、古田中裕月、小学生だけどなかなか頼り甲斐のあるやつだって。
魚屋の看板猫、イナセナ真綾が集会で言ってたナ。
ランボーの子は、あれだ。
智久ってえと、高瀬の智久だな。
トウジュウローは諏訪見町の全員を覚えてるわっきゃないけど、猫に関わりが深い子なら覚えてる。
高瀬の智久、そのお母さん。
広丸千代子。犬、猫、嫌いなんだ。
知ってる、トウジュウローは素敵だからさ。キレイね若いね羨ましいねで、ムキャー!頭かきかき乱れ髪、他の猫、犬にもアタッテンダ。
「何だよ•••イチャイチャしてさ!関係、ない•••。」
関係、ないって。
グスッ、て泣くなら手を出すんじゃない。智久、しょうがないなぁ。
チョコも裕月も、えっ、てなってるじゃん。
くいくい、キハチローの袖。引っ張ったトウジュウローに、分かってるよの笑み。だよね、これだってご近所の平和ってやつ。パートナーっての、ツーカーだもん。
仔っこが泣いたら、警察猫、トウジュウローの出番じゃないか。
「ナォ。」
「わっ!何だよ、ね、ねこ!?」
智久の身体にスリスリ。にゃーん、うぁーん、なーご。ザラリとほっぺの涙を舐めたった。
うひ、と固くなって口をムニムニ、恥ずかしいのか。可愛い仔っこだねー。
「な、舐める、な!」
「なめるー。トウジュウロー、だ。」
ナオン、と後ろから抱きついたった。
「トウジュウローおねえさん!」
チョコが、ホッとした顔。優しんだ。引っ掻きしたけど、智久が泣いたは、ヤナンダヨナ。裕月とお手て握りっこ、仲良しっこは困ってた。
「智久んちの千代子、仔っこにツメタイ。魚屋、真綾言ってた。」
「あーう。」
なぁ〜ご。
チョコは頷いた。だからだ。
「智久、千代子に懐きたいダヨナぁ。」
仔っこだもの。お母さん好きよ。
お母さんが猫犬ダメ言うだから、智久も言ったら、だよねーって仲良しできるじゃん。
「だからチョコと裕月と、イジワル言った?」
チョコ、白いお耳をハタッとさせた。
智久は、グシュン、むぐぐぐ、と黙ったな。
ウルサイとかゆわないとこ、素直。
かわゆい、気持ちがぐるぐるの、困った仔っこなんだ。
「•••お母さん、家にあんまり、帰って来ないんだ。」
帰って来ない。裕月が、んむ、と難しい顔。
「あ、千代子お母さん、高瀬じゃないんだね•••。」
気付いたね。
男の仔っこで隣っこ。トウジュウローは智久を抱っこだよ。サミシの仔は、あっためてやんないと。三毛のお尻尾をくるりとパタリ、お腹にポンポンしてやった。
チョコと裕月と、智久とトウジュウローと、2人と2匹は海、堤防、でっかいとげっこ、イガイガどん、な消波ブロック前に、腰掛け、足をぶうらりしてた。
キハチロー?
危なくないよに、後ろで見てるよ。
釣りのおっちゃんも、仔っこの面倒みてんのかぁトウジュウローちゃん、って手を振ってきた。
ウン、と智久。
「お母さん、人の女の人だからさ•••。いっぱい色々、結婚してくれってゆわれてたから、広丸のお家が本家なんだって。すっごくデッカい家で、大切にされてんだ。」
そっかー、って仔っこ達が頷く。
「ウチには、時々、犬と猫の文句言いにしか、来ない。僕のことなんか、ほんとは•••。」
分かってたんだ。
可愛がられてないって。
智久は、できちゃった仔だ。
猫も犬も、できたら可愛がるのが普通だけど、千代子はそんなつもりがしてなかった。真綾情報。
広丸のダンナ、浮気でよそに智久ができちゃったしても、人の雌は大事な雌だ、って我慢してたらしいけど。
「智久、トウジュウローが教えてやる。広丸のお家のダンナ、猫と愛し愛されだぞ。」
だからか、と小学生でも分かるんだ。
「お母さん、僕に、猫や犬とパートナーになるな、って。人のソンゲンを捨てるな、って。広丸のお家の子は、皆、犬とか猫とパートナーで、お母さんをナイガシロにするんだ、って。」
アンタだけは私を裏切らないでよ、って言う。
「でも、藤十郎みたいに、触ってくれないんだ•••。手を繋いで欲しかった。でも、手に触るとパシッて、叩かれる。」
チョコと裕月みたいに。
ちろり、今も繋いでる仲良しを、智久が見たのが。トウジュウローには良く分かった。
おおおおお。
そうなあ。だよなぁ。さみしよなあ。
ギュッとトウジュウローは、智久の手を握ってやった。
「智久。トウジュウローは、キハチローの。でもさ。お姉さんだ。仔っこはかわい。智久、かわい。」
トウジュウローが、猫っこが、智久を。
「集会で通しとく。猫は、なーごの、ゴロニャンに、智久をお胸に抱いてやろ。」
いつでも、パトロールのとき、かわゆいしてやろ。智久が、心寄せどうにも離れられない、パートナーができるまで、できても、お姉さんおばさんなんてのぁ、面倒な顔したって仔っこを構っちゃうんだからさ。
雄だって、気にかけてるんだ。
智久が、千代子がいない時、怪我したノラにお菓子くれたりしたの、知ってるんだから。
「チョコも猫っこ。智久はトウジュウローが預かった。意地悪ないなら、なかよし、いいか?」
「ウン!トウジュウローおねえさん!」
「僕も、友達だよ。」
裕月が言ったから。
ころり。ぐちゃぐちゃなココロ、智久のほっぺに、しょっぱいのがこぼれたんだ。




