おじいさんのゆめ
そこには、おじいさんが住んでいました。
おじいさんの頭のてっぺんには毛がなく、周りに残っている頭髪は真っ白でした。
ですが、ここに『おばあさん』はいません。
離別したのか、早くに亡くなってしまったのか、そもそもずっとおじいさん一人だったのか。
細かい事情は分かりません。
そんなおじいさんには、一つの夢がありました。
「わしも腰が曲がってきたが、薬でも飲んで若返りたいものじゃ」
若返ってどうしたいかはハッキリしませんでした。
もう何年も生きられないのなら、せめて体は若くなりたい。
それはお年寄り共通の夢かもしれません。
ある日、おじいさんは散歩から戻ると、深々と椅子に座りました。
「今日はいつになく疲れたの……」
そう言って布団に入ると、すぐに寝てしまいました。
寝ていると、おじいさんは夢を見ました。
黒い山高帽を被った、中年の男が現れました。
『若返りたい。それがお前さんの夢かね?』
おじいさんは自分の頭の、毛のないところを触ると言いました。
『そうじゃ。若返ればここの毛も戻るじゃろう』
山高帽の男は、表情を変えませんでしたが、声は明るげでした。
『髪の毛は保証できんが、若返りは叶えてやれるが、どうする?』
『どうするも、こうするも、叶えてもらえるなら、叶えてほしいが』
『本当に?』
山高帽の男は、声を下げました。
それは『うまい話には裏があるぞ』と言わんばかりでした。
おじいさんは、しばらく考えていました。
『よし、そんな奇跡を起こせるなら、叶えてくれ』
『これにて契約完了ですよ? 良いですか?』
『いいと言っている』
おじいさんは半ば怒ったように言いました。
『それではこれにてお前さまの夢を叶えた。目が覚めると若返っているはず。それではさようなら』
そう言って別れた後、山高帽の男のことは、おじいさんの記憶から消えていきました。
目が覚めると、布団はぐっしょりと濡れています。
「いやいや、ありえないほど汗をかいている」
おじいさんは、久しぶりに布団を干し、カバーも洗濯することにしました。
洗濯機の前を行ったり、来たりしていると、ふと、洗面所の鏡に映る、自分の姿を見ました。
「おや?」
鏡に映る、自分の姿を、よくよく見てみると、おじいさんは十年ほど前、髪が薄くなってきた頃の姿に変わっているようです。
スマフォを使い、クラウドにバックアップしてあった過去の写真を見てみると、確かに十歳は若返っている。
「あの夢……」
ほとんど記憶が残っていませんが、若返る契約をしたことだけはハッキリしていました。
「なぜ、こんな半端に若返っているんだ。もっと大胆に、大学生ぐらいに戻りたかったのに」
おじいさんは、乾いた布団を取り込み、シーツを被せました。洗ったシーツが乾くと畳んで引き出しにしまいました。
そんなことをしていると、一日が終わってしまいます。
「はあ……」
おじいさんの年齢では、十歳ぐらい若返っても生活が変化するほどのことはないのかもしれません。
おじいさんは、夕暮れを見て自らの人生も、明けない夜に向かっていることを考え、暗い気持ちになりました。
暗い気持ちを忘れるため、おじいさんは、いつもより早めに布団に入り、布団に入るとすぐに寝てしまいました。
カーテンをきっちり閉めていなかったため、おじいさんはいつもよりずっと早く、目が覚めてしまいました。
「えっ……」
おじいさんは、目が覚めるなり、不快な気持ちになりました。
昨日と同じように、布団がぐっしょりと濡れていたからです。
「また今日も布団とシーツを干さなければ」
濡れて重くなった布団を干し、シーツを洗濯機に押し込むと、おじいさんは洗面所の鏡を見ました。
「!」
おじいさんは驚きました。
昨日より、さらに若返っていたからです。
「そうだ……」
おじいさんは髪の毛が完全復活したことを喜んでいました。
しかし、ふと、足元を見ようとして大きく膨らんだ腹が目に入り、絶望しました。
「太ってたんだよな、俺。この頃」
おじいさんは、とてもお腹が減ったのを感じ、久々に外に食事に出かけました。
街で目についたのは、ラーメン屋でした。
しかも、最近は油っぽくて食べれないと思っていた、背脂たっぷりのスープに、分厚く切ったチャーシューが乗ったものです。
食べたい気持ちが勝って、ラーメン屋へと足を踏み入れます。
頼んだスルスルとラーメンを食べ終わると、さらに膨らんだお腹を撫でました。
「はぁ、食った食った」
家に帰る途中、おじいさんはふと考えます。
『このまま繰り返し若返ったら、どうなるのか……』
これまでは、眠ると若返っていました。
もう一度寝たら、また十年若返っているかもしれない。
そこまではいい。
さらに若返って、大学時代に戻ってみるのもいい。
だが、それが続いたら、どうなる?
おじいさんは怖くなりました。
何もできなくなる歳になってしまったらどうするのだろう。
全てを母に頼っていた赤子の時代。
熱が出たら、病院には誰が連れて行ってくれる?
父も母も、もういない。
おじいさんは、想像するだけで怖くなりました。
「今なら契約を破棄できないだろうか」
おじいさんは契約を破棄する方法がないか、考えました。
「……」
思い出せないのです。
契約を交わした男のことを、一切思い出せないことに気がつきました。
「やられた……」
おじいさんは家に着くと、布団を敷いて、そこにあぐらをかきました。
「契約は破棄だ、私は契約していない」
ブツブツと、念仏を唱えるように何度も同じ言葉口にします。
おじいさんは、あぐらをかいたまま、ついに寝てしまいました。
『契約は破棄だ。私は契約しない』
夢の中でも繰り返し、口に出しています。
『契約を無効にしろ』
夢の中で、おじいさんは何度も呼びかけます。
声に反応して、うっすらと、人の影が現れるのですが、形にならないまま消えてしまいます。
繰り返し、激しく、強く言葉にするのですが、その人は現れません。
『頼む、なんとかしてくれ』
おじいさんは目を覚ましました。
あぐらをかいていたはずですが、いつの間にか横になっていました。
そして、今までと同じように、布団が濡れていました。
「……」
スマフォを使って、自らの顔を見ました。
黒々とした髪、肌には張りがあって、シミもない。
腹は出かかっていましたが、気にするほどのものでもありません。
「寝なければ良いんだ」
寝なければいい? おじいさんは、自分で何を言っているのか、よくわからなくなってきました。
「汗をかくほど寝なければ、この若さのまま生きられるはずだ」
瞼を閉じただけで若返っているのなら、もっとたくさん若返っている。
眠った時間だけ若返っているなら、寝なければいい。
おじいさんはそう考えたのです。
とにかく、おじいさんは明るいうちに家を出ました。
できる限りの現金を下ろし、寝ないための準備をすることにしました。
大きなリュックサックを買いました。
次に、片手で持てる携帯食料を買いました。
日持ちがするものです。
また、背中や肩のツボを押すための、曲がった棒を買いました
そして全てを買ったばかりのリュックサックに納めました。
おじいさんは夕飯を食べると、しばらく休んだ後、歩き始めました。
特にどこへ行くという目標もなくです。
どんどん、歩いていきます。
明るい、街の中の方へ歩いていきます。
車がすごいスピードで横をすり抜けていきます。
おじいさんは、気にせず歩いていきます。
そうです。
歩き続ければ『寝ずに済む』と考えたのです。
歩くのに疲れてくると、リュックサックから小さい『携帯食料』を出して口にします。
水を飲み、また歩き出します。
肩や腰が痛くなってくると、ツボ押し棒を使って背中や腰をぐりぐりと刺激します。
「おうっ!」
このツボ押し棒だけでも、かなり眠気が飛ぶことがわかり、おじいさんは満足しました。
おじいさんは、ツボを押して回復した後、再び歩き始めました。
そんなことを続けていると、かなり都心に入ってきました。
都心に入ってくると、さすがにおじいさんも疲れてきました。
何か、別の方法で眠気を紛らわせないか。
おじいさんは、ゆっくり歩いていると、声をかけられました。
「おにいさん、よってかない?」
おじいさんは通りに出ていた女性に『おにいさん』と呼ばれたことに、気をよくしました。
「飲み屋だね? お酒は飲めないんだが、入れるかい?」
「女の子が飲んじゃって良いならね」
おじいさんは納得して店に入っていきます。
店は、薄暗く、椅子はフカフカでした。
おじいさんは椅子に座ると、隣に座ってきたお店の女性が言いました。
「お酒頼んでいい?」
「何杯も飲むなよ」
「まず一杯はいいでしょ?」
おじいさんの前にはウーロン茶が、女性の前にはウィスキーがロックでおかれました。
「乾杯」
お酒は飲めませんでしたが、おじいさんは上機嫌でした。
若い女性の隣に座ることなど、最近の生活の中ではこれっぽっちも無かったからです。
たわいもない会話をし、飲み、食べ、笑っていると、歩いてここまで来た疲れも、眠気も吹っ飛んでいました。
楽しい時間は過ぎるのも早いものです。
かなり、時間が遅くなってくると、付き合って横に座っている女性の方が先に、眠そうな様子を見せ始めました。
「おにいさん、まだ飲むんだ?」
「事情があって眠れないんだ。付き合ってくれよ」
すると、席の横に黒い服の大きな男が立ちました。
「金を払わない気じゃないだろうな?」
おじいさんはリュックサックの中から、現金を取り出して、男に渡します。
「これまでの分で足りるか?」
黒い服の男は紙幣の枚数を数えると、
「お釣りを持ってきます」
「いや、まだ居るからお釣りはその時に」
男は頷くと、店の奥に引っ込みました。
しばらくは、またお話をしながら楽しく過ごしていました。
しかし、夜が更けていくとおじいさんも眠くなってきました。
女性の目が閉じると、おじいさんも瞼が閉じかけます。
「危ない!」
おじいさんは自分で持ってきたツボ押し棒を使って、グリグリと背中を刺激しました。
同じように、横にいる女性の背中にも、同じようにグリグリとツボを押しました。
「痛い痛い痛い!!!」
女性が絶叫して立ち上がりました。
店の奥から黒い服の男が飛び出してきます。
「なにごとだ!」
「ツボ押し棒でツボを刺激しただけだ」
丁寧に説明すると黒い服の男は、再び店の奥に戻っていきます。
「いいか、寝そうになったら、頬を叩いてくれ」
「わかったわよ」
女性とそう約束し、おじいさんは椅子で寝かける度、女性に頬を叩かれました。
そうして、何回か眠りかけ、叩かれることを繰り返しました。
しかし、そんなことをしても、次第に眠気が勝ってきました。
「ダメだ、もっと強く叩け」
おじいさんは、女性にグーで殴るように言いましたが、女性も自分の手が痛くなってしまう為、殴ることを拒否しました。
「じゃあ、このツボ押し棒で叩いてくれ」
女性が、棒を振り上げ、おじいさんを叩きました。
「おぅ!」
おじいさんは、悲痛な声をあげ、女性を見つめました。
「目が覚めた」
「こっちも何かに目覚めそう」
さらに叩くと、
「俺もだ、叩かれる度に、新しい世界が見えるようだ」
そうやって、おじいさんはツボ押し棒で叩かれていたのですが、どんな刺激もやがて慣れてしまうものです。
お互いに刺激に慣れてしまった頃でした。
女性がついに寝てしまいました。
無理もありません。女性は若いですが、お酒もかなり入っています。
もう女性は起きそうにありません。
女性が寝てしまったことに気づいたおじいさんは、必死に力を振り絞り立ち上がりました。
「会計してくれ」
黒い服の男が出てくると、会計をしました。
お釣りは出ず、さらにお金を払いました。
おじいさんは、立ち止まると眠ってしまいそうになりながらも必死に歩いて店を出ました。
明るい通りを選び、おじいさんは必死に歩いていました。
しかし、疲労と眠気のせいか、おじいさんは階段に腰掛けてしまいました。
「ダメだ、寝ては、寝てしまったら……」
眠ったら若返ってしまいます。
今度は大学生か、就職した直後の年齢になるはずです。
「いや、無限に若返るわけがない」
おじいさんのその考えには根拠はありません。
眠気で頭が働かなくなっているだけでした。
「そうだ。わからないのだから、恐ることはない」
そう言っては見たものの、おじいさんは本当だろうか、と思いました。
「眠気が失せるだけ、短時間だけ寝れば良いのだ」
おじいさんは、そこで納得すると、寝てしまいました。
「おい、起きたまえ。こんなところで寝るんじゃない」
おじいさんは目が覚めました。
「若いのに、こんなところで寝て。まさか、家出じゃないだろうな」
おじいさんは、大声で話しかけてくる男の姿を見ました。
大手警備会社の制服を着た人でした。
ですが、おじいさんより、ずっと若い、就職したてと言った感じです。
「別に自分の金で飲んで何が悪い。というか、そもそも酒は飲まなかった」
「当たり前だ、君、どう見ても未成年だろうが」
おじいさんは慌てて立ち上がり、スマフォを取り出すと自分の姿を確認しました。
「おい、話を聞いているのか?」
「やばい。中学生ぐらいになっている……」
一つ世代を飛ばして若返ってしまっています。
確かに、ズボンのお腹周りが緩くなっていて、袖や裾が少し余っていました。
このペースだと、次は、よちよち歩きの頃になってしまいます。
父も母もいない世界で、体だけ未成年になってしまうと、どんなことになるのか。
おじいさんは、警備員の元から逃げ出しました。
小さい公園のベンチに座ると、おじいさんはリュックサックの中を見ました。
食べ物や飲み物はまだあります。
お財布の飲み屋のお会計のせいで、お金はかなり減っていました。
「……」
おじいさんは身分証を取り出しました。
顔写真がついていますが、それは『おじいさん』の時の自分で、どう見ても今の状況下で自分自身を証明できるものではありません。
今は意識がはっきりしていますが、次に寝てしまった後、どうなるのかは分かりません。
今までの様子から考えて、体の小さい赤子になってしまうのでしょう。
おじいさんは、自分の身分証を見つめながら涙を流しました。
小さい赤ちゃんになったら、やれることが減ってしまいます。そうすれば、あっという間に『寝て』しまいます。
寝たら、この世から消えてしまう。
いや、それ以上若返れないから、何も変わらないのだろうか。だとしても…… 体が小さいと、このリュックサックの食べ物を口にすることができません。やはり、行き着く先には死が待っています。
なぜ生まれてきたのか。
生きているからこんなに苦しいのだ。
おじいさんは父と母のことを思い出しました。
いや、生まれなければ様々な楽しいこともなかった。
ただ、生まれる前、最初の無に戻るだけだ。
数時間後、おじいさんは遊園地にいました。
何度も同じジェットコースーターに乗り、一人で大騒ぎしました。
時間は沢山あります。
端から乗り物に乗り、遊園地のアトラクションを制覇しました。
日が落ちても、ライトアップされた遊園地にずっと残っていました。
閉園の時間が来て、おじいさんは仕方なしに遊園地を出ました。
また若返ってしまうまで、もう何時間もありません。
園を出た付近にある喫茶店に入り、おじいさんは窓際で遊園地を眺めて、コーヒーを飲みました。
そうやって見つめていると、やがて遊園地の明かりも完全に消えてしまいました。
おじいさんは、今日寝る場所、すなわち死ぬ場所を考え始めました。
「……」
「君、ずっと一人で遊んでいた子だよね。おねえさん、そこの遊園地の従業員なんだけど」
おじいさんは、一瞬何のことかわかりませんでした。
「君、君、ねぇ? 聞こえてる?」
振り返ると、そこには女性が立っていました。
体の大きな女性で、髪は短く、メガネをかけていました。
「何か、事情があるよね? 話聞かせてもらってもいい?」
おじいさんは、その声にこれまでのことを話してしまいました。
「……信じてもらえんと思うが」
「確かに、口調がおじいさんみたいだけど、そんなこと信じられない」
おじいさんは、首を横に振りながら、俯きました。
やはり、こんな荒唐無稽な話は、誰も信じてくれない。
机に出した、身分証や銀行カード、クレカの類もリュックサックにしまいました。
そして立ちあがり、死のうと決めた都心の墓地へ向かおうとしました。
「待って」
おじいさんの袖を引っ張り、女性が引き止めました。
「今日だけなら、私の家に来る?」
「……」
おじいさんの目に、涙が溢れてきました。
女性の家は、都心からかなり時間がかかる場所にありました。
田舎ではありましたが独身女性用で、セキュリティはきっちりしていました。
おじいさんはお風呂に入り、途中のスーパーで買った肌着に着替えました。
「君、悪いけどここで寝て」
そこは小さなソファーでしたが、背丈が縮んだおじいさんにとっては十分なスペースでした。
「ありがとう」
誰かに『死』を看取ってもらえるだけで幸せだ、とおじいさんは思いました。
お風呂で温まった体は、横になるとすぐに眠気広がってきました。
「おやすみ」
おじいさんは、そのまま寝てしまいました。
おじいさんは、目が覚めました。
寒い、と思いましたが、掛かっていたはずの毛布に手が届きません。
「……」
小さかったソファーが、広々と感じます。
「……」
声が出せません。
スマフォを手に取って、自らの姿を確認したいところですが、スマフォがありません。
周囲を確認し、おじいさんは自分の状況に気づきました。
おじいさんの体は、小さくなり赤ん坊の大きさになってしまったのです。
「……」
記憶はあるのに、手足や喉、口をうまく動かせません。
自分の声とは思えないほど、高い音の『鳴き声』が、部屋に響きます。
部屋に、ガタガタと大きな物音が響くと、ソファーに女性がやってきました。
「えっ?」
女性は、小さくなってしまったおじいさんを見つめます。
着ていた肌着はサイズが合わず、おじいさんは裸です。
女性は大きなタオルを持ってくると、おじいさんを包み、抱えます。
「ほ、本当に若返ってしまった」
女性の抱き方が悪いのか、おじいさんは泣きました。
女性はソファーにおじいさんを置くと、スマフォで子供の抱っこの方法を調べています。
おじいさんは、泣き疲れると寝てしまいました。
次に目覚めた時、おじいさんは周囲もよく見えなくなっていました。
もう次はない、と思っていましたが、寝ている時間が短いせいか、若返る時間も短かったようでした。
おじいさんは、お腹が空いて泣きました。
女性は、小さな哺乳瓶を持ってきました。
おじいさんを抱き抱えると、おじいさんの口に哺乳瓶を入れました。
これが最後の食事なのか、おじいさんはそう思いました。
その小さい体は、すぐに満腹になりました。
女性は、哺乳瓶を机に置き、おじいさんに微笑みかけました。
おじいさんは、とても幸福な気持ちになり、微笑み返しました。
おじいさんにとって、とてもとても幸せ時間でした。
それは老人の姿のままで迎えた死では、あり得ないことだったからです。
しばらくして、女性は、目を閉じたおじいさんが、抱えている腕の中から消えていくのを目撃しました。
後日、おじいさんの銀行カードからあるだけの現金を引き出し、女性も少しだけ徳をした気になりました。
めでたしめでたし。
おしまい