力
振り返るとそこには倒したはずの化け物がいた。
だが、化け物の姿が見えたのも束の間。俺は突然のことに反撃にあまり力を入れる事ができず、踏ん張りきれずに勢いよく吹き飛ばされる。同時に、俺の意識は闇に落ちていった。
「ハッ!?いつまで寝てた!?今どんな状況だ!?」
すぐに目が覚めた。時間にして数秒。俺が瀕死の重症を負ったときまたは死んだときに周囲のものを吸収し、物質を変換、俺の体を修復する修復プログラムが働いたのだ。本当は傷を追ったらすぐに発動するようにプログラムされていたが、それだと周りの人間を巻き込みかねないので瀕死のときだけにプログラムを書き換えたのだ。
多分、俺は一回死んだんだろう。意識が途切れたあの時だ。一度試したが、俺の体に回復魔法は使えなかった。
回復魔法が効果を発揮できるのは植物や動物などの生物だけ。それが効かないということは、俺はもう世界の理から生物と判断されないような存在なんだろう。
俺の足元には抉れた地面。これを吸収して生き返ったんだろう。記憶や人格は俺の体のいたるところに仕込まれている俺の改造された力何かを記録しているバックアップシステムから復元でもしたんだろう。
その事実に、再び自分という存在とはなんなのかがわからなくなる。俺は今も昔も人間のつもりだ
。でも……。
そんなことを一瞬考えたが、すぐに化け物の前に転移する。また少女が襲われていた。今度は全力で少女を庇う。
「ッ!!」
耐えることはできたが、上からかかる大きな圧力に足元の地面が抉れた。こいつ、さっきよりも強くなってやがる!!
心なしか表情からも余裕がなくなっている気がする。さっきまでは手加減してたってことかよ。全く、イライラさせてくれるじゃねぇか。
でも、俺の全力を耐えた相手にどう戦えば……。
その時、ゴォォォォォォォォォオ!!という音を響かせながら五体のところどころ角ばっている戦隊モノのロボのような巨大ロボが飛んでくる。その後ろからは何人ものタンクのようなものを背負い、そこから出ているチューブが手足の装甲や手に持つ銃や剣、かけているゴーグルに繋がっている人間たちが飛んできている。サムマジスからの軍隊だ。
人間たちは一斉に銃を構え、ロボは肩や腕、胴体に足などあらゆる場所のギミックを稼働させ、機関銃、ミサイル、ブレード、チェーンソーなど様々な武装で一斉攻撃する。
「!?」
まだ人間がここにいるのに攻撃を始める軍の行動に驚きつつも、俺は少女や一応周りの家々を障壁で守る。
しばらく軍の総攻撃が続いていたが、弾切れなのか様子見のためなのか、攻撃を一度停止する。もうもうと立ち込める煙。その煙が晴れると……。
そこには苛ついたように「ゴガァァァァァア!!」と咆哮する化け物の姿があった。
それを見て一斉に逃げ出す兵士たち。指揮官のような男も少し迷ったようだが、逃げるように撤退する。
五体のロボだけがその場に留まり近接武器で攻撃を続けようとしたが……化け物の二本の尾で挟み込むように攻撃をされる。
尾の先の棘の付いたハンマーで五体のロボが胴体を一斉にペシャンコにされる。
緊急脱出装置でもついていたのか、操縦者と思われる人間が五人、コックピットから放り出され、他の兵士と同じような装備を使って逃げていく。
ロボの残骸が倒れないうちに収納魔法にしまい、振り返ると、化け物がこちらを睨んでいるようにじっと見ていた。その視線に、言いようもない悪寒を感じる。だが、俺は死なないし、俺が立ち向かうしかない。さっきの兵士たちは運が良かったから誰も死ななかったが、もう誰もこんな不毛な戦争で死なせたりしない!絶対に!!
次の瞬間、ゴギャッ!!という音とともに尾の一撃をモロに喰らい、俺は吹き飛ばされる。空中でふと尾の一撃を喰らった脇腹を見ると、大きく抉れていた。肌の下には黒っぽい金属板があり、空いた穴からはドクドクと血が吹き出し、内蔵が露出している。その光景に思わず胃の中のものを口から吐き出してしまう。
ドゴォォォン!と大きな音を立てながら民家の残骸に激突して止まった俺は、収納魔法の中からヘビの死体を取り出し、吸収して抉れた体を修復する。なりふりかまっている場合ではない。
すぐに化け物の前に戻り、女の子を全力で守る。
何度続けただろうか。ヘビの死体はとうに使い切り、地面を使って体を修復している。化け物は少し疲れたのかこのやり取りに飽きてきたのか動きが雑になってきたように感じるが、それでも何度も致命傷を負うほど強力であることに変わりはない。魔法強化をかけて防具代わりにしていた外套はすでにボロボロで防具としての役割を果たしていない。その下のシャツやズボンもボロボロだ。
俺も集中力の限界が来ていた。いくら改造されても、世界の断りに見放されても俺だって人間だ。これだけの死闘を長時間繰り広げていたら神経がすり減ってくる。疲れ知らずの機械の体も流石に疲れてきた。
そんな状況で、今まで一言も言葉を発しなかった少女が口を開いた。
「なんで?」
「え?」
思わず聞き返す。
「なんでそこまでしてくれるの?」
「俺はわがままで自己中な人でなしだからな。俺が守りたいと思ったから守るんだよ!」
一撃必殺級の攻撃をいなし、防ぎながら答える。カッコつけた感じになったが、そこに配慮している余裕はない。
「私、魔人だよ?それでも助けるの?」
「だから何だ!そんなのかんけぇねぇだろ!俺が助けたいから助ける。やりたいことをやる。それだけだ!」
言葉遣いが荒くなる。だが、気にしている余裕はない。
そんな状況で、少女はスッと立ち上がり、化け物に向けて手をかざす。
「さがって」
俺は素直にその言葉に従う。少女のそばまでさがった時、俺はハッと我を取り戻す。
こんな少女が戦える訳がない。早く守らなくては、と。
だが、次の瞬間。無数の小さな黒い魔法陣が展開され、そこから小さな黒い光の球体が弾丸のように飛び出し化け物を襲う。
一見異様なはずのその光景。少女が強力な魔法を使い、その魔法の色が黒という死や恐怖を連想させる色だったとしても、俺はその瞬間、その魔法を、その光を、確かに美しいと思い、見惚れてしまった。
直後、黒い光の暴力は暴風のように怪物を蹂躙し、その体に無数の穴を開けてる。
「ゴグァァァァァァア!?」
断末魔の叫び声を上げながら化け物がその場に倒れる。
近寄って数発蹴りを入れてみるが、動かない。確かに死んでいるようだ。
振り返ると、少女はふわりと花のように美しい微笑みを浮かべ、その場に倒れた。
「!?」
急いで駆け寄ろうとするが、足に力が入らない。
俺は、バタン!とその場に倒れ、意識を手放した。
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