その力は誰が為の
「ここか……」
俺たちは魔界からギルド島の森へと転移してきていた。
「空が……青いな」
魔界の空は赤い。空というより、空間そのものが赤みがかっているような感じだ。
だが、人間の世界は青い空に澄んだ空気。魔界の空気も悪くはないがこちらの世界はより空気が美味しく感じる。
青い空を、人間の世界を、初めて見たアルベルトとエレナは魔界との違いに目を奪われていた。
初めてあったときはあんなことがあったけど、ユエナも初めてこちらの世界に来たときは魔界との違いに少なからず驚いたのかもしれない。
「おい、ちょっと来い」
キョロキョロと辺りを見渡したり、近くを歩いたりしていたアルベルトとエレナだが、不意にアルベルトから声がかけられた。
ちらっとユエナたちの方を見ると何かを察したのか、ユエナが島を案内し始めた。
気を使わせてしまったな。後で何か埋め合わせをしないとな。
ユエナたちから少し離れたところまで来ると、アルベルトはおもむろに口を開いた。
「あそこの地面、消えかけてるが争ったような足跡があるな。あれはお前とユエナの訓練の跡なんだろう?」
鋭いな。足跡だけでそこまで分かるのか、ユエナとこれまで戦闘訓練を見てきた俺だからこそなのか……。
なんにせよ……
「何が言いたいんた?」
「これまでお前を見てきて感じたんだが、あの後も何回か本気を見させて貰ったよな。これまでの戦闘の話も聞いたりした」
「だから何なんだよ。結論を言え」
「まあ焦るな。魔人は人間が使うような魔法は使えない。その代わりそれぞれが特定の魔法を使えるんだ。私なら黒炎、エレナなら回復、
とかな。ユエナは弾幕だった。いや、本来は違うのかもしれないな。あの子は……魔力の制御が出来ないんだ」
「知ってる。でも、だからといってどうこうなるわけでもない。俺の気持ちは変わらない」
「私もだ。だがこの話で重要なのはそこではない。私の戦闘スタイルは黒炎を使った剣術主体の臨機応変な戦い。エレナは戦えこそしないが自衛はできるし回復は一流だ。普通なら自分の使える魔法……固有魔法をうまく使うんだが、ユエナは魔法を使うと自分の魔力全てを使ってしまう。だから私はユエナが戦えるように……生き残れるように、ユエナにあわせて私の剣術を変えたのだ。ほぼ別物になってしまったがな。」
「たがら何が言いたいんだよ。俺にはその剣術は扱えないとでも言うのか?」
「ああそうだ。扱えないとは言わないが、お前には合ってない。お前、最後には殴ろうとするよな。自分を信頼してるのか、武器が使いづらいのかは分からないけどな。それに、ユエナのような柔らかい動きや回る動きに弱い」
「じゃあなんだよ!ここまで練習したものを全て捨てて、イチからやり直せってか?冗談じゃない。俺は凡人以下だ。その分を、足りない分を、努力で補ってきたつもりだ!なのに、なのに……ッ!」
これまでの努力を、全てを、否定された気がした。言い様のない無力感と苛つきが体の奥底から込み上げてくる。
「まてまて、そう急ぐな。全てが無駄になった訳じゃない。あの剣術は合わなかったって話だ。私の剣術は万人に使えるような広く知られているものではない。独学で、自己流で編み出したものだ。それをユエナにあわせて変化させ、分化したのがユエナの短剣術だ。お前が死ぬと、ユエナが悲しむ。少なくともユエナがお前を…………間は死なれちゃ困るんだ。だから、鍛えてやる。お前に合ったものを作り上げてやる。その前に、まずは家作りだな」
そう言ってフッと優しく笑うアルベルトを見て、一瞬で闇に包まれた心は一瞬で闇が晴れたように感じた。
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